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Cheshire's Telex Stories

"This translatioin was authorized by Richard Cheshire."
これは、Richard Cheshireさんの記事Cheshire's Telex Storiesの翻訳で、Richard Cheshireさんの承認を得ています。
著作権所有 Richard Cheshire © 1996 
この文章は、刊行を予定している本に掲載する予定です。お読みいただく、あるいはこのページにリンクをはっていただくのはご自由ですが、私の承認なしの複製はお断りします。 事前にcheshire@2600.comあてに、ご連絡ください。

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国際テレックス・ネットワーク・ハッキング方法の学習

(C) Copyright 1995 by Richard Cheshire
PO Box 6841
Astronaut Trail FL
USA 32782

まず最初に、
A Quick Primer on Telexをお読み頂いたほうが良いかも知れません。
A Quick Primer on Telexの日本語訳テレックス入門

   国際テレックス・ネットワークというのは、ひどく古めかしく、陳腐なものですが、まだ動いているようです。実際の所、世界の後進国においてすら、他のシステムに置き換えられつつあります。それでも、何十年とはいわずとも、長いあいだ、どこか外国とビジネス通信をする必要があるという場合、テレックスがそのための手段だったのです。

   テレックス通信は、戦争のための通信から派生したものですが、1950年代にはビジネス社会に広まりました。ウエスタンユニオンテレグラフカンパニーが、カナダのモントリオールから回線をニューヨークまで引いてきたのがアメリカでの始まりです。カナダは、ニューファンドランドからイギリスにケーブルを敷設していました。イギリスは、それを大陸に接続し、そうした通信を実際に必要としいてた金融市場(ロンドン,パリ、チューリッヒ、その他の都市)の世界的な通信ネットワークが、今、我々がこうして当たり前のものと受け止めている規模での本当の世界的取引の始まりだったのです。

   テレックス通信では、通信が印字されるので、メッセージをその国の言語に翻訳する時間がとれるということ特徴がありました。それまで知らなかったような速度で業務通信を可能にしてくれる魔法の装置は、テレタイプ装置でした。クラインシュミット社がかなりの装置を製造しました(大半は軍事用)、そして、 どういう具合か AT&T社は、このTeletypeという単語を登録商標にしてしまい(いつの日か、その顛末を調べてみたいものです。)、テレタイプ社自体を所有するにいたりました。実際の所、AT&T社は株式の50%を所有していたに過ぎませんでしたが、残りの50%も(AT&T社が株式の100%を所有している)ウエスタン・エレクトリック社の所有だったので、このあたりの些事にはあまり興味をもてません。

   私の冒険は、ニューヨーク州の北部、アメリカ最大の独立系電話会社、ロチェスター・テレホンカンパニーの生まれ故郷で始まりました。高校3年の冬、学校にIBM-1130コンピュータが入ったのです。こいつは机ほどの大きさで、10MBのハードディスクが(RAMがいくらあったかは忘れましたが、当時はコアメモリーが64Kあればたいしたものという認識が)ありました。5MBのハードディスクは固定で、あとの5MBはラージサイズピザの大きさをしたプラスチック製リムーバブルパッケージでした。

   ソフトとオペレーティングシステムは固定ディスクにおき、データはリムーバブルディスクにおくようになっていました。システムをバックアップするには、固定ディスクの内容をリムーバブルディスクにコピーして、そのパッケージを保存したのです。

   ほとんどのソフトとデータは、ともあれパンチカードの形で存在しました。そして、コンピュータ科目の最初の課題は、モデル29カードパンチ装置の奇妙なふるまいぶりを学ぶことでした。(モデル29は高価な装置で、財力のない所では旧式モデルの26を使っていました。)

   こうした環境の中で、私は最初の「IBMの大嘘」を聞かされたのです。連中が言うには、「このシステム」は「上級の数学専攻学生向け」なのでした。 おい、ちょっと待った!そういう学生たちは、数学がよーくわかっているのです。のような学生にこそコンピュータが必要なのです。結局の所(これは私のこじつけですが)問題作りというのは楽しいことなのです。その解答を求めて、がりがりやる計算なんか面白くはありません。瞬間に、私は秘密を発見しました。IBMが、にも気が付いて欲しくないと考えている秘密です。(あなたは、決して誰にも言ったりしませんよね?)コンピュータは面白いのだ!という秘密です。こんな情報は、IBMの完璧なイメージを損なってしまうので、まずいのです。

   いうまでもなく、学校の事務部門はこんな秘密は知りはしませんし、大型の高価なコンピュータで遊ぶなどということとは縁がありません。当然、私がコンピュータをいじってみたかった本当の理由は、スヌーピーの絵が印字できると聞いたことだったのです。スヌーピーというのは、ご存じの漫画チャーリー・ブラウンの飼犬です。

   こんな理由は、 学校当局からすれば更に下等に評価されます。けれども、私は、今やコンピュータセンターになっている、もとの倉庫のあたりを徘徊し始めました。担当の女性は私を哀れんでIBMをしつこく責めたてて、しまいにはフォートランのプログラム教科書を一式入手してくれました。

   私は数日おきに一冊ずつ返却しては、シリーズの次の巻を借りたのです。フォートランのプログラムを、カードにパンチし始めました。いくつか簡単なソフトをいじり始めたのです。そうこうするうち6月になってしまいました。卒業して、おしまいです。

   数ヵ月間、地元のコミュニティーカレッジに通い、地元企業の雑用係りではたらきました。印字出力をコピーして、幹部が使えるようにファイルする仕事でした。結局、近くのカレッジがHP-2000Cタイムシェアリングシステムを、どこの馬の骨とも知れない連中にも一時間1ドルで時間貸しをしていることを知りました。この費用はピンボールゲームよりも安かった上に、私も利用資格が認められたのです。早い話、私も馬の骨の一人だったわけです。

   (ロチェスターの中心部からおよそ20マイルほど離れたエリー運河沿いの小さな大学町の)ブロックポートにあるニューヨーク州立大学が、地元民が大学のシステムを利用できるコミュニティーサービスを始めようとしていることがわかりました。その代償は大学の塀を地域住民に修理してもらうという具合です。私はこのチャンスを十分に活用する準備ができていました。

   実際、私のプログラミング哲学は、人生哲学になっていたのです。それは基本的に、『規則はどうなっているのかを見つけだす。規則は破るわけにはいかないが、濫用することはできる。』というものです。

   私はうまい立場にいたのです。もしアクセスさえできれば、かなりきのきいたコンピュータシステムを使うことが可能だったのです。このシステムは、私の市内局番の地域内にありました。ただ、忘れないでください。これは、モデムは音響カプラーを使った大昔の話しです。音響カプラーというものは、両端に小さな茶碗のようなゴム製カップがついていて、一つのカップ側にはコードというラベルがついたケーブルがつながっています。こちら側を電話機の送話口の方にあわせます。電話機のハンドセットそのものを、この二つのカップに密着させるのです。

   こうした装置の大半は、二種類の通信測度がありました。110ボーと、早いほうで300ボーです。一秒間に30文字です! わらわないでください。当時はこれ以上のものは有りませんでしたし、ハードもまだ非常に高価でした。私は、そうした装置を使える立場にはなかったのです。どうすれば、自分で車を運転したり、あるいはバスにのってはるばるロチェスターまでゆかずに、この安いコンピュータシステムにアクセスできるかが問題でした。そこで、私は、事務所にあったテレタイプ装置に気がついたのです。モデル33テレタイプこそ、まさに私に必要なものでした。 けれども、それはTWX装置だったのです。私の最初の疑問はそれでした。 「TWX装置とは一体なんだろう?」

アメリカの電話企業は、略語が好きなようです。それも大半が3文字。たとえば、企業用の交換機はPBXで、これはつまりPrivate Branch eXchangeの略です。電話の歴史の初期には、本局の交換機、地方局の交換機がありました。企業用の交換機は、電話局の交換手の負荷を軽減したのです。そこで、PBXは、電話システムの頼みの綱となりました。TWXというのは、TeletypeWriter eXchange、つまり、テレタイプライター通信の交換機の略です。

   ウエスタン・ユニオン・テレグラフが首尾良く"記録通信"(つまり、国際企業間の印字テレックス・メッセージ通信です)を始めた時に、AT&Tもこのうまい話に便乗したいと考えました。AT&Tは、テレタイプ・コーポレーションを所有している上に、使用頻度の点で余裕のある電話網を所有していたのですから、自前のテレタイプ網を作り上げることなど朝飯前でした。

   テレックス網では、ヨーロッパ大陸で普及していた5bitのボード符号が使われました。ヨーロッパでは、何事もどこかの国境を超えるわけですから、国際標準規格が作り出されました。ボードというのは、実は国際電信アルファベット#2(ITA#2)でした。(ITA#1というのは、モールス符号です。)フランス人であるエミール・ボードが発明したコードは、2の5乗、つまり32文字が使えました。アルファベット26文字と、5つの特殊記号です。この5つの特殊記号の一つで、フイギュア(数字)とよばれたものは、タイプ活字のボックスをシフトつまり移動させ、最上段の列の鍵盤で、アルファベット文字の上部にかかれている数字と特殊記号を使うためのものなのです。また文字(レター)の印字をしたい場合には、レターシフトを送信するのです。

   AT&Tは、TWX網を設置し始めた時にASCII(American Standard Code for Information Interchange)コードを使ったのです。 これは、多くのコンピュータ、たとえばHP- 2000Cなどでも、よく利用されるようになりました。これが、最終的にITA #5コードとなりました。ITA #3とITA #4がどんなものだったかは失念しましたが、このどちらかは疑いなくSITOR (Simplex Telex Over Radio)、つまり北海を航行する船舶で利用するために最初にイギリスで開発されたシステムに使われていたのです。

   私はロチェスター市街にある局の人と知り合いになり、この装置を多少触らせてもらえるようになりました。けれども私は、この装置でその地域の電話局に入り込めるようになって、TWX(ちなみにこれはトゥイックスと発音します)通信の費用を意識せずにすみ、援助してくれる人たちに対してそれほど卑屈にならないようにしたかったのです。

   そこで私は考えました。ベル社のおもちゃだけのために、ロチェスター電話会社が、わざわざ新しい交換機など設置するだろうかと。そんなはずはないというのが私の結論でした。(310, 410, 510, 等々の)"奇妙"なエリアコードを、ローカルエリアコードに変換して、交換接続の操作をしているに違いない。試してみよう、と思いつきました。510というエリアコードは、独立電話会社がある地域用のものに見えました。(私は、全国TWX番号簿を入手していたので、かなり綿密に読んでいたのです。510-523はロチェスター地域をカバーしていて、716-523は、バッファローの交換機の番号ですから、何にも役にたちません。そこで、何か番号を選んで、最後の4文字が同じになるようにしてみようと考えました。

   そこで、私は716-325という局番の交換機から始めました。というのは、これは中心部のビジネス街だったからです。それが論理的に思えたのです。そこで、325-2368という番号を試ししみました。「あのー、もしもし、ダグはいますか?」わぉーっ。ダグなどというのは口実で、そこにいるはずなどないのですが。もしも、そんな人物がいたら、すぐに電話をきるわけにゆかず、つぎの電話がかけられなかったでしょう。つまり、325という局番の交換機ではなかったのです。235という局番の交換機は市の西端にありました。電話会社がTWX交換機をわざわざそんな遠くに設置するとは、私には思われませんでした。それでも、716-221から始めて、ずっとたどってゆくよりはずっとましでした。で、この番号でダイアルを回してみました。リーン、カチャッ、ビーーピーーィー! 大成功です!

   翌日、私は他の大学に出かけ、そこの端末室を利用してみました。そこは、ブロックポートよりも遠かったのですが、私の最終的な目的地には近かったのです。私は、近くの長距離トラックのパーキングエリアのTWX番号に電話をかけました。リーン、カチッ。"ビーー、ピーー"受話器をアコースティックカプラーにあて、110ボー、ハーフデュープレックスで、TWX装置につながったのです。自分あてのメッセージを発信して、昼食にでかけました。

   3マイル先の、その長距離トラックのパーキングエリアで、私はうまい食事をすませ、通信連絡窓口に向かいました。「チェシャーあてのメッセージはある?」と尋ねたのです。「見てみましょう。」と係りの男性が答えました。この男性、黄色い紙片を取り上げました。「リチャード・チェシャーかね?」と尋ねました。私は自分のメッセージを受け取って、非常に幸せな気分で帰宅しました。

結局、テレックス番号簿の助けと多少の実験によって、コンピュータ端末とモデムを使って直接通信できる40以上の都市のリストを作ることができました。

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著作権所有 Richard Cheshire © 1996  cheshire@2600.com.

原文のURL: http://spaceyideas.com/cheshire/telex.html

英文の最終更新日時: 98-04-04 15:03:54 UTC


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