<旧車シリーズ 708>


TOYOPET CROWN PICKUP (MS56)


 
1967年にクラウンが三代目のMS50系にモデルチェンジされると、クラウンベースの商用車もこれに併せてスタイルを一新した。と同時に、10年以上も続いたマスターラインという従来の名称が廃止され、クラウンの名前を直接冠するものとなった。
 カタログに「高級商用車」と謳われたクラウンピックアップには、先代のMS46系に引続いて100psを発生する直列6気筒・1988ccOHCエンジン車のほか、1994ccOHVに換装された直列4気筒車や、完全自動変速装置(トヨグライド)付き車も用意された。
 荷台にはキャンバスカバーが標準装備されるなど、貨客兼用を強くアピールしたダブルピック6気筒車の東京店頭渡価格は76.5万円で、これは4気筒のクラウンセダンの価格をも上回り、パブリカトラックが余裕で2台買えるという立派な価格であった。ただ、コラムシフトの3速トランスミッションは、既に4速が主流となっていた他社ライバル勢と比較するとやや時代遅れの感もあった。最大積載量は3人乗りのシングルピックが750kg、6人乗りのダブルピックが500kgである。


 
いわゆる「クラウン顔」のトラックは、初代クラウンの時代からマスターラインというモデルが存在していましたが、昭和も40年代に入り、トヨタが新モデルの投入によってトラックのラインナップを拡充していく中で、より近代的なデザインをまとうようになった最新のクラウンをベースにして、あえて商用モデルを派生させてきたことは注目に値します。きっと、裏には綿密な市場リサーチがあったものと推察しますが、実際にこの超高級トラックがどういったお客さんに買われ、どのような用途に供されていたのか、非常に興味深いところです。

推定年式:1967
撮影時期:1982年1月
撮影場所:山口県新南陽市福川にて