<旧車シリーズ 704>


OHTA KC TRUCK


 
戦前に小型自動車で一時代を築いたオオタ自動車工業は、760ccのOS型トラックで戦後の生産活動を再開し、PA型/PB型乗用車とともに、KA型と呼ばれる中型トラックを発売した。KA型は水冷直列4気筒サイドバルブの903ccエンジン(最高出力23ps)を搭載し、最大積載量800kgとなった新しい荷台は、容積を40%も拡大していた。1953年に登場した改良型のKC型トラックは、前進4段になった新しいフロアシフトのトランスミッションと、最高出力を26psに向上したエンジンを搭載する1トン積みトラックである。
 その後、トラックは1263ccOHVエンジンを得て、1.25トン積みのKD型、1.5トン積みのKE型(1957年)と発展したが、その年にオオタ自動車工業は、三輪から四輪自動車への進出を図る日本内燃機製造に吸収合併される。しかし、脆弱な販売体制がネックとなり大手自動車メーカーに対抗することはできず、東急資本の介入も空しく、やがて日産自動車の傘下へ納まることになる。


 
戦後に消えていった幾多の自動車メーカーブランドの中でも、このオオタはかなり有名な部類に属し、商品バリエーションも多岐にわたりますが、活躍した時期が比較的早期だったためか、現代に残る実車を目にする機会は本当に稀です。メカニズムだけでなくデザインまで戦前のものを継承したOS型に比べると、いくらかモダンな印象を受けるKC型だとはいえ、じっくり見ると相当にクラシカルなトラックであることは否定できません。まさに、戦前のボンネットトラックのミニチュア版といった風情が漂っていますね。

推定年式:1953
撮影時期:2002年5月
撮影場所:石川県小松市二ツ梨町 日本自動車博物館にて