善知鳥   (うとう)<四番目物 〜 観世流>

日時:2000.02.19 NHK教育TV放送(千駄ヶ谷・国立能楽堂での公演)
出演者:
シテ:猟師の亡霊(観世榮夫)
ワキ:旅僧(宝生閑)
その他の出演〜
ツレ:猟師の妻、子方:千代童、アイ:所の者、笛、小鼓、大鼓、地謡(じうたい)


物語の舞台:
前半. 立山(現在の富山県立山)
後半. 陸奥(みちのく)外の浜(現在の青森県津軽郡)

内容:
  旅僧が陸奥へ向う途中、立山参拝に立ち寄る(僧は”立山禅定”と言っていた。立山は古くから山岳信仰の対象として知られる)。その下山の際、外の浜の猟師の亡霊(前シテ)に会う。その霊から言伝を託される。彼が言うには、陸奥へ行くのであれば、妻子を訪ねて、蓑笠を霊前に手向けて欲しい、妻子が話を信じないと困るから自分が着ていた麻衣の袖を証として持っていってほしいと。
  外の浜に着いた旅僧は所の者に猟師の妻子の住居を尋ねる。亡霊に渡された袖を懐に入れ、猟師の家に着いた旅僧は事の次第を親子に話すと妻は驚く。
  やがて、猟師の亡霊(後シテ)が衣装を替えて彼らの前に現れる。子は父の霊に触れようとするが、それは叶わない。猟師は生前、多くの鳥を殺した事の罪を懺悔し、善知鳥の小鳥を捕らえ親鳥が血の涙を流すくらいに悲しませた様を思う。次第に猟師には地獄の責めが襲い、苦しむ。旅僧に助けを求めるが叶うことはなく、舞台を去ると物語は幕を閉じる。

感想:
善知鳥とは鳥の一種らしい。
シンプルであるが、幻想的で荘厳な雰囲気に次第に引き込まれる。台詞の古い言葉づかいや謡にも字幕が表示されるので物語を理解しやすい。
動物の殺生を生業とする者の苦しみを語り、人間の原罪を表現している。


参考資料:
「能楽ハンドブック」 戸井田道三・監修、小林保治・編(\1,500 三省堂)
 
更新日: 00/07/06