松風 〜見留   <三番目物 〜 観世流>  

日時:2000.06.25 15時 NHK教育放送(大槻清韻会能楽堂での公演)
出演者:
シテ(松風):片山九郎右衛門
ツレ(村雨):片山清司
ワキ(旅僧):福王茂十郎
アイ(浦人):茂山千之丞
笛、小鼓、大鼓:各1
地謡:8名


物語の舞台:
摂津・須磨の浦(現在の神戸市須磨区)

内容:
  源氏物語・須磨の巻や、中納言・在原行平の歌などが背景にある話。

笛の音でワキが登場。舞台中央手前には松の枝(一本の松の木を表す)が立ててある。須磨の浦に訪れたワキが松に気付き、舞台脇(橋掛り側)にいるアイに、その松の謂れを尋ねる。アイはその松には行平に寵愛された松風・村雨という姉妹に縁があると言い、僧に弔ってくれと頼む。
ワキは弔いの言葉を述べ、舞台脇に下がる。
笛、鼓の演奏の間に舞台には、汐汲車(ミニチュア)が向って、松の左に運ばれる。
橋掛りからは、ツレを先頭に白い衣を纏った2人の女性が間隔をおいて登場(若い女の面)。ツレは手に汐汲桶をもっている。橋掛りの両端で二人が向かい合うように静止(ワキのほうが背が低い)。二人で謡が始まる。
舞台に移動した二人は、中央奥にツレ、その右にシテという位置で引き続き謡が始まる。二人にはほとんど動きはない。
長い謡が繰り広げられるが、どうやら二人は月夜に須磨の浦で汐汲をしているらしい。
謡が終わり、汐汲車が片付けられると、二人は住居に戻る。
そこへ旅僧が一夜の宿を願い現れる。願いは聞き入れられる。
ワキが浦で見た松の話をするうちに、行平の思い出話になり、二人の姉妹は涙する(シテが中央で椅子に座り、ツレがその左に片膝をついた感じで座る)。実はこの二人、松風・村雨の幽霊である。
ツレが舞台右へ下がると、シテは行平の形見の品である、立烏帽子と狩衣を手に思い出話を語る。
立ち上がって行平の狩衣を纏い、烏帽子を着ける。
松に行平の姿を見て昂ぶる松風。それを抑えようとする村雨。
シテの舞とともに鼓と掛け声、地謡も徐々に激しくなる。
橋掛りへ進むと思うと、舞台に戻り、松の周りを回り、再び舞う。
舞が終わると、シテはツレとともに橋掛りへゆっくり下がっていく。
舞台にはワキが一人取り残される。

感想:主人公の二人は女性であるが、演者は男性。歌舞伎の女形と違い、裏声は使わない。男の地声で謡もやる。この作品は謡の場面が多く、舞台上には独特の幽玄な空間が創り上げられる。
 前半はしっとりと、後半は松風の昂ぶりを表現するという構成。

参考資料:
「能楽ハンドブック」 戸井田道三・監修、小林保治・編(\1,500 三省堂)

更新日: 00/07/06