能 班女
(はんじょ)<四番目物 〜 観世流>
♪日時:2000.11.11 15:30 - NHK教育放送(国立能楽堂での公演)
♪出演者:
シテ(花子 - はなご):梅若六郎
ワキ(吉野少将):宝生閑
ワキツレ(従者):宝生欣哉、殿田謙吉
アイ(野上の宿の長):山本則直
その他出演者:笛、小鼓、大鼓、地謡 x8
♪物語の舞台:
舞台:美濃・野上(現在の関ヶ原)、下鴨神社(現在の京都市左京区下鴨)
季節:秋
♪内容:
「笹之伝」と呼ばれる特殊演出が施される。
前場:
野上で多くの遊女を集めた宿を営む長が登場(狂言方の女の装束)。遊女の花子が、かつて宿に寄った吉野少将と交換した扇(扇子)を眺めてばかりいて仕事をしないと言って嘆く。
花子を呼び出す。花子が登場(若女の面。装束は美しい唐織)。橋掛りの途中でアイが花子とすれ違うと、舞台へ進む花子の後ろからアイが続く形で歩く。舞台中央で花子が膝を付くと、長は花子に向って、追放を告げる。長が退場すると、花子は自分の身の上を哀しみ涙する。花子はどこへともなく去っていく(退場)。
後場:
・吉野少将が従者二人を従え登場。少将と従者が向き合うような形で立ち、状況を説明する。関東から都(京)へ戻る途中で野上の宿に寄ったのだ。そこで、花子に会いたいと思ったが、既にそこに彼女の姿はなかった。一行はその脚で京へ。そのまま下賀茂神社に参詣する(3人は舞台右端に着座)。
・同じ神社に花子が手に笹を持って登場(唐織の右肩袖を脱いでいる。笹は狂い笹といって狂乱状態にあることを表す)。そこで花子は少将との再会を祈願する。その姿を見た従者が彼女に近づき、話し掛ける。
少将を想う、花子の長い舞が始まる。途中で手から笹を落とすと、懐から少将からもらった扇子を取り出す。
舞が終わり、それを見ていた少将が彼女の持つ扇子を見たいと従者を使いにやらす。彼女はそれを断るが、次に少将が自分の扇子を従者に持たせて再び行かすと、彼の扇子を手に花子が少将の前に進み出る。そしてかつて互いに交換した扇子に見入る。そこで互いの再会を確認する。
♪感想:後場の花子(シテ)による少将を恋い、想って舞う舞が見所。四番目物は”狂乱物”とも言われるが、花子の舞いはそれほど狂ったようには見えなかった。後シテでも面は前シテと同じ美しい女面のまま。その舞も決して激しいものではなかった。恋に狂うといっても心身ともに変質するような狂い方ではなかったのだろう。
最後に2人は再会を確かめ合うが、それを喜ぶはずの場面は設けられておらず、そのまま幕となる。明るい結末ながら、決して明るくならないように意図した演出か?。
♪参考資料:
「能楽ハンドブック」
戸井田道三・監修、小林保治・編(\1,500 三省堂)
更新日: 00/12/10
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