狂言 武悪   (ぶあく)<大蔵流>  

日時:2000.04.23(Sun) 16時 - NHK教育放送(千駄ヶ谷・国立能楽堂での公演)
出演者:
主人:大蔵弥右衛門
太郎冠者:山本東次郎
武悪:茂山千之丞


内容:
  1.舞台は中世。主人が重代(代々伝えられてきた)の刀を手に登場。誰かいないかと、家来を呼び出す。その声で太郎冠者が主人の前に歩み出る。主人は太郎冠者に不奉公者の家来・武悪を成敗せよと言いつけ、刀を授ける。
2.太郎冠者は武悪の家へ。実は武悪は病のせいで主人の家に出勤できずにいた。それを知っている同僚の太郎冠者は、なかなか彼の家を訪れた理由を言えずにいる。武悪と池へ魚を獲りに行くことになり、太郎は彼を討ち取る機会を狙っていた。武悪が池に入ったところで刀を抜くが、彼を斬ることはできなかった。太郎は一計を講じる。主人には武悪を成敗したと嘘をつくから、お前はどこかへ姿を消せと。
3.太郎冠者は主人へ武悪を成敗したと報告。それを聞いて満足したのか、主人は東山・清水観音へ参詣に出かけることにした。
4.太郎を伴い参詣に出かけた主人はその道、武悪を見たと言う。太郎もそれに気付いたのか、主人の前に立ちふさがり、彼の姿を見せないようにする。死んだはずだと主人は訝るが、太郎は替わりに武悪かどうかを確かめに行くといって、主人をなだめる。
5.太郎冠者は武悪を見つけ、彼に幽霊の振りをせよと、これまた知恵を絞る。
6.主人のもとへ戻った太郎は、この辺りは幽霊が出やすい所だからきっと主事は武悪の幽霊を見たのではないかと告げる。幽霊怖さに引き返すこともできず、主従は道を進む。そこへにせの幽霊の姿(蓬髪で杖を突く)をした武悪が現れる。主人は突然現れた幽霊に怯えながらも、「侍ともある者が異形の者に会って言葉を掛けねば恥じだ」と言って、幽霊に話し掛ける。武悪は自分は武悪の霊であると名乗り、浄土へも地獄へも行けずさ迷っていると言う。武悪はあの世で大殿(主人の死んだ父親)に会ったと語ると、主人は懐かしがる。大殿からの伝言と偽り、武悪は重代の刀や扇子を主人から取り上げる。調子に乗った武悪は更に主人を怖がらそうと、もうひとつ大殿から言いつけられたと言う。主人のお供をせよと。そう言うと主人はたいそう怖がって、そそくさと舞台奥(橋掛り)へ駆けていく。

感想:古い言葉づかいのため所々、意味が分からない部分もあるがあら筋は理解できる。言葉よりも演者のユーモラスな所作で、言わんとすることは伝わってくる。
  刀を預かりながら背中へ隠し、なかなか同僚を斬ることが出来ず、おろおろする太郎冠者の姿や、幽霊っぽく、オドロオドロしい口調で主人に迫る武悪の動き、それを怖がる主人の姿などに会場からも笑いが聞こえる。


更新日: 00/07/06