天鼓   (てんこ)<喜多流>  

日時:2001.03.18(sun) 15:00 - NHK教育放送
収録:国立能楽堂
出演者:
前シテ(天伯)、後シテ(天鼓の霊):友枝昭世
ワキ(勅使):森常好
アイ(官人):野村与十郎
その他出演者:笛、小鼓(北村治)、大鼓、太鼓、地謡(粟谷菊生、他7名)


内容:
 舞台:古代中国・漢の時代、呂水

第一場:舞台向かって左手に台が置かれ、その手前に太鼓(小さい)が供えられている。ワキが登場し、これまでの経緯を語る。古代中国・漢の時代、少年・天鼓は天から降り下ったという鼓にあやかり名付けられた。その鼓を天鼓が打つと人々の感動を呼ぶという噂を聞きつけた時の帝が、鼓を召し上げようと画策。天鼓少年は山に隠れたが、見つかり殺されてしまう。鼓は帝のもとに届けられたが不思議なことに音が出ない。そこで天鼓の父親なら音が出せるのではと勅使である自分が派遣されたと語った。
 そして前シテ登場(老人の面)。橋掛りの両端で勅使と向かい合う。帝からの使いの用件を伝える。シテは舞台中央へ進み出る。長い地謡が始まり、親子別離の哀しみを謡い上げる(粟谷菊生さんは後列で隠れてよく見えない)。
 シテが鼓の前に進み出て、これを打つ。するとそれまで出なかった音が鳴るのだ。ワキがアイを呼び出し、老人を自宅へ送るよう命じる。アイがシテの後ろに付き添って揚幕まで送る。舞台に戻ったアイが天鼓の霊を慰めるため法事を行う旨のお触れを出して退場。ワキの謡。しばし囃子方の演奏。

第二場:後シテ登場(子供の霊であるが、面は女面に近い。美少年といったところか?)。唐織を肩衣脱いで、手には唐団扇という艶やかな出で立ち。弔いに感じ入った天鼓の霊が池畔に現れたのだ(天鼓は呂水に沈められ殺された)。
 シテ、台に進み出て鼓を両手のバチで打つ。すぐに台を降りて舞う。この優雅な舞が一番の見所。徐々に激しくなる。

感想:
 前場最後のワキ・森常好さんの謡はよかった。声質がよく、オペラにも通じるものを感じた(あの三大テナーにも匹敵?)。後場はほとんど後シテによる舞が占める。台詞らしい台詞もなく夢幻的な舞が繰り広げられる。

その他:一調一声「三井寺」
謡:粟谷菊生(人間国宝)
小鼓:北村治
 一調一声とは能の聴き所だけを演奏するもの。謡手と鼓の二人だけというシンプルな構成。能の一部だけを抜き出したものであるから、約10分程度の短い舞台であった。その聴かせ所は、能「三井寺」の行方知れずの子を探す母の、京都から琵琶湖畔の三井寺までの心乱れての道中を謡うもの

更新日: 01/03/26