玉井   (たまのい)<観世流>  

日時:2001.06.03(sun) 16:00 - NHK教育放送
収録:2000.10.05 収録(福岡県柳川市)。松涛園(国指定名勝、旧柳川藩主立花家別邸)薪能より。
出演者:
前シテ(後ツレ)、豊玉姫:大槻文蔵
後シテ、海竜王:梅若六郎
ツレ、玉依姫:梅若晋矢
ワキ、火々出見尊:宝生閑
ワキツレ:宝生欣哉、則久英志
その他出演者:笛、小鼓、大鼓、太鼓、地謡(8名)


内容:
 「古事記」「日本書紀」の海幸山幸の神話が題材

第一場:舞台中央に幣が付けられた井筒(これが玉井)、その右手に桂の樹。
 ワキの火々出見尊(ほほでみのみこと)がワキツレ二人を伴い登場。兄の釣り針を釣りで魚に取られてしまい、兄がその針を返せと言って許してくれないと語る。仕方なく海中にまで探しに行くと、海の都に井戸が。その脇の桂の木のそばに佇んでいると、井戸の水を汲みに姫が二人現れる(いづれも女面)。竜宮の主、竜王の娘、豊玉(とよたま)姫と玉依(たまより)姫である。姫が井戸の水に映った尊の姿に気付く。
 尊が海中に来た理由を述べると、竜王である父に会わせると、尊を竜宮へ招く。井筒、桂の木が撤去され、舞台中央の台に尊が座す。その左手に二人の姫が座す。これは尊が竜宮で歓待され、日々が過ぎたことを表す。尊は二人の姫にそろそろ国に帰ると言う。
 姫らが退場。尊は右手に座す。

第二場:再び姫二人が登場。両人の頭には竜を象った被り物。手に玉をささげ持つ。中央の台の右手に並んで立つ。そこに後シテの竜王が登場。手に杖、これも頭に竜の被り物。頭髪は白髪の蓬髪、尉面(?)。台の上に。
 二人の姫は玉を舞台に置き、尊を送るべく舞を舞う。
 舞い終えた二人が元の位置に座すと、次に竜王自らが杖を手に舞う。舞の後、尊は五丈の大鰐に乗り、国に帰っていく。尊の退場に、従って二人の姫、尊のワキツレ二人も退場。舞台には竜王のみとなる。

メモ:
 火々出見尊が山幸で、海幸が尊の兄である。広辞苑によると山幸は竜宮で姫と結婚、長く逗留した後、玉を得て国に帰ったらしい。竜宮で歓待され、土産をもって国に帰る部分は浦島太郎の物語の原型らしい。また、初めて知ったのだが海幸山幸の神話は天孫民族と隼人族との闘争を神話化したものとも言われているらしい。
 この能では尊が国に戻った後の話は描かれていないが、確かに浦島太郎の物語的な、寓話的な演目になっている。
 針を魚に取られたのに、現物を返せという兄も兄だが、海中の竜宮に井戸があり、海に住みながら水を汲むというのもおかしな物。と余計な突っ込みは能には無意味。
 会場の夜の松涛園は薪が焚かれ、舞台の四隅に柱はあるが屋根はない。また舞台が池の上にあるのか、舞台の周りに池があるのか不明だが、かすかに波打つ水面もあって独特の雰囲気になっていた。



更新日: 01/06/06