映画 Murder on the Orient Express
♪日時:2000.01.23 22時〜 NHK教育放送
(1974年
邦題「オリエント急行殺人事件」イギリス作品)
♪キーワード:ポワロ、アームストロング家幼女誘拐殺人事件、12個の刺し傷、雪、マフィア
♪内容:
名探偵エルキュール・ポワロが、乗り合わせたイスタンブールからパリに向かう大陸横断鉄道内で起きた殺人事件に挑む。
冒頭、この事件からさかのぼる5年前(1930年)にアメリカで起きたアームストロング家幼女誘拐殺人事件の新聞記事をショッキングに映し出す。一見、この映画とは無関係な昔話に写るが、実はこの事件の動機に重要な関係がある。
舞台となるオリエント急行はヨーロッパ大陸を横断する蒸気機関の寝台特急。この優雅な鉄道の旅には裕福な人々が十数人乗っているだけ。急遽、イギリスへ戻ることになったポワロは元々席はなかったがビアンキ氏の好意で、この列車に乗ることができた。
雪のベオグラードを過ぎたころの朝、アメリカ人乗客ラチェットが刺殺されているのが付き人のベドーズ、隣室のポワロによって発見される。このとき、ベドーズが部屋を訪れた際、返事がなかったため車掌ピエールの合鍵でドアを開けようとしたが、内側からチェーンがかかっていた。
ビアンキの要請で早速、ポワロが犯人探しを始める。現場には黒焦げの紙片(アームストロング家の幼女の名前が書かれていた)、パイプ・クリーナー、車掌の服のボタン(ピエールの服には全てのボタンが付いていた)、"H"のイニシャルがはいったハンカチなどが残っていた。ラチェットは胸を12個所ナイフ(短剣)で刺されていて、パジャマの胸ポケットには夜中の1時15分あたりで針が止まった懐中時計が入っていた。ラチェットは殺される前、ポワロに身の危険を仄めかしていた。脅迫状も届いていた。
ポワロは乗員、乗客を一人一人に尋問を開始。このシーンと、推理の結果を語るシーンが映画の大半を占める。この間、列車は進路を積雪に妨げられ自力では進めなくなっていた。事件の解決を待つように、ラッセル車の応援を待っていた。
尋問を重ねていくうちにポワロの謎解きも、少しずつ進み、偶然とは思えないほど、一人一人があのアームストロング家(今後、A家と略す)と関わりがあることが分かってくる。それも12人(アメリカの陪審制度の陪審員の数に一致するらしい)。一人一人の関連を挙げると、
1.車掌ピエール...A家のメイド、ポーレット・ミッシェル(幼女誘拐の容疑をかけられ自殺)の兄
2.ハードマン...ラチェットの警護役。ポーレットの恋人だった
3.アーバスノット大佐(ショーン・コネリー)...A大佐(誘拐事件のあと自殺)の知り合い
4.デベンハム...A大佐の秘書だった。アーバスノットの恋人でもある。
5.アンドレニイ公爵夫人...A大佐の妻(事件後、流産し自殺)の後見人
6.シュミット...アンドレニイ公爵夫人のメイド。実はA家のコックだった。
7.オルソン(イングリッド・バーグマン)...A家の幼女デイジーの教師だった。
8.ベドーズ...ラチェットの付き人。実はA家の使用人だった。
9.マックイーン(アンソニー・パーキンス)...ラチェットの秘書。幼い頃、A大佐夫人に援助された。
10.フォスカレリ...A家の運転手だった
11.ドラゴミロフ伯爵夫人...A大佐夫人の妹。夫はドラゴミロフ伯爵(外交官、A家とは直接関連はないので12人には数えない)で、同乗している。
12.ハバード...ドラゴミロフ伯爵夫人の母。A大佐夫人の母でもある。結局はこの事件の主犯格となる。
尋問の合間にも、様々な証拠品も発見される。ボタンのとれた車掌の制服(合鍵がポケットに)や、女性もののガウン、血の付いた短剣など。
遺留品や証言から全ての推理の断片が繋がり、2つの結論に達する。まず、殺人の動機だが、ラチェットが実はA家幼女殺人の犯人の主犯格であり、マフィアでもあった。殺される理由としては2つあった。
一つは、マフィアの抗争。一つは、A家事件の犯人への復讐。
二つ目の動機からは全ての乗員・乗客がその動機をもつだけの背景がある(内部者の犯行説)。が、証拠品からは一つ目の動機へこじつけることも出来た(外部者の犯行説)。
ポワロはこの事件の真犯人は確信していたが、彼らの動機を推し量り、彼らを責める結論を出すことはしなかった。
全てが全員の前で明らかにされると人々の間には動揺が見られたが、ポワロは地元警察にはマフィアの抗争に見せかける報告書を提出することを宣言する。彼らの表情には安堵の表情が戻る。かくして彼らの完全犯罪は成功(?)。最大の誤算は列車にポワロが乗り合わせることは全く計画にはなかったことだ。もともと、乗員と乗客がグルになった計画的犯罪なのだから。探偵ポワロは殺人事件の共犯となった。
そうするうちに列車の進路の積雪はラッセル車で除雪され、再び旅が始まった。復讐を果たした人々を乗せて。
♪感想:
ポワロはくせのあるベルギー人。油でぺったりと頭に貼り付いた髪、両側に短く跳ねた口ひげ(寝るときにカバーみたいなのをアイマスクのように着けていた)、うっすらと化粧したような顔、少し肩をすくめて、やや傾げた首。
名作古典推理小説の映画化。多くの大物俳優を配した話題の映画だったと記憶している。
優雅な列車の旅の風景は少なかったが、旅の雰囲気だけは伝わってきた。最近、定年退職した人たちが豪華客船で世界一周するのがブームらしい。ゆっくりと鉄道の旅もいい。そんな時間が欲しくなった。金もかかるが。
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更新日: 00/04/28 |