映画 Citizen Kane
♪日時:2000.05.03 13:35 - TV東京放送・20世紀名作シネマより(1941年
アメリカ作品、邦題「市民ケーン」)
♪キーワード:新聞王、薔薇の蕾、後見人、州知事選挙、大統領の姪、歌手、ソリ
♪内容:
製作・脚本・監督・主演:Orson Welles
新聞王として一時代を築いたCharles Foster Kaneが死亡。その死の間際に残した「Rose
bud(薔薇の蕾)」という言葉の謎を探る記者の足取りと重ねて、新聞王の人生を語る物語。
冒頭、ドラキュラ城か魔の巣窟かとも思わせるオドロオドロしい豪邸で、新聞王が「Rose
bud」と言い残し息を引き取る。その豪邸はフロリダにKane氏が作り上げた現代の桃源郷(Xanadu、その昔、元の大帝国を築いたフビライ・ハーンが作ったと言われる)。
ある新聞社では彼の足跡を綴ったドキュメント・フィルムが記者達の前で上映されていた。フィルムでは彼を「労働者の脅威、ファシスト」とも「市民ケーン」とも表現している。この映画を見終わった後、記者トンプソンはKaneが最後に残した謎の言葉の意味と、彼の人間像を探るよう指示を受ける。
トンプソンが関係者を一人一人訪ねるうちに、Kaneの人間像が徐々に浮かび上がってくる。
まず、二人目の妻スーザンに会いに行くが泥酔状態で追い返される。しかたなく、Kaneのマネージャであったバーンスティンに会って話を聴く。しかし、バーンスティンからはKaneと新聞事業に乗り出して以降の、成功と失敗などの話を聴くことができたが、謎の言葉の意味は得られなかった。次に訪れるのはKaneを25歳までの後見役であった今は亡きサッチャーの自筆の資料が残る図書館。その資料にはKaneが幼い頃、両親からサッチャーが後見役を任され、Kaneが成長し、新聞事業を始めて、確執からKaneが自分から離れていく様子や、1929年の世界恐慌でKaneの新聞社も破綻する話が語られていた。しかしその資料からも謎の言葉の手掛かりになるヒントは得られない。
次に訪れたのはKaneの学生時代の親友で、新聞事業を一緒に始めたリーランド。彼の話ではKaneとの事業の成功や、大統領の姪との結婚、州知事選挙に立候補し有力と見られながら自らのスキャンダルで出馬を断念し、妻とも別れなければいけなくなったこと、そのスキャンダルの元ともなった二人目の妻スーザンと再婚、そして別れなどが語られた。彼の言葉からもやはりヒントを得ることはなかった。
最後にトンプソンは再びスーザンに会いに行く。相変わらず酒を手放さない彼女であった。スーザンはKaneと結婚後、彼の望みでオペラを歌うことになったが、自分の才能を疑いながら歌い続けることは出来なかった。自殺未遂まで起こしてしまう。結局、彼女は彼から去っていく。彼は愛を求めていたが、与えることが出来なかった。彼は自己愛しか持ち合わせていなかった。
トンプソンはKaneの豪邸の収集品倉庫で結論を仲間に語る。「薔薇の蕾とはKaneが失ったものの一つに過ぎない。謎を形作るパズルの一片でしかない」と。
そんな倉庫でKaneの膨大な収集品が焼却されていた。人知れず燃やされていく中に「ROSEBUD」と書かれた木のソリがあった。そのソリは彼が子供の頃、故郷の雪の上で遊んだものであった。
♪感想:
新聞というメディアの可能性を見い出し、搾取されていた労働者の味方として巨悪の不正を暴き、部数を伸ばしていって新聞王と呼ばれた男は、そんな労働者を味方につけて州知事の座までを狙おうとしていた。しかし、市民の味方と言いながら、身内さえも愛せず、愛を求めても、愛を与えられない者が愛されるはずはなかった。その彼の精神形成に影響したのは幼い頃に、愛する両親のもとから離れされて、サッチャーという後見役の資産家に預けられてしまった事実であった。サッチャーに連れて行かれる時、彼は雪の中、「ROSEBUD」と書かれた木のソリで遊んでいた。その記憶は彼が死ぬ間際まで消えることはなかった。そのソリは玉石混交の彼の収集品の中に埋もれて残っていたが、その存在に気付くものは誰もいなかった。孤独な死であった。
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更新日: 00/07/09
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