映画 Crimson Tide  

日時:2000.11.26(sun) 21:00 - テレビ朝日放送(1995年 米国作品)
キーワード:原子力潜水艦核ミサイルロシア反乱軍、軍規違反、魚雷

内容:
 ハンター少佐(Denzel Washington)はラムジー大佐(Gene Hackman)が艦長を努める米海軍原子力潜水艦・アラバマの副長に就任。ラムジーは実戦経験もあるたたき上げ。一方、ハンターはインテリで実戦は知らない。
 就任早々、航海中の調理室で火災が発生。そんな瞬間に艦長はミサイル発射訓練を実施。そんな状況での訓練命令に対し、艦長にハンターは引っかかるものを感じる。
 ハンターが副長になったときの世界情勢は国家非常事態ともいう危機的状況。ロシア共和国ではチェチェンでラドチェンコを指導者とする反乱派が政府軍と戦闘中。核ミサイル施設や核ミサイル塔載の原潜まで反乱軍の手中にあり、ミサイル発射のための暗号さえ解読されれば、世界核戦争の危機が訪れるかも知れない。米英仏三国はロシア政府軍によるチェチェンへの攻撃に対し、ロシアへの経済制裁を発動。そのロシアでは戒厳令も発令で、内戦状態に。
 アラバマはその危険なロシア反乱軍に対応するため最前線に向っている所であった。
 そのうち艦には反乱軍が暗号解読に成功の知らせが届き、キューバ危機以来の核戦争の危機にまで発展。艦内にも緊張が走る。続いて、軍本部からは核兵器使用許可の命令まで届く。原潜の艦長には核ミサイル発射許可の最終的な権限を持っている。敵原潜がミサイル発射準備に入り次第、アラバマでもこれに対応して即座に発射の準備に入らねばならない。
 ますます緊張が高まる中、敵原潜を発見。敵もアラバマに気付き、魚雷を発射。辛くもこれを交わす。この際、本部からの命令受信の途中に通信装置が故障。指令電文が不明瞭なままで艦長はミサイル発射準備命令を発す。これに対して、ハンターはもしかするとその電文は発射命令中止のものかも知れないと、艦長命令に反対。発射準備には艦長と副長の両方の同意が必要なため、命令が実行できない状況。艦長は高圧的に命令を押し通そうとするが、これは軍規に反する行為であると、ハンターは艦長を艦長室へ拘束し、艦長代行を努めることに。再び、一時見失っていた敵原潜を補足。またもや敵魚雷が艦に迫るがこれを交わして反撃。敵を撃沈するも同時に発射されていた別の魚雷による衝撃で、浸水し推進機関も停止。次第に艦が沈下していき搭乗員全員が水圧で圧死の危険が迫る。必死で機能回復作業が続けられるが、なんとか推進機関が回復して上昇を開始し、危地を脱する。すると親艦長派の士官が武装して拘束中の艦長を現場復帰させる。今度はハンターや反艦長派が士官室へ拘束される立場に。再び核ミサイル発射準備が開始。敵原潜がミサイル発射準備に入ったことが判明し、速やかにアラバマでも準備開始。敵がいつでも発射できる体勢になる時刻が迫る。艦長にはもう発射することしか頭にない。
 それを指を咥えて見ているハンターではなく、こちらも武装して発射を中止させようと蜂起する。まさに武器管制室で発射キーが回される瞬間、司令室でハンターにより発射機能が停止される。無線装置の修理が終わりに近づくと知ると艦長と副長は通信可能となるまで、発射を待とうと合意。修理なった艦には発射中止の命令電文が入る。ロシア反乱軍が降伏したというのだ。核戦争の危機は去った。
 騒動の去った海軍指令本部ではラムジーとハンターが呼び出され、艦内で起きた軍律違反行為、組織崩壊の危機に対して審議が行われていた。双方ともお咎めなしだが、二人とも正しく、同時に間違いだと委員はいう。その席でラムジーは退役を希望し、そのラムジーからはハンターを中佐への昇進と艦長への就任を推薦するという意外な言葉。二人は最後は軍人らしく互いに敬礼して別れる

感想:
 直訳すると”血なまぐさい時”か?
 もし中止の指令を確認しないままミサイルを発射していれば、世界は核ミサイルが飛び交う世界最終戦争に突入していた。艦長は本部との通信を遮断されるという特殊な状況での発射の実行を迫られていたが、結果的に本部の指令を確認するまで待つべきという副長の判断が正しかった。もし副長が冷静さを欠いていたら、または艦長に盲目的に服従するような人物なら間違いなく発射が実行されていたかもしれない。
 原潜の艦長に発射の最終命令権限があること自体がアメリカとしての危機管理体制に欠陥があるとして、この権限は合衆国大統領にのみあると、規定が見直されたと映画の最後ではなっている。
 それにしても潜水艦勤務は厳しそうだ。閉所恐怖症の私にはまず滞在は無理。気が狂うかも。しかも映画のシーンのように、潜水艦の機能が停止して死の淵へ沈んでいくのをじっと待つような状況になったら、黙って死を待つことの苦しさは想像を絶する。そういえば最近、ロシアの潜水艦が事故で浮上できなくなり、乗組員全員死亡という事故があったばかり。
 恐いのは原子炉を積んだ潜水艦が日本近海で座礁とか事故で、放射能漏れとかを起こすことではなく、やはりロシアが冷戦後、国力が落ちて、政府や軍が核兵器を初めとする軍事力の管理が杜撰になってきているのではないかということ。この映画のような反乱組織による核施設の奪取などが起こらないことを願う。

更新日: 00/12/03