映画 Toto le heros  

日時:2001.02.25(sun) 15:00 - NHK教育放送(1991年 ベルギー、仏、独合作:邦題「トト・ザ・ヒーロー」)
キーワード:病院の火事復讐、老人施設、殺し屋

内容:
 老人トマ・ヴァン・ハズブロックの少年期、青年期の回想を通しながら、復讐の企みを描く。
 トマは病院の火事で母親が赤ん坊を取り違えたことにより違う両親に育てられた。実は向かいに住むカント家の子供と入れ替わってしまったのだ。オープニングの映像ではわざとカント夫人が取り違えたようなふしがある。
 不思議なことにトマ本人がその事実を記憶しているということ。また入れ替わった一方の子供はアルフレッドと名付けられ裕福なカント家で育てられる。
 トマは少年期、そのアルフレッドたちから”チキンスープ”と呼ばれ苛められた。そんな過去からの蓄積が老人となったトマにアルフレッドへの復讐を思い立たせた。
 トマには血のつながらない姉アリスがいて子供ながらに、その存在に姉以上の思いを感じていた。父の死をきっかけに、トマの家族の幸福が崩れていく。パイロットの父は嵐の日にカント氏の依頼で死を覚悟でフライトに出るが戻ることはなかった。残された家族は父の死はカントのせいだと考えるようになる。その姉の様子にも変化が現れ、アルフレッドと親しくする姉の姿に微妙に心が揺れる。それが姉の死を招くことになる。カント家に火を付けると言って家を飛び出したアリスはカント家の納屋で諸とも火に包まれ、トマの目の前で命を失う。
 成人したトマにある日、母の死の連絡がある。残った家族は知的障害のある弟セレスタンだけとなった。
 ある日、トマ青年はアリスに似た人妻エブリーヌに出会い、次第に互いに惹かれるようになる。彼女と駆け落ちをする日、アルフレッドの家を訪れたトマはそこにエブリーヌの写真がたくさん飾られているの見つけ、突然飛び出すとエブリーヌの前からも姿を消す。
 その後、老人施設で多くの老人たちとの共同生活を送るトマ老人は、アルフレッドを殺したいと思うようになり、復讐を実行に移す。施設を抜け出したトマはアルフレッドの家に行くが、他にも彼の命を狙う者がいることを知る。直接アルフレッドに会いに行くと年老いた彼の姿に殺す気力もなくなる。彼にエブリーヌがまだ生きていることを聞くと、彼女に会いに行く。
 目的を失ったトマは一旦は自殺まで考えたが、再びアルフレッドを訪ねると彼を一室に閉じ込めると彼に成り代わり、命を狙われていると知りながらアルフレッドとして振舞う。そしてアルフレッドの命を狙う殺し屋に殺される。
 火葬にされた彼の灰は飛行機で空から撒かれて幕

感想:
 題の”トト”というのはトマが子供の頃、TVで見た探偵ドラマの主人公らしい(?)。そのトト気取りで(探偵なのに!)老人施設を抜け出して、かねてからの宿敵アルフレッドに復讐しようというのだ。復讐劇というとミステリー映画かと思うが、復讐を企み、実行する場面などではミステリの雰囲気も出しているが、本質的にはミステリにありがちな暗さは感じられない。
 赤ん坊の頃に別の家庭の子供として育てられ、その事実を知りながらも育ての親の家族との幸せな生活を送っていた。本当の両親が向かいの家に住んでいることも、本来ならその裕福な家の息子として暮らしているはずであることを知りながら、また友達から苛められながらも、父の死を迎えながらもなんとかやっていけたのは姉アリスの存在であった。彼女の死で、もぬけの殻のような日々を送り青年となったトマに突然、彼女の面影を持つ女性が現れる。いいところまで行くが彼女がアルフレッドと関係があることを知ると(彼の妻か?)、夢も破れ、虚しい人生だけが残った。アルフレッドを殺すつもりだったはずが、殺し屋に狙われていた彼の身代わりになろうと心変わりしたのは、いくらか彼に同情心が湧いたのだろうか?
 ユニークなテーマ曲はトマの父がピアノを弾きながら歌ってくれた歌でやたら「ブン、ブン」というフレーズが出てくる明るい曲だ。

更新日: 01/02/27