映画 In room at the top  

日時:2001.02.25(sun) 22:00 - NHK教育放送(1959年 英国作品:邦題「年上の女」)
キーワード:年上の人妻富豪の娘劇団、浮気、労働者階級

内容:
 年上の人妻に恋したがために富豪の娘と結婚する羽目に(?)なってしまった青年の悲劇。
 舞台は第二次大戦後のまだ復興の途上のイギリス。焼け跡も残る田舎町ダフトンから、より発展した町ウォンリーの市役所に転勤してきた青年ジョー・ランプトンは、いつかリッチになって高級住宅地に住みたいと思っている野心の強い男。役所の会計課勤めではそんな出世は見込めるはずもない。両親は戦時中の爆弾投下で死亡している。本人も空軍にいるときに撃墜されて捕虜となっていた経験がある。
 有能な彼はすぐに新任の役所にも馴染んでいき、同僚のチャールズに誘われて市民劇団に入団することに。そこで知り合った富豪の娘スーザンに恋したジョーは既に彼氏のいる彼女に積極的にアタック。周りからは階級の異なる彼女を求めるのに反対するが、余計にそれが彼を野心家にしていく。しかし同じ劇団に参加している10才も年上の女性アリスに、いつしか心を惹かれるようになっていく。もちろん彼がスーザンにアタックしているのは彼女も承知。アリスの夫が浮気をしているのをジョーも知っていた。次第にスーザンを落とすのはゲームのようになり、実際にはアリスと付き合うようになるのだ。
 スーザンとは両親の反対や上司の圧力にも関わらず、意外にも進展し彼女の心まで奪ってしまう。しかし気持ちはアリスのほうにすっかり傾いており、スーザンと結ばれても達成感すらない状態。
 ある日、ジョーはアリスと二人きりで旅行に出かける。完全にアリスに心を奪われたジョーはアリスに夫との離婚を迫る。しかし離婚どころか役所にアリスの浮気亭主が怒鳴り込んできて絶対に離婚はしないと言う。ジョーにアリスと別れろとも迫る。それを飲まなければ町から追放するとまで。
 一方、娘との交際に大反対だったスーザンの父親で富豪のブラウンがなんと、ジョーを昼食に誘い、娘と結婚しろと言う。役所もやめて自分の仕事を手伝えとも。実はスーザンはジョーの子供を身ごもっていたのだ。しかもアリスとの噂を知っていたブラウンは、彼女と別れることを結婚の条件にあげた。断れば町に残ることすらできない。
 欲しいものを手に入れたにも関わらず幸せな気分にはなれないジョー。アリスに別れを告げに行く。ショックを受けたアリスは一人酒場で泥酔し、酒酔い運転が原因で突然の事故死。翌朝それを知ったジョーは自暴自棄。自分のせいで彼女を死なせたと自らを責める。しかしアリスは戻らない。
 そんな最悪の状況でもスーザンとの結婚の日程は迫り、ジョーは悲しい結婚式を迎えることになる。本来なら新婚の男女を乗せて幸せに向かって走る車の行き先はいったい何処へ?

感想:
 労働者階級の青年が富豪で町の有力者の娘に一目惚れ。階級の違いからスーザンとの交際には障害も多く、かえってそれが彼に妙な野心を燃やさせる。しかし本当に彼の気持ちを捕らえて放さないのは年上の女性アリスであった。決して若くて容姿がよいわけでもない。魔がさしたというわけでもないらしい。やはり根っこにあるのは封建的な風土が根強く残るイギリスという土地柄、また青春期を世界大戦の戦場という場所で過ごしたことや戦争のせいで両親を亡くしたことも影響したのだろう。
 エンディングで新婚の二人を乗せた車が画面奥へゆっくり走り去っていくシーンは、本来の明るい未来への旅立ちとは程遠い。

更新日: 01/03/13