映画 雨あがる  

日時:2001.07.09(mon) 20:59 - TV東京放送(1999年 日本)
脚本:黒澤明
原作:山本周五郎
キーワード:賭け試合果たし合い仕官、浪人、城主、川

内容:
 雨で川が増水し、渡河できず近くの安宿に足止めされている浪人・三沢伊兵衛(寺尾聰)と妻・たよ(宮崎美子)。宿には2人の他にも、雨があがるのを待ちわびている貧しい人々がいた。長く足止めされているせいで宿の雰囲気も険悪。伊兵衛は、そんな人達の気持ちをなごませようと、どこかで金を稼いできて、皆に酒や食べ物を振る舞う。どこでそんな金を工面してきたかは妻がよく知っていた。妻も嫌がる賭け試合を伊兵衛は仕方なくやってきたのだ。
 その翌日、やっと雨があがる。気晴らしに外出した伊兵衛は、森で若侍達の果たし合いに遭遇。仲裁に入った伊兵衛だが、その様子を偶然、藩の城主・和泉守が見ていて大いに気に入る。丁度、藩の剣術指南番を探していたところ。
 早速、登城を請われ、城主と対面。伊兵衛と話をする内に益々、彼を気に入った和泉守は剣術指南として取り立てることを決めてしまう。家臣らの助言で御前試合で実力を見て決めてからでも遅くない、ということに。
 その御前試合で対戦者のだらしなさに憤慨した和泉守が自ら槍をとり、勝負を挑むが、伊兵衛は少し本気を出し過ぎて、和泉守を池に落としてしまう。憤慨する和泉守。伊兵衛はやり過ぎたと反省するが、和泉守を怒らせてしまっては仕官の道も絶たれたかと、意気消沈して宿へ帰っていく。
 ようやく増水した川の水も引き、宿の旅人たちは次々に宿をあとにする。伊兵衛夫婦だけが残っている。まだ仕官への望みを捨てきれない伊兵衛。きっと城から迎えが来るのではと落ち着かない。たよはその土地を去るにせよ、城に登るにせよ宿を出るには変わりないと仕度を始める。
 そこに城の家老・石山喜兵衛と若い家臣・榊原権之丞が宿にやってくるが、喜兵衛が言うには、剣術指南の話はなかったことにと。賭け試合をしたことがばれたのだ。それをそばで聞いていた妻たよは、何を思ったか夫に、今後は大いに賭け試合をやれ、(こんなお城の)木偶の棒には分かるまい、と言う。
 仕方なく伊兵衛夫婦は宿を後にし、川を渡り、旅を続ける

感想:
 黒澤明の死後、彼の残した脚本を元に、黒澤組のスタッフが集結して作られた作品。公開されたときは、すぐにも映画館に行きたいと思っていたが、なんやかやするうちに今日まで来てしまった。そろそろビデオでも借りて見ようかと思っていたところにTVに登場。ラッキー!
 剣の達人としての剛の部分と、庶民や他人に接するときの柔の部分。一旦、剣をとれば何者も寄せ付けないほどの気迫、それ以外は穏やかな表情を見せる、主演・寺尾聰の名演。妻たよも好い性格の持ち主で、不器用で仕官しても長く勤まらない夫をしっかり支えている。
印象的な台詞がある。
・果し合いの仲裁に入った伊兵衛「刀は人を斬るものではない。自分の馬鹿な心を斬り捨てるために使う」
・賭け試合がばれて仕官を断られた伊兵衛を慰める妻たよ「何をしたかではなく、なんの為にしたかが大切」
 こんな生き方もありかな、と妙に安心する。伊兵衛をかっこいいと思ってしまう私は変だろうか?

更新日: 01/07/11