山ある記

皇海(すかい)山   (2,144m) − 群馬・栃木県                 1999.11.14 (日)

 
天候:快晴
標高差
約940m
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不動沢から皇海山(64KB)

  未明、国道17号を沼田から、120号へ入り、日光・尾瀬方面に向かう。かつて、日光白根や武尊へ行ったときと同じ道だ。ただ、そんなに先までは入らない。利根村の役場と皇海山の標識を右折、片品川をわたって、皇海山の標識を辿る。
  追貝からの林道を栗原川林道に右折する看板を見逃して、平川という地区まで行き過ぎてしまった。どうもおかしいと気付いて、来た道を引き返す。
  栗原川林道に入ってすぐ、まだ暗い道を照らすヘッドライトの先に鹿が現れた。向こうもすぐに気付いて林の中へ消えた。目だけが光っていたが、間違いなく鹿であろう。
  ガイドによると砂利道を20kmほど進まねばならない。あいにく愛車のタイヤはオフロード用ではない。
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稜線のコルから鋸山(76KB)
   パンクと狭い路肩からの転落を注意して、闇の中をゆっくり車を進ませる。実は林道入り口の看板には林道の崩落を知らせる文句が書いてあり、どこまで車が入れるかもわからなかったのだが、ゲートが開いているのでとりあえず入ることにした。そんなに古くなさそうなタイヤのあともあり、最近でもある程度の車の出入りはありそうなのが、少しだけ不安をなだめてくれる。
  どれくらい進んだだろうか、空が徐々に白み始める頃、バリケードにぶつかった。もうそれ以上は進めないことを意味していた。帰りに計ったデータでは林道入り口から13kmほどの所であった。丁度、林道わきの谷側に駐車スペースがあったので、とりあえず車を停めて夜明けを待って、眠ることにした。時刻は5:30。
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山頂から燧ヶ岳(54KB) 

 

  外が明るくなって目が覚めた。この時点では登山口までどれくらいあるのかも正確にはわかっていなかった。が、天気もよいので体調と相談しながら、時間的にも体力的にもきつそうであれば引き返せばいい、くらいの気持ちで出発することに。

7:05 林道歩き開始(標高約1,200m)。バリケードをくぐって、すぐ、見事に谷側の斜面が崩れ落ちていた。土嚢で補強して何とか車一台通れるくらいの道幅になっていた。少し歩くと切り通しがあり、更に5分くらいのところに荒間橋という小さな橋が沢に架けられていた。とにかくひたすら林道歩きが続いた。途中では、一抱えもありそうな岩が道を塞いでいた。林道を開いたときに山を削っているため、そこの補強が不十分で崩落しているわけだ。削られ切り開かれた林道わきの斜面は切り立っていて、いつ岩が落ちてこないかと始終不安であった。また、林の中でガサガサ音がすると思ったらニホンザルであった。岩がむき出しの斜面をこちらを警戒しながら登る猿にも出くわした。日光の猿とは違い、人間慣れしていないようだ。       

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山頂から武尊山(47KB)
 7:50 栗原川林道終点の立て札が立った場所に着く(約1,320m)。脇道があり、ゲートあとらしいものもあったので、よく確かめもせず、ここが登山口だと思い込んで、その道に入ってしまった。これが悪い一日の始まりであった。

8:15 林道が行き止まり(約1,510m)。これは変だ。気付くのが遅かった。車の轍が残る林道を快調に登ってきたのはいいが、全然違っていたのだ。日光白根だろうか、景色は良かった。思い直して、もと来た道を駆け足で下る。自分を罵った。早く気付けよな。200m近くも登っちまった!

8:35 先ほどの”終点”と書かれた立て札に戻る。この文字に騙されたのだ。ガイドによると皇海橋があり、そこには駐車スペースもある、とあるから早く気付くべきであった。そんなものは確かにそこにはなかった!再び、林道を進む。何度も通ったような景色が続く。
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山頂から日光白根(48KB)
 8:55 皇海橋(1,350m)。なんとか登山口に到着。道を過った分を含め3時間近く歩いたことになる。途中、何度かもう引き返そうかとも思った。残りどれくらい歩けばいいかも分からない状況であったため、とにかく早く登山口まで行きたい、もう引き返そうか、という2つの思いが交錯しながらの歩きであった。橋の向こう側の林道にはゲートがあり、車が2台停まっていた。反対側の林道からはどうやらここまで上がって来られるらしい。気温12度。

9:00 登山口を発。着いたら着いたで現金なもので、折角来たのだから登頂せずには帰れない。ここまででかなり脚を使ってしまっていたが、休憩もそこそこに出発。ガイドによれば山頂まで3時間(3.6km)ほどというから、正午前には山頂に行けそうだった。

9:30 山頂までの中間地点(1,600m)。ハイペースで半分まで来てしまった。沢の流れを何度も石伝いに横切り、笹薮を進む。途中、ただ濡れただけと思った岩の上でで左足を滑らせ、むこう脛を別の岩にぶつけた。凍っていたのだ。家に帰って見たら、瘤になっていた。ここからの涸れた急な沢歩きがきつくなる。
快晴の空と、登頂の達成感で気持ち良くなって山頂で一句。
天(そら)高く果てはいづこと背伸びをし

落ち葉を踏みしめて山を下りながら一句。
踏みしめるそばから積もる紅葉(もみじ)かな

(おそまつ)

 9:40 沢登りの途中で休憩。飛ばし過ぎて、すぐに息が上がってしまった。手前で追い越した人(この日初めて出会った人)にも抜かれた。沢は日が当たらず、気温も低い。小さな流れが凍っているところもある。メモをとる指がかじかんで、うまく書けない。気温7.7度。

9:55 稜線のコル(1,860m)。沢を登り切るとやわらかな日差しが広がった。正面に鋸山の鋭い頂と峰々が迫る。しばらくの間、冷たくなった体を日差しで温める。

10:30 山頂。山頂に近づくに連れて、人の気配がし出した。おそらく先の2台の車で来られた方々であろう。または、鋸山を越えて来ているのかも知れない。
山頂は狭く、霜柱が解けたのか、むき出しの地面が少し泥と化していた。全部で14,5人くらいになった。残念ながら周囲が原生林に覆われているので360度の展望というわけにはいかなかった。それでも木々の間から南は富士山、西に武尊、北に白根や、燧ヶ岳などを望むことが出来る。気温13度。
<日帰り温泉>
望郷の湯。白沢村、120号から少し横道に入った道の駅と併設してある。内湯1(ジャグジー、ジェットも)、露天1、サウナ1。露天風呂では外気に触れる頭だけが、お湯との温度差もあり、しゃきっとする。大広間あり。風呂上がり、休憩室のTVで競馬のエリザベス女王杯の中継を見た。\500。

 

<参考地図>
どこでもアウトドア 「日本百名山を登る(上巻)」(昭文社)
アルペンガイド5 「奥日光・足尾・那須」(山と渓谷社)

 10:55 軽く食事と、写真撮影を終えて下山開始。来た道を戻る。買って1年になるサロモンのトレッキング・シューズはソールが擦り減ってきていて、よく滑る。そろそろ買い換え時だと、下りで何度もすっ転んで思った。

11:25 稜線のコル。陽も高くなり気温も上がってきた。気温16度。

11:40 中間地点。枝に巻かれたリボンや、幹や岩に塗られたペンキを頼りに沢を下る。まだ所々、凍っているところもあり、慎重に歩く。

12:15 皇海橋に着。いいペースで下って来れた。しかし、途中で首にぶら下げていたデジカメが、首紐が切れたため落ちて転がり、沢の流れの脇の水溜まりに落ちた。すぐに追いかけたが、一瞬遅く水の中に。素早く取り上げたが、時既に遅し。防水仕様ではないのですっかり濡れてしまった。素早く乾電池とスマートメディアカードを抜き取り、水気を拭き取る。本体の内外の拭けるところは全て水分を取る。本体を振って、中まで入った水を出す。出来る限りのことをやって、あとは中でショートしなかったことだけを祈って、とりあえずカメラを片づけた。まだ、撮りたい写真もあったのだが、仕方がない。本当についていない。ブルーな気分で皇海橋まで歩いた。気温16度。
<番外編>  
  この日、数ある不幸は山でだけのことではなかった。不幸自慢をしても始まらないが、記憶に留めておきたいので書くことにする。
  なんとかオフロードを耐えたかに見えた愛車であったが、17号を走っている最中に前橋で、急に妙な音が聞こえたので、すぐに道路わきに車を寄せて車外へ。左リア・タイヤがぺしゃんこであった。たまたま車を寄せた場所がラブホテルの入り口で、仕方なく車を入れ、スペアタイヤに交換。再び車を走らせると、捨てる神あれば拾う神ありで、すぐ先にイエローハットを見つけ、パンク修理を依頼。余計なことにパンク修理では済まず、タイヤ側面が裂けていることが判明。お金があればセットで交換したいところだが、貧乏なので1本だけ交換することにした。今回の山行は高くついた。
 12:55 朝間違えた、林道終点の札。この手前で3人の猟師
に出会った。遠目にも猟銃が見えたので、それと分かる。オフロード4駆が3台。皇海橋の反対側の林道からゲートを開けて下って来たらしい。話を聞くと翌日、鹿の猟が解禁になるとか。最近は皇海山の登山客が増えたので、鹿たちは生活圏が狭まり、猟師にとっては昔よりは狙いを絞り易くなっと言う。皮肉なものだ。我々登山者が楽にこんな奥山にも登れるという便利さの裏に、多くの犠牲や環境破壊を生んでいる。

13:40 駐車した場所に着く。車が2台増えていた。山の途中で出会ったうちの誰かの車であろう。この日一番こたえたのは、この林道歩きであった。

13:55 車で下山開始。

14:40 栗原川林道入り口。長い砂利道を慎重に慎重に車を走らせ、なんとが無事下山できた。
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