烏帽子折   <観世流>

日時:2004.03.21(sun) NHK教育 15:00 - NHK教育放送
収録:2004年1月 国立能楽堂 18回NHK能楽鑑賞会

出演者:
前シテ(烏帽子屋亭主):関根祥六
後シテ(盗賊・熊坂長範):関根祥人
子方(牛若丸):関根祥丸
ツレ(烏帽子屋の妻):武田尚浩
ワキ(三条吉次):森常好
ワキツレ(弟・吉六):舘田善博
若者頭・熊坂の一味:上田公威
立衆:10名
アイ(小賊):3名
アイ(六波羅の早打):吉住講
アイ(宿の亭主):久保克人
笛、小鼓、大鼓、太鼓:各1
地謡:8名


あらすじ:
 
前場:
 商人の三条兄弟。商いの旅に出る様子。奥から子供の声。牛若丸が登場。師匠に勘当された、旅の供をしたいと2人に願い出る。兄弟はその子が牛若丸とは知らない。3人は連れ立って旅することになる。
 早打が登場。鞍馬の寺から牛若丸が脱走したと告げる。すぐに見つけ出せと言う。
 それを陰で聞いた牛若丸は烏帽子を被って東男に成りすまそうと考え、烏帽子屋を訪ねる。
 鏡の宿。烏帽子屋亭主が揚幕の前で、店を訪れた牛若丸に応対。至急、烏帽子を追って欲しいと頼む。しかも平家の世なのに左折にして欲しいと(左折は源氏を意味する)。亭主はそれを不審に思うが子供の言うことだからと、注文を受ける。早速折った烏帽子を牛若丸の頭に被せる。少年の器量に感心する。お代として腰の小刀を亭主に渡す。
 烏帽子屋の妻(年増の女面)が登場。橋掛りにて牛若丸のことを話して聞かせる亭主。それを聞いて泣く妻。彼女は鎌田正清(源義朝の家臣)の妹であった。彼女は少年が牛若丸であると直感。2人して少年に会う。正清の妹と知り、牛若丸も涙する。亭主は刀を彼に返す。
 夫婦が退場。舞台後方に控えていた三条兄弟が再び登場。旅路に向かう。
 赤坂の宿に着く。弟が手配した宿。宿の亭主が言うには、この辺りの悪党が宿に夜討ちを掛けてくるらしい。牛若丸は自分が相手をすると言う。扇子を手に舞う牛若丸。
 小賊3名が松明を手に登場(皆、長く垂らした口ひげ)。闇夜を順番に宿に押し入るが牛若丸に撃退される。

後場:
 盗賊の首領・熊坂長範(悪人の面)が若者頭を初め、立衆10名を引き連れて登場。若者頭は先に宿に押し入った小賊の結果を話して聞かせる。暗闇の中、盗賊らは一人一人と宿に侵入。それを待ち構え、討ち取る牛若丸。盗賊らは闇夜の中、同士討ちまで始める始末。
 ついに最後に63才の熊坂が5尺3寸の大太刀で牛若丸に襲い掛かる。しかし彼には敵わない。刀では敵わぬとみた熊坂は太刀を捨て、組み合いに持ち込もうとするが、逆に斬り倒されてしまう。

感想:
 
関根祥六祥人祥丸の関根家3代による演技。
 能としては最大級の登場人数。牛若丸(源義経)が主役のお話は多い。
祥丸くん演じる牛若丸もなかなか凛々しくて好い。彼に討たれる盗賊らが受け身なしに、直立不動でバタリと後ろに倒れるのは少し痛そう。よく後頭部を打たないものだと感心した。大の大人が十人以上もかかっても敵わない。弱過ぎである。熊坂なんて顔が怖いだけ。

参考資料:
「能楽ハンドブック」 戸井田道三・監修、小林保治・編(\1,500 三省堂)

更新日: 04/05/24