文楽 絵本太功記
♪日時:2003.07.27(sun) 22:00- NHK教育放送
♪収録:大阪国立文楽劇場。「劇場への招待」より
♪出演者:
・武智十次郎:吉田玉男
・嫁・初菊:吉田蓑助
・妻・操:吉田文雀
・母・さつき:桐竹紋寿
・武智光秀:(吉田蓑太郎改め三世)桐竹勘十郎
・旅僧(実は真柴久吉):吉田勘緑
♪内容:
・夕顔棚の段
幕が上手から下手へ開く(歌舞伎とは逆)。
旧暦六月。尼ヶ崎の閑居。軒先に鉢植えの夕顔が咲く。先に武智光秀(明智光秀のこと)は主君・小田春永(織田信長のこと)を討ち、天下人の座を奪う。しかし謀反人として春永の家臣らの軍勢との戦いの真っ最中であり天下人には程遠い。息子の謀反を知る母は、光秀の妻・操、孫・十次郎の婚約者・初菊(真っ赤な姫の衣装)に向かい、謀反人となってもそれぞれ夫に仕えるように説く。旅僧が一夜の宿を借りたいと訪れる。その僧が真柴久吉(羽柴秀吉のこと)と知り、追ってきた光秀が物陰から家の中を窺うが、すぐに姿を隠す。そこへ十次郎(元服前。前髪付きの艶やかな若武者ぶり)が真柴ら軍勢との戦いへ出陣する前に挨拶に来る。そこで、さつきはまだ祝言を挙げていない孫がそのまま討ち死にすることをおそれ、出陣前に急いで初菊との祝言を挙げさせようと準備を始める。
・尼ヶ崎の段
(前半)
祝言を挙げることにはなったが一度出陣すれば生きて帰れるとは思えない。初菊を若くして未亡人にするに忍びないと悩む十次郎。悲しみに暮れる初菊。十次郎は覚悟を決め、初菊に出陣の準備をすると告げる。奥へ下がる十次郎、初菊は重い鎧櫃を押してそれに続く。さつきと操が祝言の盃の用意をして出てくる。そして煌びやかな鎧に身を固めた十次郎が再登場。三々九度の盃を交わした十次郎は、勇ましく見得を切って出陣。残された女たちは別れを悲しむ。さつきに勧められて旅僧が一番風呂に入る。
(後半)
夜陰に紛れて光秀(額に三日月の傷。春永に打たれたらしい)が登場。玄関先の竹を一本切り竹槍に仕上げると、屋敷に入っていく。まだ久吉が風呂にいると思った光秀は襖越しに槍を突き入れる。しかし竹槍の先に母が苦しむ姿!久吉を討ちもらし、母をも傷つけてしまった光秀は嘆き悶える。「暴君を討ったのは私欲のためでなく、天下万民のためだ」と語る。
戦場で矢を受け、傷ついた十次郎が戻って来る。気を失い倒れた息子に気付け薬を飲ませる光秀。息も絶え絶えの母。意識を取り戻すも目も見えなくなる息子。
光秀は表に出ると松の木に登り、尼ヶ崎沖の軍船を望む(背景に船が浮かぶ海が広がる)。
奥から久吉が大将姿で登場。ここで大将どうしがすぐに雌雄を決するということにはならない。息を引き取る母と息子。
そこへ佐藤正清(加藤清正のこと)率いる久吉方の軍勢が押し寄せる。ここでも決戦とはならず、山崎合戦(天王山)へ持ち越されることになる。光秀、久吉が見得を切って幕。
♪感想:
光秀が謀反し、滅亡するまでの13日間を描いた物語(全13段)。歌舞伎でも取り上げられる作品。
人形使いの三代目・桐竹勘十郎の襲名(実父の名跡を継いだ)披露講演より。出演者に文楽界の重鎮が脇を固める(蓑助は師匠)。あまり目にする機会も少ない文楽であるが、吉田蓑太郎だった頃の姿はなぜか時々、目にすることがあった。三世・勘十郎が操る主役の光秀の動きは豪快であり、「太功記」ではあっても(秀吉が主役の)「太閤記」ではないのだと思わせる。
この舞台だけを見ると光秀は主君を討ったただの極悪人ではない。当時の世間の信長の評判は知るすべもないが、光秀の謀反はどう受け止められたのか?日本史上の大事件だけに演劇や小説の題材にされることが最も多いものの一つだろう。しかし謀反は謀反。母もそのことが一番の重荷であった。
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更新日: 03/08/09
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