狂言 蜘盗人
(くもぬすびと)<和泉流>
♪日時:2003.07.20(sun) 15:00 - NHK教育放送
♪収録:国立能楽堂。定例公演より
♪出演者:
・男:野村万作
・有得人:野村万之介
・太郎冠者:月崎晴夫
・客人4名
♪内容:
(人一人入れるくらいの大きさで、布で覆った作り物が舞台右手奥に置かれる。)
有得人は太郎冠者から客が屋敷に到着したことを知らされる。準備が出来ているか尋ねた後、一旦下がる有得人。替わって”男”が登場。連歌が好きだが、身上不如意(貧乏)のため連歌の会に招かれることもないと嘆く。せめて連歌会に忍び込んで立ち聞きしたいと言う。
連歌会が開かれるらしい(有得人の)立派な屋敷の葦垣を持参したのこぎりで切り、破ると屋敷に忍び込む。これに気付いた太郎は騒ぎ出す。有得人に知らせると、有得人は4人の客らと松明を手に侵入者を追う。作り物の前へ”男”を追い詰めると、中から”男”の声がする。作り物を覆っていた布が剥がされると中に蜘蛛の巣に捕らわれた”男”の姿。身動きできなくなった姿が哀れで滑稽。弁解する男。
連歌好きというその話に有得人は男へ、自分の発句に対して下の句をつけて見せろと言う。その出来によっては許そうと言う。発句にすかさず句を継ぐ男に感心する有得人ら。ならば蜘蛛の巣から逃れさせようと、太郎に蜘蛛の巣を払わせる。脱出した男。そのまま立ち去ろうとする男を引きとめ、連歌会に誘う。男は酒まで振舞われる。有得人から一舞いを求められると、男は有得人・客人らの謡いに合わせて舞う。
小袖まで手土産にもらった男は感謝を込めて、更に自ら謡い、舞う。
♪感想:
「盗人に追い銭」という諺があるが、この狂言では侵入者の”男”はそれほど悪者でもないし、有得人も葦垣を破られた以外に被害はない。結局、連歌会に誘われ、酒を振舞われ土産までもらった”男”はなんともツイている。有得人・客人らも楽しい夜を過ごしたのだから、両者とも不幸はなかったことになる。”男”はこの世も捨てたものじゃないと思ったことであろう。なんともありがたいお話である。
狂言には「連歌盗人(盗人連歌)」という演目もあるらしい。
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更新日: 03/08/01
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