船弁慶    <四番目物 〜 観世流>  

日時:2002.5.26(sun) 15:00 - NHK教育放送(豊田市能楽堂)
出演者:
前シテ・静御前、後シテ・平知盛の怨霊:野村四郎
子方、源義経:上野雄介
ワキ、武蔵坊弁慶:宝生閑
ワキツレ、従者:宝生欣哉、則久英志
アイ、船頭:山本東次郎
笛、小鼓、大鼓、太鼓:各1
地謡:8名


物語の舞台:
摂津・尼ヶ崎・大物(だいもつ)の浦

内容:
  「重前後之替(おもきぜんごのかえ)、名所教え」という演出で演じられた。
(装束や舞がより重厚で、ドラマチックになっているらしい)

 時は源氏が平氏を滅ぼした12世紀末。その平家との戦いの立役者、義経が兄の頼朝と不仲となり命も危うくなっていた。弁慶らのごくわずかの従者のみで西方に向かう義経。
<前場>
 お囃子をバックに義経ら主従が登場、舞台で二列になって向かい合う。短い謡のあと、弁慶が今ある状況を語る。弁慶は彼らについて来た静御前を都に帰してはどうかと、義経に諌める。任された弁慶は橋掛かりの方に進み、静の登場を待つ。そこで彼女は弁慶の言葉を避け、直接義経と話すため舞台へ向かう。
 義経に説き伏せられた静は、別れを惜しみ、酒宴の席で義経の身を案じながら舞う。
弁慶に烏帽子、直垂を着けて指し舞って欲しいと頼まれた静は、その場で着替え、舞い始める。舞は静かなゆったりとしたものである。一旦、橋掛かりへ引き膝まづいて涙を流すが、再び立ち上がると舞台に戻り舞う。舞い終えて烏帽子、直垂を脱ぎ捨てると、再び涙し、そのまま揚幕の奥に下がる。

<後場>
 その一部始終を知る船頭(狂言座に控えていた)が、弁慶と話をする。弁慶はすぐに船を出すように頼む。船頭は船を表現する作り物(簡素な骨組みといったところ)を手に、素早く舞台に現れ、主従の前に置く。一行は船に乗り込むと、船頭が海に漕ぎ出す。船頭が棹を手にその辺りの名所などを説明しながら、船を漕いでいると天候が急変。山から風が吹き降ろし、波が荒くなる。囃子方の演奏も激しくなり、天候の荒れ様を表現する。
 そこに平家の亡霊たちが現れた、と騒ぎになる。
 そして知盛の怨霊が登場。怖そうな面に、蓬髪の頭に角のような突起物、手に長刀(なぎなた)。長刀を手に荒々しく舞うと、義経に襲い掛かる。船首に座っていた義経は立ち上がり、刀を抜き、怨霊に立ち向かう。が、相手は刀で倒せる相手ではないと、弁慶がそれを押しとどめ、代わりに数珠を押し揉んで呪文を唱える。怨霊はそれに押され(橋掛かりの方へ)遠ざかっていく。船頭は汀(みぎわ)に船を寄せると、再び怨霊が迫る。弁慶が更に祈りを奉げるとついに怨霊は姿を消す。

感想:静御前の面が美しい。生きているように見えることも。
 ふと思ったが装束の唐織の胸前をなぜ大きく広げているのだろうか?
 アイ(狂言方)の山本東次郎さんはいるだけで面白いが、今回は狂言ではないから特に面白可笑しい役ではない。しかし船を漕ぐ姿などは滑稽そのもの。
 弁慶は歌舞伎などに登場するような仰々しい雰囲気ではないが、台詞や謡で重厚さを表現している。

参考資料:
「能楽ハンドブック」 戸井田道三・監修、小林保治・編(\1,500 三省堂)

更新日: 02/06/04