映画Private Ryan

日時:2002.02.10(sun) 21:00 - TV朝日放送(1998年 アメリカ作品)
監督:Steven Spielberg
キーワード:第二次世界大戦ノルマンディ連合軍、京都、鮫

Story:
 第二次大戦中の1944年6月6日、フランスはノルマンディ地方、オマハ・ビーチに連合軍の上陸作戦が始まった。敵ナチス・ドイツ軍が銃口を並べて待ち受ける浜へ、膨大な数の上陸兵を乗せた揚陸艇が進む。上陸前から激しい銃撃と砲撃に晒され、無謀な作戦とも思えるほど。味方の被害も甚大。悲鳴や怒号が響き、海岸は修羅場と化す。米国ミラー大尉(Tom Hanks)も部下を引き連れ、弾丸の飛び交う中を敵の前線を突破しようと試みる。
 多くの犠牲者を出しながらも、連合軍は作戦を成功させ、海岸に足場を確保する。海岸線では兵隊達の死体が波に洗われ、戦闘の激しさを物語っている。
 本国アメリカでは膨大な数の戦死した家族への通知が大急ぎで作成されていた。時の合衆国陸軍参謀総長ジョージ・C・マーシャル将軍はある命令をノルマンディの前線へ送る。その命令とは三人の兄が戦死したジェームス・ライアン2等兵を戦場から連れ戻すというもの。ただ、空挺部隊の彼がどこに降下したかがはっきりしない。その命令がミラー大尉の部隊に下った(ノルマンディ上陸の日”Dデイ”から3日目のこと)。
 通訳として新たに引き抜いたアパム伍長を加え、7人の部下を引き連れてライアンを捜し求めて最前線に向かう。たかが一兵卒を探すための危険な任務に当然、部下も疑問を感じる。途中でカパーゾ2等兵を失い、敵レーダー基地を突破する際にはウエイド衛生兵を失う。任務の邪魔になるとして捕虜にした敵兵を逃がしたことで、案の定、不満の残るライベン2等兵が大尉に反発。隊の統率の危機に初めて大尉は自分の元の職業などを明らかにする(部下達の賭けの対象になっていた)。彼は教師だった(右手には震えが)。
 なんとかライベンを引き留めた部隊はライアンを求め、更に前進。ついにラメルという地で橋を守る部隊にいるライアン(Matt Damon)を見つけるが、当の本人は自分を命賭けで探しにきた大尉たちに敬意を表するも、仲間を置いて帰国することを拒む。ある意味、当たり前とも言える彼の反応に大尉も半分納得(元々、命令がイカレテいるのだ)。大尉は彼らとその地に残り、後続の支援部隊の到着を待って、敵から橋を守ることに決める。
 司令官を失ったその部隊でミラーが代わりに敵迎撃準備の指示をする。廃墟と化した市街地でレコードからエディット・ピアフの歌声が流れる。戦場のひと時の休息。
 ドイツ軍が襲来。作戦どおり敵を誘い込むが敵は戦車など圧倒的な兵力。ある程度、作戦は効果があったが、その圧力に次々に部下は倒れていく。
 橋を爆破させて、敵の前進を阻もうとしたその時、ミラー自身も激しい戦闘に傷つき正気を失う。身動きできなくなり、戦車に拳銃を撃ち込むが、なんの効果もないどころか彼の命も危ない。危機一髪、そこに味方の戦闘機が援護に到着。引き続き、陸上からも援護部隊が到着して、みるみるドイツ軍は後退を始めた。瀕死の重傷を負ったミラーは死の直前、ライアンに「命を無駄にするな」と言い残す。

Memo:
 映画は年老いたライアンがミラーの墓前で戦時中を振り返るという形で構成されている。映画の最後、ライアンは妻に「自分と暮らしてきて幸せだったか」と尋ねる。ミラーたちの命を引き換えにして今、自分という存在がある。それだけの価値のある人生を送って来たかを彼は自問していた。
 生前、ミラーは多くの部下を戦場で失い、それでもやってこれたのは、一人の犠牲がその何倍も何十倍もの命を救うためだと、自分に思い込ませてきたからだと語る。敵一人を殺すたびに、故郷が遠のく気がするとも言う。帰国しても妻が自分のことを人が変わったのではないかと言うのではないかと心配もしている。戦場という究極の場所で本当の人間性が現れることを彼も感じていた。
 今更、なぜ戦争映画か?とも思ったが、Spielberg 監督も先の大戦には思うところがあるのだろう。
 戦場から一兵士を連れ戻すという突拍子もない任務が本編の中心だが、実際にそんな史実があったかどうかは私は知らない。その任務にどんな価値があるか疑問を持つのも当然である。ミラーは自分が探し求める人間が生き残って、なにか価値あるものを残してくれればいいと自分や部下に思い込ませることで、危険な任務を続けることができた。
 戦闘シーンではカメラが駆け回る兵士の後を追い、臨場感に溢れている。生々しい場面も多いが、出来るだけ戦場のリアルさを伝えたいのであろう。負傷した兵士は母の名を呼び、命乞いをする。あるいは神に祈りを捧げる。足がすくんで身動き出来なくなることもある。それがリアルということだろう。
 長編ではあるが時間を忘れさせ、(ビデオ録画しておいたものだが)疲労感もなく、一気に見終える。

更新日: 02/02/24