映画 The Natural  

日時:2002.10.27(sun) 22:00- NHK教育放送(1984年 アメリカ作品)
キーワード:メジャーリーグ中年ルーキー銀の弾丸、プレーオフ八百長

内容:
  ロイ・ホッブス(Robert Redford)はメジャーリーガーに憧れ、故郷を離れ汽車でシカゴへ入団テストに向かう。その途中で”大砲”というバッターに出会い、汽車の停車時間に下車し対決。そこで”大砲”を三球三振にしとめ、それを見た人々は誰もが、投手としてメジャーでの活躍を確信した。しかし汽車で出会った謎の女にシカゴのホテルで誘われ、部屋に行ったところで彼女にピストルで撃たれる。その頃、スポーツ選手が銃殺される事件が続いていた。
 その16年後のNY、シーズン途中の”NYナイツ”というチームに一人の男がスカウトされてやってくる。ポップ監督はその男を見て、引退する年齢だと言って呆れる。彼こそロイであった。監督はロイをベンチには入れるがゲームに使うどころか、練習すらさせない。しかしチームが連敗したある日、代打で起用され活躍。彼の手には昔自分で作ったバット。そこには「Wonderboy」の文字と稲妻模様の焼き入れが。彼は投手としてではなく打者として、長年の夢であったメジャーデビューを果たす。経歴を明かさないため謎の中年ルーキーとして話題が沸騰。ホッブス効果でチームは波に乗る。
 しかし監督の姪メモ(Kim Basinger)と付き合い始めるようになると、彼女にのぼせ上がりスランプに陥る。
 そんな中、シカゴ遠征でのゲーム中にスタンドで彼を見つめる女性に気付く。その後、大ホームランを放ち、調子を取り戻す。彼女こそ幼馴染のアイリス(Glenn Close)、故郷を離れて以来、顔を見ていない。試合後、彼女に会うとまだ独身であると知る。しかし彼女には16才の息子がいた。父親はNYにいると言うがそれがロイ自身であることに気付いていない。
 チームも調子を取り戻し、リーグ優勝も見えてきたある夜、緊急入院。古傷が悪化したのだ。胃からは銀の銃弾が摘出され、3日ぶりに意識を回復した彼には苦い過去が蘇る。リーグ優勝のためにはプレーオフで勝つ必要があったが、医師は出場は命に関わると言う。
 見舞いに来たメモは彼女の支援者でノミ屋のガスとの取引で、ロイに出場しないように誘う。半分は彼の命を心配しているが、彼の引退後の転身で二人での成功を望んでいる。彼の胸の内を知る由も無い。また”判事”という男はチーム乗っ取りを画し、彼を買収しようとやってくる。彼はチームの大株主であったが、ガスと組んで八百長を仕組むつもりであった。ロイは彼らを嫌っていて、もとより協力するつもりなどない。
 しかし彼は病気をおしてプレーオフに出場。2対0でリードを敵にゆるして向かえた9回裏。一打サヨナラの場面。ロイに打順が回ってくる。彼のユニフォームには血が滲んでいた。その打席でホームランかと思った打球は大ファウルとなり、愛用のバットも折れてしまう。作り方を教えてバットボーイが作ったバットに持ち替えて、彼が放った打球はスタンドの照明を直撃する大ホームラン。逆転サヨナラ勝ち。そのスタンドにはアイリスが息子と観戦する姿があった。ラストシーンは農場でロイが息子とキャッチボールをするシーンに切り替わる(オープニングシーンに重なる光景)。

感想:
 プレーオフ後のロイの人生は語られないが、命に別状はなかったのか?ラストシーンは現実かそれとも彼の夢の映像なのか?定かではない。
 長くメジャーで活躍する夢を持ち続け、命を省みず金よりも夢を選んだ中年ルーキーは人々に強烈な印象を与えた。人生でも逆転サヨナラを演じて見せた。殺人未遂事件のせいでメジャーの選手にすらなれず、不遇な日々を重ねていた男が突然メジャーデビューし、活躍したのだから。
 Robert Redfordの顔には中年選手らしい皺が目立つが、(映像ではプレイに切れがないのが気になるが)目の輝きが少年のようで、この役にはぴったりであった。
 ところで巨人の松井は来シーズンからNYヤンキースのユニフォームを着ることになった。憧れのメジャーで、憧れのチームでプレイできるのは素晴らしいことだ。ロイとは違って松井の場合は、順調に野球人生を送って来たといってよい。まるで映画のように出来すぎてはいるが裏には我々の知らない努力や、強い意志の力があるのだろう。一方、同じくメジャー志向の近鉄・中村は急転直下、NYメッツ行きを翻し、残留を決意。現実の方もドラマチックな展開を見せるが、いずれにせよ選手はファンをがっかりさせないようプレイしてもらいたいもの。有力な選手が海外に流出していくのも、日本球界に問題がある。日本では夢は見られなくなっているのだ。私も日本野球にはほとんど興味を失っている。最近はTVニュースで試合結果を見る程度である。


更新日: 02/12/23