読書メモ
・「日本新生計画 〜世界が憧れる2015年のジパング」
(舛添 要一:著、講談社 \1,500) : 2010.11.04
内容と感想:
自民党を飛び出し「新党改革」を旗揚げした著者が今年の参院選の前に出した本。
10の提言を10の章に分けて述べており、そのまま新党の政策集といってよいだろう。
著者の政治家としての使命は国民に「安心と希望」を与えることだという。
それを実現するための提言が熱く語られている。
政策よりも2007年から務めた厚生労働大臣職時代の裏話のほうが興味深く読めた。
政権交代後の厚生労働大臣・長妻氏に対する評価は厳しい(既に内閣改造で退任したが)。
野党時代に年金記録問題追及では勢いがよかった長妻氏だが、大臣として大した成果を残せなかった。
やるべきことをやっていなかったと著者は指摘している。
本書で述べられている政策はいずれも優先度の高いものばかりだし、特に違和感も感じない。
失礼な言い方だが民主党や自民党の政策とさほど変わり映えはしない。
しかし舛添氏は厚労大臣時の活躍が評価され、世論調査で次期首相候補にも挙がったことがあったように人気はある。
残念ながら参院選挙では、大臣時代の実績はアピールできたものの、新党としての存在感を示せずに終わってしまった。
さて、現在の民主党の政権運営を見ている限り、先は長くなさそうだ。そうなるとますます政界再編の動きが強まると予想される。
今後も、著者は政界再編の動きの中心にいられるだろうか。キーパーソンの一人であることは間違いない。
○印象的な言葉
・大臣キャビネ:大臣直轄の補佐官集団。大臣直属のミニ内閣。厚生労働大臣時代に実現、省庁横断的に優秀な官僚を集めた。大臣の知恵袋。役人には政治家への転身のステップに。
・首長と直接対話する重要性
・小選挙区の廃止。小選挙区は死票が多く、得票率が議席数に反映されない。そのときの風によって無能な候補者でも当選する。国会が衆愚の館と化す。政治が政策中心でなくなる。
候補者は政党に「おんぶにだっこ」
・フランスは二回投票制。過半数をとれなかった場合は決選投票
・「元気なお年寄り」で財政再建、景気浮揚。高齢者が元気に働けば税収はアップ、医療費の減少も見込める。生涯現役社会
・牽制外交、多元外交
・地方の国際化
・自民党は2009年の衆院選で大敗したが、いまだ同じ党本部の建物を使い、大勢の職員を抱えている。維持運営費は少なくなった議員一人一人にのしかかっている。
党は落選した議員の面倒も見ている。現役議員にしわ寄せがいっている。
・大臣は大きな方向付けをし、役人を動かす役割。最低でも3年は続けなければ改革はできない、省内の役人を掌握するのに2年かかる。
閣僚は政局を気にせず腰を据えて仕事に取り組めるようにすべき
・大臣の外部シンクタンクとして従来からあるのは審議会。メンバーは役所の推薦で決まる。御用学者を推薦する
・国民が噂に惑わされないようにするには直接、大臣が国民に語りかけ、迅速に情報を提供するのが一番
・普通の人が政治家を目指し、普通の生活をしながら政治に携われるシステム
・国会の完全可視化。本会議、全委員会を実況中継、動画配信する。あとになっても見られるようにする
・無能な100人の議員より優秀な10人の議員を
・NYタイムズやワシントンポスト紙はどの党を支持しているか明らかにし、政策を批判したり評価している。日本のメディアは批判だけ。
・日本のガラパゴス化は製造業、教育、情報通信などあらゆる分野に広がる。金融政策、外交も
・ハイテク分野で日本製品は先陣を切って走るが、気がついたときは他の国はコースそのものを変えゴールしている。(→兎と亀の話のよう)。国際標準化を見失っている。
・アニメ市場。放映権、DVD販売、キャラクターグッズ、ゲームソフトなど関連市場を含めれば、日本のソフト輸出額は鉄鋼業を抜く
・貸家住宅政策重視。少子化が進み余った家の処分が問題になる。子供が独立し老夫婦では広すぎる家を貸す。二人で住めるマンションに引越し、貸家の賃貸料を収入にする
・パリは一軒家を建てることを禁止している。限られたスペースに一部の人が土地を独占するのは公共の観点から望ましくないと考えている
・大都市圏の住宅は高層化し、緑地を増やす
・昔、ニュータウンと呼ばれた大規模団地では高齢化が進む。持ち家政策がお年寄りだけの街、若い夫婦だけの街を作り出している
・コミュニティバスと駐車場を組み合わせて中心街へのパークアンドライドを実施。商店街で一定額の買い物をすると駐車場を無料にする
・ノーマライゼーション:ハンディキャップのある人でも普通の暮らしをする権利があるという考え方。原則は残存機能(自己資源)の活用、生活の継続性の尊重、自己決定の尊重。
・障害があっても介護の要らない人を増やすのが福祉の原則
・医療は現場、地域のイニシアチブを第一とする。改革努力を怠らない。無駄を省く努力を怠らない
・子供手当てより公立学校の教育水準向上を。親が楽になる、余裕もできる
・かつて清・日本・ロシアの三国に囲まれた朝鮮半島はロシアと日本との外交に失敗して、日本に併合された
・自衛隊に対するまやかしの憲法解釈は止めるべき。自衛隊が法的な拘束を受け、防衛という任務を十分に果たせないのは問題
・農水産物には高付加価値商品としての需要がある。高級品、健康食品の需要
・農業の実力を評価する世界基準はマーケット規模。日本は世界5位の農業大国。規模は8兆円。
・農家も海外に生産拠点をもつべき
・畑を野性動物が荒らすようになったのは、里山が原生林のようになり、山間部と農地の緩衝地帯の役割を果たさなくなったため
・行政の原則:近ければ近いほどいい。
・認知症の進行を食い止めるには外部から刺激が入る環境がいい
-目次-
必ず甦る日本人の心と富
政・官・業・組合の癒着を完全に断つ
「大臣キャビネ」で政治主導の確立を
行政現場第一主義の実現を
国会議員半減で政治家の質の向上を
内向きから外向きの日本に変え経済成長を
都市・住宅政策で世界最高の暮らしを
教育・医療・介護の充実で七〇歳現役社会を
世界が尊敬する外交・世界が畏怖する国防を
農林水産業を黄金の基幹産業に
国家の新しいモデル「廃県置州」実現
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