読書メモ

・「世界バブル経済終わりの始まり ─実践・臆病者のための黄金の投資学
(松藤 民輔 :著、講談社 \1,500) : 2009.01.22

内容と感想:
 
前著「世界アメリカ経済終わりの始まり」が出た後(2007年6月)に書かれた本。 その後、2007年2月に上海株の急落を受けて、NYダウも一時500ドルも暴落したこともあって、 著者の予測が現実のものとなった。
 本書では世界同時株安をうけて、今後どう投資し、運用していくべきかを考えている。 出されてから2年もたった今、読んでも無意味かも知れないが、検証も兼ねて著者の一投資家としての考え方を知るのも 価値があるのではないかと思い、本書を手にした。
 著者の主張は前著に引き続きシンプル。 FRBが金利を下げるとNYダウは暴落、更に時間をかけて下落していき、それに反するように金(Gold)が暴騰し、実物経済が投資の主役となる、 というもの。
 第一章では2007年初頭の世界同時株安の経緯を追い、第二章では一章を受けて、新たな局面での投資の見方(新常識)を述べている。 第三章では著者の経歴と現在経営する金鉱山ビジネスについて語る。第四章では著者が最も期待している金を含む投資商品について書いている。 第五章は世代別資産運用法と題して、30代以下、50代以下、団塊世代それぞれの資産運用方法について考えている。
 金の専門家で自身、金鉱山を持つ経営者であるが、2020年まで金は長期的に上昇すると観ている。 世界景気が回復すれば株価が上がり、金価格は下がる。景気循環はあるとしても世界的に経済成長が続けば、 それに沿うように他の商品(コモディティ)同様、金も長期的には需要が伸びることは明らかだろう。

○印象的な言葉
・NYダウの適正値は7,000〜8,000ドル
・データやチャートより企業トップを見る
・ゼロ金利の国は経済力がある
・成功の近道は一流に真似ること
・投資信託はリスクが大きい
・債権市場に手を出すな
・REITは終わった。利回りが10〜12%圏内に上がらない限り手を出さない
・ゼロ金利で世界にバブルを輸出したのが日本。長期に渡るゼロ金利政策がアメリカのバブルの原因。 円キャリードレード。超低金利で円を調達し、高金利の他国市場で運用。世界でバブルを引き起こした。
⇒他国を蹴落とし、日本が復活するための巧妙で計算づくの政策だった?
・不動産価格は景気や株価の先行指標
・アメリカ社会は負け組意識、虚無感、無力感という内部事情により自己崩壊するかも?
・分散投資は金持ちのためのもの。儲けるなら集中投資
・優良企業は安定している。安定企業の株価は変動がない。変動がなければ儲からない
・一般投資家が株式市場に出入りするような頃は既に終局面を迎えている
・小さくともきらりと光るハイテク企業
・日本国債を大量に買っている日本人はこの国を裏切らない(裏切れない)⇒裏切れば国と心中
・飛び込み営業:相手人会えるかどうかは相手を笑わせることができるかで決まる
・成功したら「運がよかった」、失敗したら「自分が悪かった」
・難しいことを簡単に一言で表現できなければ、それを自分のものにしているとは言えない
・「頭のいい人」たちが面倒だと参入してこないビジネス
・世界の金融業界をリードする人材はほとんどソロモンブラザーズ出身者
・金ETF:金地金(現物)で運用する投信。購入額に応じて現物を保管。流動性に優れ、手数料も安い。
・世界の成人人口のうち、最も豊かな上位1%が総資産の4割を保有。彼らが居住するのは米国と日本が特に多い。
・住宅は20年もすれば資産価値はゼロ。売るに売れない。売れてたとしても住むところがなくなる。売れない資産はないも同然。価値が付かない。
・業績が悪く、短期見通しも暗く、全体的に悲観ムードが漂っていて株価が低いときこそ絶好の投資チャンス
・日経平均が下がったら一部上場株を少しずつ買い増す
・住宅ローンはハイリスク。住宅を買うべきではない

-目次-
第1章 世界同時株安は、世界的バブルの終わりの始まり
第2章 いまはすべてを手仕舞って備えるとき!
第3章 一〇億ドルの金山を持つ男はこうして生きてきた
第4章 投資対象の選び方 ―戦略商品としての「金」
第5章 豊かになりたい臆病者のための「世代別資産運用法」