読書メモ

・「ソフトウェア開発で伸びる人、伸びない人
(荒井玲子 :著、技評SE新書 \840) : 2009.07.04

内容と感想:
 
技術誌「Software People」の記事を再構成した本。 ソフトウエア開発者として成長するため、成功するために必要な考え方を説く。 開発リーダーは必読だし、伸び悩んでいると感じているエンジニアも必読である。
 「まえがき」にあるように「伸びる人には共通の特徴がある」という。 ある技術をすぐに身に付ける人は他の分野でもすぐ技術を習得してしまうそうだ。 「考え方を少し変えるだけ」で「伸びる人」になれると知った著者は、 本書の中で、その「考え方」についていくつも列挙し解説している。 キーワードとしては以下のようなものが挙げられる:
 目的指向、素直、好奇心、プロ意識、業界レベルでの視野、強み・専門性、抽象化、聞き上手・質問上手、など。
これらはソフトウェア開発技術者だけの話ではなく他の分野でも共通なのではないか。 こうした考え方を身に付けるには日々の「姿勢と習慣」が大切になる。 基本になる考え方を身に付けて実践し、地道に積み上げていけば成功体験も増え、自信も付き、 ソフトウェア開発で幸福感を味わえるはずだ。
 本書は人材育成にも活かせる内容である。

○印象的な言葉
・ソフトウエア開発の仕事の基本:考え出す、工夫を凝らす
・専門分野だけを知っているだけでは足りない
・学問研究スタイルを身につけている
・間違ったプライド、プライドの高さゆえに伸び悩む。プライドは自分に向ける
・分からない、分かっていないことに気付いていない。分かったことにしてしまう
・技術は他人に説明できて初めて身に付いたといえる
・他人は一時的にしか付き合えない。一生付き合う相手は自分
・システムのライフサイクルの8割は保守
・情報の鮮度と量は英語情報が勝る。技術英語は学校英語より簡単
・抽象概念:未知の現象にも過去の経験を活かせる、応用力。本質を捉える
・仕様を曖昧に表現しているのは、品質に対する職務怠慢、犯罪的
・決まっていないことがどこなのか表現されていないことが悪い
・一芸に秀でることは他の分野の専門性を理解することに役立つ
・開発プロセスをすべて経験してみることで全体的に捉える視点が養われる
・専門性に磨きをかけるには保守作業が有効。リファクタリングすることでシステムセンスを伸ばすことができる
・管理者には技術者よりも厳しく技術力が求められる。技術力はあって当たり前
・計画通りでないことを報告しないことが悪い。報告は方針や計画、解決策の妥当性をレビューしアドバイスをもらう場。
・同一企業での長い勤続年数は業界で通用するレベルの技術を持っていないと見られる
・社外の異なる文化を知る
・会社との関係を仕事の契約関係と捉える
・人生は本人次第、そこまで周囲が責任を負う必要はない
・教育が効果を上げるのは本人が向上を望む場合のみ。技術の底上げは幻想でしかない
・ソフトウエア開発者に求められる言葉遣い:論理性、率直、明確さ、明瞭さ、平易さ。分かりやすいこと
・自分のコアスキル、市場価値。年に一回自分を評価。過去一年で身に付けた付加価値は何か?業界動向、技術動向
・組織はシステム。管理職にはシステムの仕様を決定し、設計していく対象が組織に変わっただけ
・週に一回か、月に一回でも目標のために何かをする。それだけで目標が達成できてしまう。目標は書き出して、時々見る
・取り巻く状況が悪いときは、じっとしているのが一番。自分の日課を自分のために静かに実行し続けるだけ。 じたばたするとかえって状況が悪化する。
・「何も反応を返さない」という選択
・自分の考え方を変えるほうが簡単。人は変わることができる

-目次-
第1部 ソフトウェア開発で伸びる人、伸びない人
 よくある疑問
 ソフトウェア開発で伸びない人
 ソフトウェア開発で伸びる人
 これからのソフトウェア技術者
第2部 ソフトウェア開発で幸せになれる人、なれない人
 ソフトウェア開発で幸せになれない人
 ソフトウェア開発で幸せになれる人
 技術者としての幸せとは