読書メモ

・「けっきょく、お金は幻です。
(竹田和平 :著、サンマーク出版 \1,400) : 2009.12.05

内容と感想:
 
明るい世を取り戻すためには、人間としての「あたりまえ」の生き方に立ち戻ることが大事、と説く書。
 著者は経営者として成功し、現在は百を超える上場企業の大株主でもある。 彼は「たまたま世間のお金を少しばかり多めにお預かりしているだけと思って」いる。 「そのお金をどのように使い、世の中に役立てるか、責任がずしりと自分の肩にかかっているようにも感じている」と言うように、 事業で得たお金を投資を通して、社会に還元しようとしている。 第4章では「自分に使う権利はあるが、独占する権利はない」、「上手に使う責任」があると考えている。
 そんな彼の投資手法が気になるが、第1章では「株価が会社の価値を正確に反映することは少ない」という見方をしている。 企業の将来性には着目しないとも。「投資先の会社の明日なんて、その会社の社長にもわからないもの」と身も蓋も無い。 それでもなおリスクのある投資をしている。 投資には「利他的な性格」があり、旦那(スポンサー)になることだといい、「旦那投資法」と呼んでいる。旦那の余裕があるから可能なのだが。
 世間でいうところのお金持ちな人物だが、お金との距離感をしっかりと保っている。タイトルがそれを表わしている。 彼もお金に苦労した時代はあった。成功も失敗もあった。しかし哲学がしっかりしていたから大きく失敗することはなかったのだろう。 お金に振り回されて、自分を見失い、人間が夢幻になってしまってはいけない。
 また、本書では「いつの時代にも通用する古くて新しい生き方の基軸」を伝えたいとも述べている。 (これこそ「保守」、守り伝えるべきものであろう) 失われた20年。日本人は目標を失い、頼るものを失い、迷い、間違い、フラフラしている。 そういうときだからこそ、「あたりまえ」、原点に戻る必要がある。

○印象的な言葉
・うまくいかないときは「当たり前」に徹する。それを忘れがち。愚直。シンプルな道徳心
・天は誤魔化せない。天の意に則する
・身の丈を越えず、夢を見ない。「凡」に徹する。腹八分目。身分相応。皮膚感覚。理解の範囲内。ほどほど。
・「人のため」、真心
・商売とは喜びを与え合うこと。喜びの等価交換
・人をまるごと信じる「大きな愚かさ」を持つ
・難しい問題を難しく解こうとすると、事態はもっとこんがらがる。大きな問題ほど小さなところ、近いところから解決していく
・美しい言葉をいつも口にする。自然に心がきれいになる。感謝の念で胸を満たす
・言葉は気であり波動。周囲にも伝染する
・経営の「経」とは縦糸のこと。企業活動にしっかりとした糸を通す。理念となる柱を据える。「筋を通す営み」
・不幸の中でさえ幸福を見い出す力
・老舗:その歴史を信用。クレームもずいぶん受けてきただろう。
・心とは捉えがたいもの。放っておくと、あらぬところへ転がっていく(→心、コロコロ。音が似る)
・自我(内向きの心)だけでは「心貧乏」になる。自我は真心(外向きの心)の従者であるべき。 自我を小さくしていくと、心は真空状態「無心」に近づく。我を捨てる、馬鹿になる。
・お金を手放すと自我も心から出て行く
・運はブーメラン。放てば満ちる。
・規模やサイズは小さくていいから、競争相手のりないところをゆっくり走ったほうがいい
・信じる人は許す人。恕(ゆる)す。母の心。
・ニコニコしていると福が近づいてくる
・考えるよりも、まず決めること。いくら考えてみても出てくる考えは平均値レベル。
・病気は天からのメッセージ。それまでの生き方に問題があったという注意信号。
・お金に支配されるな。支配されてしまったとたん暴君になる。暴走する。
・大事にするが支配されない。愛しているが溺れない
・核家族化によって家が伝えるものをなくしてしまった(→伝えるべきものはあるはず)。「家の力」の復元、「家興し」(←村興しの前に必要)

-目次-
プロローグ けっきょく、お金は幻です
第1章 真実は“あたりまえ”の中にある
第2章 “人のため”が得の道につながる
第3章 “心のもちよう”ですべてが変わる
第4章 お金でなく“徳”をためる時代