読書メモ
・「なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか」
(若松 義人 :著、PHP新書 \700) : 2009.01.19
内容と感想:
「人づくり」がテーマの書。
トヨタの基本は「モノづくりは人づくり」にある。
第6章にもあるが、その先に経営があり、事業があるという理念だそうだ。
それは単なる手段、手法と考えないほうがいいという。
「モノづくりを通じて人が育ち、育った人が知恵を出してモノづくりを改善するのがトヨタ生産方式である」。
人づくりは10年単位の仕事であり、長いスパンで物事を考えることが必要だという。
中小企業ではなかなかじっくりと人材育成をしている余裕もないが、長いスパンで考えるとはトヨタならではの懐の深さを感じる。
人材育成はどこの会社も重要課題であろう。
せっかく育てても転職していくのが珍しくなくなった(自分もその一人だった)。
だが皆が皆、すぐに辞めていく者ばかりではない。それを前提に育成をすると真剣味も薄れるものだ。
本書では転職を前提とした育成については書かれていないが、そもそもトヨタに入る人たちは終身雇用を前提に入社するのだろうか?
終身雇用であれば新入社員もじっくり育ててもらえるという安心感があり、指導するほうもその指導が無駄にならない。
辞めていく若者に対して、それまでの指導が無駄になったと感じるのはエゴかも知れない。
大して指導していないかも知れないのだ。だから辞められてしまうとも言える。全ては自分に原因があると考えることだ。
さて、本書はトヨタ生産方式を実践する現場において継承され、共有されてきた改善のノウハウと具体的な事例が満載である。
あらゆるビジネスにも活用できると思われる。
○印象的な言葉
・考え抜く力
・人間の能力にそれほど大きな差はなく、あるのは「悩む力」(悩力)の差
・誰がやってもできるプロセス
・安定は停滞。現状維持は後退を意味する
・指摘するのは現場を熟知し、信頼関係を築いたあと。権限を手にし、指示、命令して従わせるだけではいい仕事はできない
・基本と形を重視。形を持つ人が形を破るのが型破り。
・標準のないところに改善はない
・手段や手法ばかりを追っていると藪の中へ入る
・対案なしに反対するな。単なる批評家ではだめ
・守破離:守は物真似、破は自分なりに変えていく、離は自分流を拡大する
・新しいアイデアを生む努力をせず、新しい挑戦をしない者を叱る。努力し、挑戦したが失敗した者は叱らない
・「失敗のレポート」:失敗を通じて学ぶ。失敗を評価し、共有する
・指示以上の仕事を部下に要求する
・会議は参画するもの。議論に積極的に加わり、結論にも責任を持つ。当事者意識
・研修や他社・他部署の事例の見学:自社や自分が抱える課題に対して、どのような解決策が得られたのか報告
・親や師匠とかの視線を心の中に持つ
・改善はお客様に近いところから手を着ける
・ムラがあるから、ムリをして、ムダが出る
-目次-
第1章 平伏させず心服させる ―人づくりは信頼改善である
第2章 人と環境を同時に育てる ―人づくりはシステム改善である
第3章 小さなミスに大きく学ばせる ―人づくりは問題改善である
第4章 ケタの違う発想を引き出す ―人づくりは発想改善である
第5章 呼びつける前に現場に出向く ―人づくりは現場改善である
第6章 自分の部下を会社の財産に育てる ―人づくりは自分改善である
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