読書メモ
・「金融大崩壊 ―「アメリカ金融帝国」の終焉」
(水野 和夫 :著、生活人新書 \700) : 2009.10.24
内容と感想:
リーマンショック直後の2008年12月に出た、サブプライム危機がテーマの本。
アメリカが「強いドル」政策で1995年から築いてきた「マネー集中一括管理システム」が「アメリカ金融帝国」を確立した。今、それが終わろうとしている。
このシステムは「完全にバブルを前提としたモデルの上で進んでいたから」限界があると著者は考えていた。
「アメリカだけが低い調達コストで外国で高い投資リターンを得るという構図は、そういつまでも続かない」からだ。
今回の危機の日本への影響として、第6章では「アメリカ投資銀行株式会社と日本輸出株式会社は表裏一体」、「連結会社」と述べている。
それほど両国の関係が強いことを示している。
故に「アメリカの危機はすなわち日本の危機」となる。
第2章で今回の危機は、「資本主義が抱えている構造自体が大きな問題を孕んでいるのではないか」とも指摘している。
同章では今回の危機では「資本が国家と国民を裏切った」、「資本と国家と国民の三位一体の関係」が断ち切られた、
「いままでの資本主義の終わりを象徴する出来事だった」とも言っている。
更には「中産階級の「夢」の消滅であり、「中産階級」の消滅でもある」と言い、余計に先行き不安が募る。
第4章では「実体経済の不況は最低でも5年間は続く」というように、衝撃が大きかっただけに景気回復にはかなり時間がかかりそうである。
著者は円高政策論者のようだ。原油・食糧などの国際商品市場はドル建てだからだ。
○印象的な言葉
・リーマンショックはサブプライム問題の第二段階。実体経済への影響が本格化するのが第3段階。
・証券会社は手数料自由化によりブローカー業務収入が減り、手数料が高いM&Aや投資にシフト
・世界に君臨していたアメリカ投資銀行株式会社、アメリカ金融帝国
・世界の金融資産(株式時価総額、債権発行残高、預金)が、世界の実物経済(名目GDP)を圧倒している
・CDOを作った人たちは、早く売って、早く逃げることを考えていた
・サブプライム問題の本当の恐ろしさはCDSに潜む
・国中、世界中が同じ一つの仕組みに乗ってしまえば、それはヘッジにならない
・1968年の世界革命。全世界的な学生運動。資本主義の否定。共産主義諸国でも反乱が起きた。
「近代主義=モダニズム」が終わろうとしていた。
・新自由主義:努力すれば報われる
・資本主義は外へ外へと市場を拡大しないと成長できないモデル
・強いドル政策によりアメリカは1994年以前と比べて100倍もの資本を手にした。欧米の投資家はわずか十数年で100兆ドルもの金融資産を増やした。
アメリカは無から有の資本を手にした。
・日本の成長モデル:消費を我慢して将来のために節約し、貿易黒字を蓄積。輸出立国。
・ルービンは日本やアジアで貯蓄が有効に利用されていないと理解し、それをアメリカのために利用しようとした
・住宅価格の動きは消費動向を先導
・アメリカの住宅価格がピークから4割下落すると、その損失(不良債権)は2兆ドルを越え、アメリカの全銀行の株主資本を大幅に上回る。
全銀行を国有化しなくてはならなくなる。
・本来、金融経済は実物経済に従属するもの。それが逆転した。
・軍事力では何も解決しない。武力の役割は後退した
・技術、ノウハウを組み替えるイノベーション(知識組み替え)が必要
・バブルの時は将来の需要までも先取りしてしまう
・日本は海外とどうつながっていくかが鍵。新興国をどう手伝えるか
・中小企業の海外進出を人材面でも支援。海外事業のノウハウの伝授
-目次-
第1章 アメリカ発世界金融危機
第2章 危機の震源、サブプライムローン問題とは何か
第3章 「アメリカ金融帝国」はなぜ生まれたのか
第4章 世界は不況からいつ脱出できるのか
第5章 「アメリカ金融帝国」終焉後の世界
第6章 日本経済の生き残る道はどこか
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