ポルシェ356について
敗戦とともに、Dr.ポルシェは連合軍に、身柄を拘束されました。
フランスの手中におちたDr.ポルシェはパリのルノー邸の小屋に幽閉され
ルノー4CV等のリア・アクスルに関して半ば意見を強要されたと言われています。
その後1947年8月までポルシェは監禁され開放された時には半ば病人の状態でした。
356のプロトタイプが作られたのは1947〜1948年なので
設計はフェリー・ポルシェとカールラーべでフェルデナントは
ディテールについて示唆したと言われています。
その後1951年1月30日にフェルデェナントは長い生涯の幕を閉じることとなります。
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1939年VW「ベルリン〜ローマ速度記録車」
VWをベースとするスポーツカーの計画は356が作られる約10年前に既に存在しました。
それはVWシャーシに単座の空力ボディを載せた1131cc 40HPのレコードカーでした。
テスト時には140km/hを記録しましたが実際のレコードランは戦雲の為実現しませんでした。

Type356
1948年夏
グミュントの研究所にてプロトタイプNo.1が完成しました。
この2座のロードスターは角断面剛性の非常に高い
特別設計のシャーシでしたがサス、ブレーキ、エンジン、トランスミッション等
その殆どをVWから流用していました。エンジンについては
圧縮比を7に高めることにより(1131cc 40HP)を発生。
また注目すべき点はプロトタイプNo.1のみエンジンをミドに搭載するレイアウトとなっている所です。

プロトタイプNo.1

プロトタイプNo.2 1948年秋
1948〜1949年の間に続いて製作されたNo.2はクーペで
すべてがハンドメイドのアルミ製ボディを纏っていました。
生産された50台のうち
6台はスイスのボイトラー社によってカブリオレ化されることとなります。
(グミュント製はフロントウィンドウにセンタピラーがあり
また三角窓があるので後のシュットガルト製と区別可能です。)

プロトタイプNo.2クーペ

プロトタイプNo.2カブリオレ
同年9月VWとポルシェとの間に下記の重要な契約が取り交わされました。
○ポルシェは今後VWと競合する車種を他メーカの為に設計することができない。
○VWはポルシェの所有するパテントを自由に使うことができる。
○生産されたVW1台につき一定額のロイヤリティをポルシェに支払う。
○ポルシェはVWのパーツを自由に利用してスポーツカーを製作できる。
○ポルシェはVWのサービス網を利用できる。 等です。
1950年(生産台数410台)
この年の春
シュットガルトの郊外にあるロイター社の工場の片隅をかりて
356の本格的生産が始まりました。
車種はクーペとカブリオレでボディはアルミから鋼板となり
車重はややUPの745kg
排気量は1100ccレーシングクラスを意識して
初めから1086ccとされ出力は40HP/4200rpm
トルク7.15mkg/2800rpmを発生しました。(topspeed−140km)
クランクケース、ギヤボックス、フロントアクスル、ブレーキ等はVWのものを
流用しています。

1951年(生産台数1103台 同年1月フェルデナント永眠-合掌)

ラインアップに1300ccと1500ccが加わり。
このエンジンはそれぞれ

1300(1954年1月まで生産)
(1286cc 圧縮比6.5 44HP/4200rpm 8.25mkg/2800rpm topspeed−145km)
1500(1952年9月まで生産 ビッグエンドにはローラベアリングを使用)
(1488cc 圧縮比7.0 60HP/5000rpm 10.4mkg/2800rpm topspeed−155km)
更にシリンダーには今までの鋳鉄から軽合金を使用、またボアには
クロームメッキを施しています。

この年には初めて1100クーペがルマンに参戦
クラス優勝および総合20位という好成績でデビュー戦を飾りました。

1952年

この年新たな1500が2機種追加されました。
1500Sと1500です。1500Sは高性能タイプで
1500はDamenと呼ばれた標準モデルです。

1500S(1954年11月まで生産 組み立て式クランクとローラベアリングを使用)
(1488cc 圧縮比8.2で 70HP/5000rpm topspeed−165km)
1500(1954年11月まで生産 プレーンベアリングを使用)
(1488cc 圧縮比7.0 55HP/4400rpm topspeed−155km)
ギアボックスにはこの年からポルシェ特許のセルフサーボシンクロが
全車種に標準装備となりました。

この年には20台ではありますがアメリカ西海岸に向けて
後のスピードスターの原型ともなる「アメリカ・ロードスター」と呼ばれるオープン型が生産されました。

1953年
1300の高性能版として1300Sが追加されました。
このエンジンは1300ccクラスではかなりの高スペックとなっています。
(1290cc 圧縮比8.2で 60HP/5500rpm 9.0mkg/2800rpm topspeed−160km)
1954年
この年から新たにスピードスターがラインナップに加わりました。
エンジンは1500と1500Sのみを選ぶことができギア比もクーペやカブリオレに比べ
3、4速が低い為トップスピードは劣るものの加速はスピードスターの方が上でした。
(0-400m17.4秒 最高速度170km/h)
この年の11月には1300Sのエンジンをデチェーンした新しい1300のエンジンが追加されました。
(1290cc,圧縮比6.5,44HP/4200とスペックは控えめ)
またこの1300以降VWと共通のクランクケースをやめ3分割のクランクケースを使うこととなります。



356Aシリーズに続く....


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