身近な自然にひそむ危険 〜実例編〜

何で私だけが……キノコ図鑑を過信しないで!

 実は私,意外なキノコで中毒に襲われたことがあります。
 そのお話を……


 10年ほど前,松がぽつぽつ生えている緑地で,イグチ科のキノコを収穫しました。イグチと言えば,優秀な食菌です。さっそく何本か持ち帰り,図鑑で同定。ハナイグチのようです。当時,イグチの仲間には毒菌が無いと言うのが定説で,安心して調理しました。

 ところが,夕食にこいつを食べて眠りについてから1時間ほどしたら,激しい腹痛で目がさめました。
 それから翌朝まで,2,3回の下痢。
 他の家族はまったく平気で,スヤスヤ寝ています。

 翌朝,げっそりとした顔と,さわやかな顔が御対面。
 夜中の状況を話すと,「イグチのかさの裏の網目の部分を取り除かないで食べると,うんちがゆるくなることがある」と言う図鑑の解説を見て,多分これが原因だろう,と言うことで決着しました。


 ところが,また別の機会に,イグチを入手するチャンスが…。
 今度はきちんと,かさの裏を処理し,あまり多量でなかったので,澄まし汁の実として使いました。
 ……ところが,やっぱり,夜半過ぎにトイレに入り浸り状態。
 そして,やっぱり,ほかの家族は誰も何とも無い。
 同じ条件で食べたはずなのに,どうして??

 結論として,体質的な個人差ではないだろうか,と考えられます。
 別に無理してイグチを食べるほど,キノコにこだわりを持っているわけでもありませんから,それ以降,イグチ類を食べるときは,家族が美味しそうに食べるのを,1人だけじっと我慢して見ています。


 後日談ですが,その後,イグチ科にも毒菌が存在することが認められ,いまはこれが定説になっています。イグチの仲間も,きちんと同定する必要があるわけですね。図鑑も学説も日進月歩。図鑑もときどきは買い換えましょうね。

アカジコウ。イグチ科のきのこは,かさの裏の胞子を出す部分が,網目状になっているので,
初心者でも「イグチ科」であることはすぐにわかるのだが…。

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