ARISSat-1 地表高度変化・大気圏再突入


● (No.722) ARISSat-1 地表高度変化・大気圏再突入 (2011年11月6日)
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ARISSat-1 は、紆余曲折の末、2011年8月4日JST早朝に ISS から放出されたのは
ご存知のとおりです。 その後、430帯アンテナが展開されていないことが判明す
るなどトラブルがありましたが、何とか VOICE/SSTV/BPSK1000/CW は運用を続け
ています。ここへきて、ARISSat-1 の軌道高度が下がってきているという話しが
ありましたので、放出翌日の 8月5日から最近の11月4日までの衛星の地表高度の
変化を、一週間ごとにその時の軌道要素を使って計算してみました。計算結果を
0.1km単位まで正確に求めてみると、下図によると 放出直後は 400km近くあった
高度が、現在は 350kmまで下がっています。大気圏再突入の目安が 100kmとする
と、衛星はまだまだ健在であることがわかります。ここで一般に衛星の地表高度
の計算方法の流れを、次に簡単に示しておきます。

(1) satrange.zip、または satrangj.zip をダウンロード&インストール。
    http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/satrange.zip (英語版)
    http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/satrangj.zip (日本語版)

(2) 過去の衛星の軌道要素を、期間を指定して NORADO にリクエスト。
    (ARISSat-1 の Catalog Number は、37772)
    http://www.celestrak.com/NORAD/archives/request.asp

    数時間後に、次のようなファイルがメール(zip形式)で送られてくる。

    =====================================================================
      37772 1998-067CK  RADIOSCAF-B (KEDR)                               
      Launched: 1998-11-20 (324)           Start Date: 2011-08-04 (216)  
       Decayed:                             Stop Date: 2011-10-31 (304)  
    =====================================================================
    1 37772U 98067CK  11216.75158638  .00033717  00000-0  40433-3 0    12
    2 37772  51.6382 276.2984 0012892  43.5724 316.6246 15.60501122    76
    1 37772U 98067CK  11217.21207942  .00016502  00000-0  20151-3 0    26
    2 37772  51.6391 273.9819 0013128  45.8900  22.9677 15.60501782   146
    1 37772U 98067CK  11217.41309442  .00015548  00000-0  19021-3 0    30
    2 37772  51.6392 272.9690 0013085  46.7791  72.0942 15.60506459   173
    1 37772U 98067CK  11217.72992057  .00017961  00000-0  21855-3 0    44
    2 37772  51.6393 271.3741 0013139  48.1304  51.8180 15.60521963   222
    1 37772U 98067CK  11218.16773367  .00019609  00000-0  23780-3 0    55
    2 37772  51.6393 269.1699 0013099  49.9392 351.2537 15.60542636   290
        :

(3) Eccentricity(離心率), Mean Motion(平均運動)の値を、satrange.xls の
    所定のセルに入力する。MA は、0〜256 で地球一周するが、ARISSat-1 は
    低軌道衛星でほぼ円運動なので、下図では 128 を固定値として入力した。
    (下図では説明のため便宜上、いくつかの行・列セルを非表示にしてある。)

(4) 下図 Distance が、求める地表高度である。




衛星の地表高度の計算アルゴリズム
http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr271.htm
http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr272.htm
http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr273.htm


上記、「ARISSat-1 地表高度変化 (2011年8月5日〜11月4日」を 0.1km 単位まで
厳密に Excel計算しました。その結果から、「放出直後は 400km近くあった高度
が現在は 350kmまで下がっている。大気圏再突入の目安が 100kmとすると、衛星
はまだまだ健在であることがわかる」と述べました。では、地表高度が 100kmに
なるのはいつ頃であろうか? ということを、さらに計算してみました。すると、
ARISSat-1 の大気圏再突入は、5ヶ月ほど先の 2012年4月9日頃という予測結果が
出ました。空気抵抗などの影響で、地球落下がもう少し早まるかもしれませんが
大体この時期が大気圏再突入の目安になると思います。[↓前方補外(21)週間先]

Excel−グラフ−近似曲線の追加−種類−多項式近似の追加
                 −オプション−予測−前方補外(21)区間



ARISSat-1 Re-entry Prediction
ARISSat-1 大気圏再突入予測

昨日のこの記事に対して関係各所から連絡がありました。ARISSat-1 の打ち上げ
前に、AMSAT-NA から「Predictions of the Orbital Lifetime of ARISSat-1」,
(Amsat journal, March/April 2011) と題する論文が発行されているというもの
のです。これを読むと、地表高度 370kmに衛星が投入されると仮定して、衛星の
寿命は 67日から 152日と予測されています。実際は衛星の初期高度は約395kmで
したから、上記の計算のとおり、もう少し寿命はあると思います。


ARISSat-1 Orbit Decay Prediction


この論文の著者から詳細な補足がありました。要は、ARISSat-1 の大気圏再突入
は、大気密度の影響からもっと早まるというものです。その日を 2012年1月30日
前後としています。

Subject: ARISSat-1 (37772) decay
From: DeYoung James
To: amsat-bb
Date: Tue, 15 Nov 2011 09:29:31 -0800 (PST)

Greetings,
 
First, thank you Mineo for reading the AMSAT Journal and making several of
my papers available on your web site. My AMSAT Journal paper published in
the March/April 2011 issue is actually still fairly valid for the scenarios
shown in the paper. The solar flux has turned out to be somewhat higher than
was used/predicted in the paper. This has caused the atmospheric densities
to be higher which results in higher decay rates. When I wrote the paper I
had this nagging feeling that stopping the release height scenarios at 370
-km was not going to be high enough. We are very fortunate that the ISS was
boosted to such a height before release of ARISSat-1 and not after release!

There is a valuable lesson, I think, to be made with respect to predicting
satellite decay dates far into the future. The future state of the atmosphere,
i.e. the atmospheric density that the satellite will pass through is poorly
predictable in the long-term, say starting greater than a week or two into
the future. Predictions of satellite decay dates months in the future should
be evaluated with the understanding that your date of prediction errors may
be large. The errors are due to the future uncertainties of the orbital path
which grow quickly with time in a prediction. The atmospheric density is not
the only source of error. Your orbit model, the integrator, and the accounting
of the gravitational and drag forces among others will affect your results.

Predictions of satellite decay dates are not do-and-forget. The general
process is to make a prediction, get new measured observations of the height
in the future, and at some point re-do your prediction when the errors become
significant to you. With that all said here is my current prediction using
the same tools used in the AMSAT J. paper and produced as of 2011 November
13th. The decay of ARISSat-1 (37772) will happen nominally on 2012 January
30th with a 10% rule-of-thumb error allowance of 18 days around this date.
The errors may be larger than the rule-of-thumb indicates!

Jim, N8OQ

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Subject: Re: ARISSat-1 (37772) decay
From: Mineo Wakita
To: amsat-bb
Date: Wed, 16 Nov 2011 20:36:44 +0900

Hello Jim, N8OQ.
Thanks for your very valuable reply.

Because it has the effect of the atmosphere density, I think that
the re-entry into the earth's atmosphere of ARISSat-1 will be
really earlier than April 9, 2012.

I added your this reply below the following my URL,

http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/arissat5.htm

Thank you.
JE9PEL, Mineo Wakita

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ARISSat-1 大気圏再々突入予測



ARISSat-1 count down

31 Dec 2011, 19:16JST, 238km  の衛星高度が、新年 1st Jan 2012, 00:15JST
には 225km と、5時間の間に 13km も急激に下がってきました。 ARISSat-1 の
大気圏再突入のカウントダウンがすでに始まっています。

ARISSat-1 New Year SSTV/VOICE, 2012
10:01-10:07JST, 1st Jan 2012, Ele 22 WS-E-EN, 145.950MHz FM



http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/20101ari.mp3


ARISSat-1 Re-entry!

08:50-08:56JST, 4 Jan 2012, Ele 22 S-SE-E, 145.950MHz FM over Japan
http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/20104ar1.mp3

10:22-10:27JST, 4 Jan 2012, Ele 7 W-WN-N, 145.950MHz FM over Japan
http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/20104ar2.mp3

16:30-16:36JST, 4 Jan 2012, Ele 53 WN-E-ES, 145.950MHz FM over Japan
ついに、このパスでは無音でした。 2012年1月4日午後15時(JST)過ぎに大気圏に
再突入し、機能停止した模様です。





ARISSat-1 最終公式報告 [AMSAT-NA]


                                                                (C)AMSAT-NA


ARISSat-1 総括 [AMSAT-UK]
http://www.uk.amsat.org/2012/01/04/arissat-1-sk/



ARISSat-1を振り返って by JE1CVL

「その1」 総じて言えばマイナス面が目立ちましたが、良かったところから…
@ モードが多彩であった点。15か国語による Voice アナウンスがありました。
音声が聞ける衛星は少ないので、楽しめました。 A SSTV の画像が鮮明に撮れ
た。4台のカメラは良く機能したと思われます。ギャラリーへは JAからも多くの
局が受信画像を投稿しました。 B Telemetryを確実に降ろした点。1000bps の
BPSK という、P3E で使われるであろうタイプの Telemetry を、KURSK と合わせ
て 2種類降ろした。400bps は降りなかったが P3E では 400bpsとの情報もある)
C リニアートランスポンダーを積んでいたこと。交信数は少なかったようだが、
音声中継器は衛星にはあってしかるべきもの。 D Telemetryデータの集約方法
が確立されたこと。 ◆ 教訓を残したこと「マイナス面」 @ バッテリーが早々
とだめになってしまった。 A 70cm のアンテナエレメントが折れてしまった。
B 日照から 14分経たないと機器が ON にならない設定であった。◆マイナス面
は3つ? となるとバッテリーがだめにならず、70cm のアンテナが折れなかった
としたら完璧だったということになります。 差し引き 65点くらいでしょうか。
ポイントの幾つかについて感想を加え、振り返ります。

「その2」 @ 内蔵バッテリーがなぜすぐだめになってしまったかは、謎です。
何か最初から予想されていたような気がしてなりません。AO-7,DO-64,ARISSat-1
と 内蔵バッテリー無しでも運用可能なことの証明にはなりましたが… A 70cm
(UHF帯アップ用) のアンテナがなぜ折れたか。原因は公表されていません。宇宙
空間へ持ち出した後に気が付いたのであり、そのまま放出すべきかどうか、苦肉
の判断を迫られたはずです。放出作業は後回しになり、その間に地上から試しに
70cmの信号を送ってみたかも知れません。本体からわずかに出ている部分で信号
を拾い通信可能との判断がなされ、最終的に放出された? 細かい詮索をしても
始まりませんが、折れたエレメントはどこにあるのでしょう。ISS の船内、それ
とも宇宙空間へこぼれてデブリになった? B 2m のアンテナの方が当然エレメ
ントが長いのですが、こちらは正常。しかし、運搬時に被せてあったオレンジの
保護フィルムがはずされないまま放出されたように思うのは、考え過ぎでしょう
か。アンテナの先端が SSTV カメラに写しこまれるように設定してあったので、
目印にわざと付けたものなのか、宇宙空間での劣化等を確認する試料フィルムな
のかは分かりません。以上、分からないことがかなり多く推理を楽しませてくれ
ました。◆「ARISSat-2」も打ちあがるはずですが、現在その情報はありません。
半年に満たない寿命の衛星に多くの費用をかける訳であり、そうたやすく開発が
進むとは思えません。全世界でも 250人くらいしか関心を持っていないとなると
全くマイナーではありますが、早い時期の開発を願ってやみません。


ARISSat-1 voice messages

ARISSat-1 から発信されていた世界各国の子供達によるメッセージの全ての音声
ファイルとその訳文が、DK3WN局の SatBlog にアップされました。そのトップに
日本のメッセージが紹介されています。これらを収集するのは大変だったであろ
うと推察できます。これは労作です。一度、全部を聞いてみてください。各国の
メッセージの最後に合言葉が載っていますが、これはすでに時効だと思います。
http://www.dk3wn.info/p/?p=25476
http://www.dk3wn.info/sounds/arissat_japan.wav

International Greetings
ARISSat-1 japanese



Sekai no minasan kon_nichi wa. Boku-tachi, watasi-tachi wa Iruma-si jidou sentaa
de musen ya tenmon no katsudou wo site imasu. Itsuno hi ka boku-tachi kodomo demo
kokusai-utyuu-suteisyon ni ikeru hi wo, tanosimi ni siteimasu. Ai-kotoba wa 'Kibou'.

Hello, all of you of the world. We are doing activity of radio and astronomy in
"Children center" in Iruma-City. The day when even we child can go to International
Space Station looks forward to coming sometime or other. The secret word is HOPE.

[thanks Mineo san, JE9PEL]


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