● (No.704) 太陽同期軌道 (DO-64) (2011年 4月16日) -------------------------------------------- 『太陽同期軌道と地球の影』(2010年10月25日起稿) http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/numbr682.htm 本日2011年4月14日現在の最新軌道要素を使い、衛星 DO-64(Delfi-C3) が実際に 太陽同期軌道に投入されていることを、自作Excelソフトと ひたすら電卓計算を 行うことにより確かめることができた。 『宇宙システム入門 ロケット・人工衛星の運動』 冨田信之著 東京大学出版会 この書籍の第1章から第11章までかかって、P.180 (11.3)式が導かれる。この式 の本質は、ここまでの解説にあるように昇交点赤経の永年摂動(長年摂動)にある。 つまり、人工衛星が軌道上を一周する間に移動する昇交点赤経の変化量を応用し、 衛星の軌道面を太陽に対して一定の方向に向くようにするのである。それを表す 関係式が (11.3)式である。 e は軌道の離心率で、a は地球の中心から衛星まで の地心距離として近似する。i は軌道傾斜角である。(11.3)式を見て簡単にわか るように、衛星が太陽同期軌道となるためには、cos(i) は負の符号、つまり i は 90度より大きくなければならない。例として、衛星 DO-64 の最新軌道要素を 使って実際に DO-64 が太陽同期軌道を描いていることをこれから確かめてみる。 地心距離を知るには地球の半径を 6378.14 km として、地表から衛星までの地表 高度を知る必要がある。そこで、自作Excelソフト『satrange.xls(英語版)』or 『satrangj.xls(日本語版)』を用いる。(解説、My_HP No.271, No.272, No.273) 衛星地表高度を算出するには、この Excelソフトの A列, D列, R列に、それぞれ MA値, 離心率(Eccentricity), 平均運動値(Mean motion) を軌道要素から読み取 り、手入力する必要がある。MA値とは左回りに軌道の近地点を 0(ゼロ)、遠地点 を 128、そして一周して近地点に戻って 256 とする。 離心率、平均運動の値を 軌道要素から簡単に読み取るには、おなじみの『Calsat32』が便利である。この ソフト上段の衛星名をダブルクリックすると、各々の値がポップアップする。 (e=0.0015912, Mm=14.82849809) 自作Excelソフトの MA値(A列)に適宜 値を入力し、離心率、平均運動の値をそれ ぞれ D列, R列に入力し衛星 DO-64 の地表高度の平均値を計算すると、約 619km つまり、地心高度は a=6378+619=6997km となる。これらの値を、(11.3)式に 代入して細かく電卓計算したのが先の図である。cos(i)=−0.1371477 と求まる。 ここから軌道傾斜角 i を求めるために、PC の関数電卓を用いた。Windows XP→ スタート→プログラム→アクセサリ→電卓。arccos (cos^(-1)) の角度を求める には 電卓→表示→関数電卓 とし、左上の Invボタンにチェックを入れればよい。 i=97.8828 と算出される。軌道要素による軌道傾斜角 (Calsat32 によるポップ アップ値) は 97.8613 なので、衛星 DO-64 は、ほぼ正確に太陽同期軌道に投入 されていることが証明された。 一般に、太陽同期軌道は地球上の観測をする時に常に同じ方向から観測すること ができ、地球撮像のデータをとる時には太陽光の当たる角度を常に一定にできる ことから、気象観測衛星,地球観測衛星,海洋観測衛星などの科学観測衛星によく 使われている。
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