中学生のための 「人工衛星」 の解説


● (No.365) 中学生のための「人工衛星」の解説 (2003年 2月9日)
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人工衛星の目的は?

 まず、「人工衛星」と一言で呼ばれますが、この人工衛星に
 は次のような、いろいろな目的のものがあります。

1.「技術開発・試験衛星」
  衛星の工学的試験や姿勢制御技術の開発、打上げロケット
  の特性測定、通信技術実験などを目的とした衛星。

2.「通信・放送衛星」
  国内静止通信衛星、国内放送衛星、衛星間通信実験衛星、
  データ中継技術衛星、アマチュア無線衛星など。

3.「地球観測衛星」
  静止気象衛星、海洋状況の各種観測のための衛星、地球資
  源の探査・環境監視のための衛星、運輸多目的衛星、鯨の
  生態観測衛星、熱帯地方の降雨観測衛星など。

4.「宇宙実験・観測衛星」
  宇宙実験、理工学実験、天文観測衛星。

5.「科学衛星」
 (1)地球周辺観測衛星
  電離層、宇宙線、電磁波、プラズマ波の観測。
  オーロラの発光現象、地球の磁気圏の観測など。
 (2)天文観測衛星
  太陽軟X線・粒子線・バーストの観測、X線星・X線銀河
  星雲の観測、銀河形成・進化を探査するための衛星など。


人工衛星は、なぜ地球の周りを回る?

 ボールを水平に投げると地面に落ちますね。投げるスピード
 を速くすると、遠くまで飛んで地面に落ちます。もっと速く
 投げるともっともっと遠くへ飛び、そのボールの軌跡は地球
 のカーブに近づいていきます。

 秒速約7.9km(時速約2万8000km) でボールを水平に投げると、
 ボールの軌跡は地球の地面のカーブと同じになり、ついには
 地球を一周してしまいます。これが「人工衛星」です。


人工衛星の「周期」とは?

 人工衛星の速度は、地球表面からの高度が高ければ高いほど
 重力が弱くなり、地球からの影響もなくなるので、遅い速度
 となります。そして、衛星が地球を一周する時間を「周期」
 と言います。地表からの高度 300kmの円軌道の場合、周期は
 約1時間30分です。


人工衛星の「軌道」とは?

 人工衛星が地球の周りを飛行している時、地表に最も近づく
 地点を「近地点」、最も遠ざかる地点を「遠地点」と言いま
 す。この二つの差がないのが「円軌道」、差が大きいほど平
 たくつぶれた形の「楕円軌道」です。楕円については、高校
 の数学の時間に習います。

 人工衛星の正確な軌道を決めるのは、「ケプラーの軌道要素」
 と呼ばれる6個の要素によります。これは、大学の理工系で
 習います。


役目を終えた人工衛星はどうなる?

 通常の、地球の周りを回る人工衛星は、近地点付近における
 大気の影響から、長い年数(数年から十数年)がたつと近地点
 がだんだんと地球に近づいていき、いずれは地球の重力に捕
 らえられて、大気との激しい摩擦熱により衛星は破壊され、
 完全に消滅してしまいます。ほとんどの人工衛星はこのパタ
 ーンです。時にはその残骸の破片が地球上に落ちてくる場合
 もあります。

 衛星を秒速約11.2km で打ち上げると、地球の重力を脱して、
 太陽の周りを回る軌道に入ります。さらに速度を上げて秒速
 約16.7km で 地球の公転方向へ打ち上げると、太陽の重力を
 も振り切って太陽系の外の恒星間空間へと飛んでいきます。
 この場合、いずれは永遠と宇宙の藻屑(もくず)となります。

 また、衛星が飛行中に、隕石や流星に当たって破壊されると
 いうことも、確率的にはほとんどありえませんが、もしかす
 るとあるかもしれません。

 なお、回収型実験衛星の場合は、他の衛星やロケットにより
 回収され、地上に持ち帰って実験データの分析や、次期衛星
 のための資料にされる場合もあります。



《参考URL》

宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
 http://www.jaxa.jp/guide/student_j.html

はまぎんこども宇宙科学館 (旧 横浜こども科学館)
(財)横浜市青少年育成協会
 http://www.yokohama-kagakukan.jp/

日本アマチュア衛星通信協会 (JAMSAT)
 http://www.jamsat.or.jp/


《参考書籍》

スペースガイド 2000, SPACE GUIDE
 (財)日本宇宙少年団 編者
 的川康宣・毛利 衛  監修
 宇宙開発事業団   編集協力
 丸善株式会社    発行所


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