ISS, UNPROTO パケットの運用法


● (No.312) ISS, UNPROTO パケットの運用法 (2002年 3月2日)
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日付:2002年 2月27日
表題:ISS, UNPROTO パケットの運用法
副題:Alpha を経由したアマチュア無線 "ラウンドテーブル" の運用法
著者:マイルズ・マン  , G. Miles Mann, WF1F MAREX
寄稿:フランク・バウア, Frank Bauer Chairman ARISS
   ボブ・ブルニンガ, Bob Bruninga WB4APR
翻訳:脇田美根夫, JE9PEL/1, JAMSAT


Date: Wed, 27 Feb 2002 18:32:06 -0500
From: Miles [wf1f@mediaone.net]
Cc: sarex@amsat.org
Subject: [jamsat-sarex:8303] How to use ISS UNPROTO packet

February 27, 2002

How to use the Amateur Radio "Round Table" via the International
Space Station Alpha

By G. Miles Mann, WF1F MAREX
With contributions from:
Frank Bauer Chairman ARISS
Bob Bruninga WB4APR 


短い説明:
[国際宇宙ステーション ISS のパーソナルメッセージシステム(PMS) と、ボイス
 の解説については、後ほど 広報する予定。]
ISS において、新しいアマチュア無線プロジェクトが、現在 運用されている。

ISS の 新しいアマチュア無線実験の名称は、"パケット無線システム" すなわち
"Packet Radio System" (PRS) である。ISS PRS 実験は、初心者に対する ISSの
易しい教育的なアマチュア無線実験として考えられている。もし今、固定2メー
タのパケット局であるなら、すでに世界中の新しい友人に出会うための、そして
ISS 上の宇宙飛行士や飛行家と親交を結ぶために必要な設備の全てを持っている
と言えよう。

ISS のパケット無線システムは、パーソナルメッセージシステム(PMS),ラウンド
テーブル(Round Table), APRS という三つの異なるモードを持っている。この記
事では、ISS 上のパケット無線システム "ラウンドテーブル" モードを運用する
際に必要な概念について述べる。 他にサポートしている PMS と APRS のモード
については別に述べ、さらに APRS情報に関する URLリンクを張っておく。
(訳注:Round Table, 直訳すると "円卓" だが、"ディジピート交信" の意味)

ラウンドテーブル(Round Table, ディジピートのこと):
 この "ラウンドテーブル" モードとは、キーボード対キーボードの通信の形式
のことである。ラウンドテーブルは、短いメッセージをタイプすると、PRS を経
由して中継(つまり、デジタル中継 あるいは短い言葉で デジ)され、1000マイル
(訳注:衛星との距離 約1600km) を超える距離を転送する。ラウンドテーブルの
モードは、ISS の範囲にいる間は、円卓を囲むように多くの局が参加している。
ラウンドテーブルモードの PRSアマチュア無線のコールサインは、ARISS または
RS0ISS である。


パーソナルメッセージシステム(PMS):
 パーソナルメッセージシステム(つまり、PMS あるいは メールボックス) は、
ISS の PRSシステムに 直接、個人の短いメッセージを載せることである。 一度
メッセージが保存されれば、ISS の乗員は読むことができるし、そのメッセージ
に返信することもできる。ARISS チームは、その限りある資源を、我々がどのよ
うに使用するかというルール作りをしている。現在は、PMS の全てのメッセージ
を読み返信するには、ISS 乗員は忙し過ぎる。ARISS チームは、パーソナルメッ
セージシステムにおける操作処理を開発している段階にある。PMSモードは 現在
ARISSシステム運用者と、選抜された ARISS のサポートエンジニアによって試験
を続けている。 広報は、性能が評価されるまでは、PMSモードの使用を控えるよ
うに、と言っている。パーソナルメッセージシステムのモードにおける PMSアマ
チュア無線コールサインは、RS0ISS-1 である。


自動位置認識伝送システム(APRS):
 APRS モードは、地上の APRS ソフトウェアが 位置情報・地図対象物・使用者
との短いメッセージを転送するための特殊なフォーマットに、メッセージ行をあ
らかじめフォーマットしている点を除いて、ラウンドテーブルのモードと違いは
ない。APRS に関するより詳しい情報は、次の URL を参照してほしい。
http://www.ew.usna.edu/~bruninga/iss-faq.html


ISS ハードウェア:
 ISS は現在、アマチュア無線2メータ帯の (HTとして知られている) Ericsson
固定無線機を使用している。パケット無線システム(PMS) は、(TNC あるいは パ
ケット無線システムと呼ばれる)  Paccom Picopacket 1200 baud Terminal Node
Controller を使用している。無線機は現在、外部マウント (2メータ帯)同位相
モノバンドアンテナに繋がっている。標準的な出力は (ERP 5ワットの)5ワット
である。

貴局から ISS にアクセスするには、少なくとも 次のアマチュア無線装置が必要
である。 25ワットから 50ワット以上の出力を持つ2メータ帯無線機。オムニ指
向性アンテナあるいはスモールビームアンテナ。良質同軸ケーブル [例 RG-213,
100フィート(約30メートル)以下]。 標準的な 1200 baud AX.25 パケットモデム
(TNC)。私(著者)は、ISS パケットの全てのコネクトに、安価な KPC-3 モデムを
使っている。

ISS は、運用モードと ISS のいる場所によって、異なる周波数を使う。 貴局に
対するモードと周波数選択については、次の表を参照してほしい。次の周波数は
ARISS の一般の QSO の音声とパケットに対して使われる。

音声とパケットダウンリンク:145.80 (世界中)
音声アップリンク:144.49 (地域 2, 3 : 米国と太平洋)
音声アップリンク:145.20 (地域 1 : ヨーロッパ、中央アジア、アフリカ)
パケットアップリンク:145.99 (世界中)


TNC 概要:
 貴局の TNC の取説書には、"ラウンドテーブル" の特性は、"Unproto" と呼ば
れている。ISS PRS を運用するためには、貴局の TNC の設定に いくつか修正を
する必要がある。 "ラウンドテーブル" と "パーソナルメッセージシステム" に
対して必要なパラメータの変更点は同じである。APRS に対する TNC パラメータ
の変更点は少し異なるので、後で述べる。ISS PRS に対して必要なパラメータの
変更点のほとんどは、地上BBS の運用と互換性がある。これらの示唆的なパラメ
ータを使用して成功率が増大し、同時に 混信(QRM)を減らすことになるだろう。
脚注. APRS の特別な情報に関しては、下記の URLリンクを参照すること。 この
記述は、Unproto とパーソナルメッセージシステムの設定に関するものである。
ISS のパーソナルメッセージシステムや Unproto (ラウンドテーブル) を運用す
るために、APRS は必要ない。

AUTOCR	OFF
BEACON	OFF
LFADD	OFF
MAXFRAME 4
MCON	ON
MCOM  	ON
MONITOR ON
PACLEN  (Round Table and PMS = 72, APRS = 0)
RETRY   6-8
TIME STAMP  (Round Table and PMS = ON, APRS = OFF)
Unproto  CQ V RS0ISS 

これらは、ISS PRS のための ラウンドテーブル/Unproto と、パーソナルメッセ
ージシステムに関する示唆的な TNC の設定である。APRS に対する設定は、少し
異なるので、後で述べる。

BEACON: OFF
 貴局のビーコンは、無効にせよ。ISS パケットのアップリンク周波数上の無用
なビーコンは、混信の原因となるであろう。貴局がコントロールしている時に、
手動で送信のみ行うべきである。ISS のアップリンクチャンネルが ON の間は、
ビーコンは OFF にしておくこと。手動で ISS のラウンドテーブルを呼ぶこと。

LFADD:  OFF
 この値は、通常の ISS BBS の運用の障害になるものであろう。 LFADD は OFF
にしておくこと。

MCON: ON
 この値は通常、地上BBS のコネクトに対しては "OFF" にしておき、ISS PRSに
対しては "ON" にする。この値は、貴局がパーソナルメッセージシステムにコネ
クトした時や、パーソナルメッセージシステムにコネクトしようと試みている時
に、他局が行っているパケットが見えるだろう。ISS を使用している全ての礼儀
正しい運用者は、パーソナルメッセージシステムのモードを使用している時は、
この値を ON にしておくだろう。

MCOM:  ON
 全てのデータをモニターするためには、この値を ON にせよ。もし、一行のパ
ケットごとに詳細を知りたければ、この値を "ON" にすること。これは、宇宙の
パケットをモニターする時には、大変に役に立つ。しかし、APRS や 他の特別な
ソフトウェアを実行する時には、OFF にすべきだろう。

MONITOR: ON
 コネクトしていない時に、パケットのモニターをする。

PACLEN:  72 (一行当たりの文字数)
 短いデータパケットは、非難されるものではない。APRS ソフトウェア パッケ
ージのいくつかは、この値を変更する必要がある。貴局の特別な APRS アプリケ
ーションが正しい設定かどうかチェックすること。

RETRY: 6
 貴局の最初のコネクトまでの間、混信(QRM) の原因になるかもしれないので、
この値を大きく設定したくないだろう。 また、もし "RETRY" が小さ過ぎると、
4段階ある RF信号のフェードの1つで、タイムアウトになってしまうだろう。
脚注その2.  パスの10分の間に、ISS からの信号は 4個の RF 分極偏移がある。
この偏移は、貴局のアンテナに関係して、ISS 上のアンテナの可視位置によって
生ずる。 (訳注:この RETRY の説明中、 4 RF polarity shifts  の意味不明)

TIME STAMP:  ON
 タイムスタンプを ON にしておくことで、貴局が離れていてもディスクにその
データのログを取っておくことができ、パスの時刻と継続時間の軌跡を残してお
くことができる。 APRS ソフトウェアパッケージのいくつかは、この値を変更す
る必要がある。 貴局の特別な APRSアプリケーションが正しい設定かどうかチェ
ックすること。

Unproto:
 UnProto コマンドには二つの項目がある。最初の項目は TOCALL で、CQ, ALL,
APRS, QST など、他のほとんどのソフトウェアで認められている総称的なコール
サインのうちの一つを付ける。第二の項目は文字 V または VIA で、第三の項目
は、PATH である。ISS に対してはこれは ARISS であり、ISS に対するデジ中継
の通称である。もし貴局のパケットが、ISS によってうまくデジ中継するならば
そのダウンリンクのコピーは、 RS0ISS コールサインに置き換えられるだろう。
PATH の部分は多重記載を含むが、初めの PATH にのみ ISS に対し使われ、貴局
のグリッドスクェア または名前を二つの付加部分に挿入できる。

例えば 貴局の TNC で UNPROTO コマンドを構成する正しい例としては:
UNPROTO CQ VIA ARISS
        CQ VIA ARISS, FRANK, FM19SX
        CQ VIA RS0ISS, FRANK, FM19SX などである。


宇宙ステーション・コールサイン:
 国際宇宙ステーション Alpha 上の PRS のコールサイン/信号は、現在 RS0ISS
あるいは rs0iss である。 ("rs 0 iss" の真ん中の値は、整数の 0 である。)
貴局の TNC にコールサインを記載する時、Unproto コマンドに 正しいコールサ
インを記入することに留意すること。 (この時、r と R の違いは重要ではない)


AX-25 パケットフレームのきまり:
 貴局は、少しのパケットフレーム鑑定家に精通するようにできる。これは貴局
に何が見えるかの理解の助けになるであろう。この情報のいくつかは 貴局のTNC
の取説書に書いてある。

C- コネクト リクエスト
D- ディスコネクト リクエスト
DM- ディスコネクト モード
UA- 未番号 承認
UI- 未コネクト 情報フレーム
I(n)-情報フレーム (n=0-7).


ISS ラウンドテーブル手順:
 ISS PRS (パケット無線システム)はまた、UnProto / Round Table と呼ばれる
デジタル中継モードをサポートしている。UNPROTO / Round Table モードは、他
局からの認証 (acknowledgment, ACK PROTOCOL) の要求をしないで、(つまり 非
認証プロトコル) パケットメッセージを送信する方法である。この方法は、同時
に一つの "ラウンドテーブル" に、多数の局を持つ RTTY と同様である。貴局の
TNC における UnProto コマンドを、上記のように設定すること。 そして、コン
バースモード (cmd: プロンプトにおいて K を入力) に切り替えること。そうす
れば、貴局が入力するものは全て UnProtoモードで送信されるだろう。もし ISS
局が貴局の送信したものを聞けば、ISS PRS Digi は 1000マイル(約1600km)以上
の距離を経て、貴局の情報を転送するだろう。次に、マサチューセッツ と ペン
シルベニアの間の、ISS Digi ラウンドテーブルで使われている短い UnProto / 
Round Table を示す。 表れている局どうしで、ISS のパスが過ぎた後に、HF で
交信しようと約束している。


ISS 経由の典型的なラウンドテーブル交信:

N3CXP>CQ,RS0ISS*:Hi all, great sigs here! de Tom in Allentown, PA
WF1F>FN42,RS0ISS*:n3cxp are u on
N3CXP>CQ,RS0ISS*:HI miles
WF1F>FN42,RS0ISS*:i have the amp on hf 7.215
N3CXP>CQ,RS0ISS*:just copying the mail
N3CXP>CQ,RS0ISS*:ok cu after the pass
WF1F>FN42,RS0ISS*:ok tom
WF1F>FN42,RS0ISS*:monitoring 7.215 lsb

 UnProto モードは、貴局のメッセージ送信が成功する保証はない。しかし ISS
Digi がテキスト行を転送すると、それを他局が見ることは保証できる。 貴局が
送信したテキスト行は、"RS0ISS*/" のアスタリクス(*)の後に続くだろう。もし
アスタリクスが見えなければ、ISS は貴局のパケットを聞いていないということ
である。UnProto は欠点も持っているが、直接二方向コネクトの方法よりも ISS
上で使っている方が、より能率的である。ISS PRS 経由の、全二方向パケットコ
ネクトは、資源の使い過ぎと "逆戻り" 過ぎのため推奨しない。ISS の Unproto
を試みる前に、つまり ISS のデジ中継に先立ち、地上の デジで練習しておくこ
とを奨める。もし、貴局が UnProto コールをして、ISSから何もエコーが返って
こなかったら、それは恐らくバンドが混んでいるのだろう。少し待って、そして
後で再度試してみるように。

ISS のアマチュア無線プロジェクトに関するウェブページを、さらに紹介する。

Ariss web page
http://ariss.gsfc.nasa.gov/

Bob Bruninga, WB4APR, US Naval Academy Satellite Lab, ISS APRS web page
http://www.ew.usna.edu/~bruninga/iss-faq.html

Marex 
http://www.marex-na.org/

この記事は、次の方法で自由に転載してよい。Eメール(リストサーバーを含む),
Usenet, そして World-Wide-Web。 利潤に関わるものに対しては複製しないよう
に。 しかし、CD ROM, 書籍, そして 他の商用物については、著者の事前の同意
を必要とする。

Until we meet again

DOSVIDANIYA Miles WF1F


《原文》

http://www.ne.jp/asahi/hamradio/je9pel/howisspa.htm


《提言》(by JF6BCC)

Date: Fri, 01 Mar 2002 14:06:16 +0900
From: Yoshihiro Imaishi JF6BCC [imaishi@syd.odn.ne.jp]
To: [jamsat-bb@jamsat.or.jp]
Subject: [jamsat-bb:10938] ISSのPMBへはコネクト禁止 & 運用法提案

JF6BCC 今石です。

  AMSAT-BB には、ISS の PBM (RS0ISS-1) へのコネクトが 禁止されている旨が
繰り返し言われているにも関わらず、今だ RS0ISS-1 や RS0ISS にコネクトする
行為が後を絶たないようです (--;)。 2/28 朝には WB4APR Bob が、Capture し
た ISS の PMB (RS0ISS-1) のメッセージリストをAMSAT-BB に投稿してました。
使用禁止だと言っているのに MSG# は 39 まで行ってます。

  …皆、どういうつもりなんでしょう?。乗組員が端末を接続しないと消せない
のに、PMB の容量を圧迫した上、ダウンリンクをメッセージリストでツブすつも
りなんでしょうか?。(--;)  JA 局が居ないのは幸いですが…。

  今朝は、WA1KAT Roger から SAREX に、"ISS の PMB にコネクトするな!" と
言うセリフが、英・伊・仏・独…7カ国語で紹介されてました (--;)。

# …シルブプレ・ヌェレラ・パ・オ・BBS・インテルナシォナール・ド・スタシ
# オン・スパテアル!。 ビッテ・スクリーエン・ジー・ナハト・アン・ダス・
# インテルナショナール・ラムスターシオン・BBS・アン!。ノー・コネクテ・
# ポルフォボール・コネル BBS インテルナショナール・デ・ラ・エスタシオン
# エスパシアル!。ノン・コレガーレ・プレゴ・アル BBS インテルナショナー
# レ・デラ・スタジォーネ・ディ・スパズィオ!。 ポルフォボール・ノ・コネ
# クテ・アオ BBS インタナショナル・ダ・エスタシオ・デ・エスパシオ!。
# プリーズ・ドント・コネクト・トゥ・ザ・インターナショナル・スペース・
# ステーション BBS…

  例の記事の和訳は、脇田さんに期待します (^^) が、実はこの記事通りで無い
方法について提案したいことがあるんですよ。この記事は「パケット長を節約す
る」と言う行為について触れていないものですから。

  記事中では、unproto の宛先フィールドには "CQ" や GL などを指定すると同
時に、Unproto の Digi route に 名前や QTH などの付加情報を記述することを
推奨しています。 その上で、パケットの情報部(つまり本文)は、RTTY や CW 
などと同じ「普通語」での交信を案として提示しています。

  ですが、アジアは業務局からの混信と戦い、欧米は合法局同士だけで大混雑し
ていると言う状況では、上記の方法より一歩踏み込んだ対応が必要だと、効果的
だと思うんです。つまり、送信時間を短くして、混信やパケット衝突の確率を下
げることです。
  とは言え、地上波なら、互いに送受信切換とスケルチ立ち上げの速いリグを使
って TXD を短くするなどの工夫が取れますが、ISS の無線機は ハンディ機です
から、TXD をあまり短くしたのでは相手のスケルチが開ききらないうちにデータ
伝送に入ってしまい、相手にデコードしてもらえません。となると、伝送時間を
節約するとすれば、パケット本体の長さを減らすしかありません。

  ここで、AX.25 の規格を考えてみましょう。 本文や Unproto の Digi ルート
情報が入る部分は可変長、つまり、長ければそれだけパケットが大きくなります
が、Unproto の宛先情報は 固定長で、"CQ" の2文字でも "JF6BCC" の6文字でも
同じだけの時間を占有します。 つまり、Digi ルートや本文に載せる情報を節約
して Unproto の宛先をうまく利用することで、パケット長が節約できる と言う
ことです。

  例えば、こんな風にです。

 (1)JF6BCC>ALL,RS0ISS:       →  JF6BCC>CQ,RS0ISS
    HELLO CQ
      ※ CQ や 73,TKS は宛先に収納可

 (2)JF6BCC>ALL,RS0ISS:       →  JF6BCC>Jxxxxx,RS0ISS:
    Jxxxxx DE JF6BCC UR 599      UR599
      ※相手コールを宛先に入れて本文を節約

 (3)JF6BCC>CQ,RS0ISS,FROM,402103,PM53JV:  → JF6BCC>CQ,RS0ISS:
      ※余計なデジルートは無駄

 (4)JF6BCC>CQ,RS0ISS:PM53JV  →  JF6BCC>PM53JV,RS0ISS:CQ
      ※宛先は6文字の固定長なので、長い情報を回した方が得

  私としては、このようなスタイルでの交信を、一般的にして欲しいな、と思い
ます。

  無論、デメリットもあります。 送信電文にあわせて unproto を毎回書き換え
ないといけないからです (^^;)。 via RS0ISS をタイプミスする危険性も増えま
すよね。ただし、私はこれは「メリット」として考えたいのです。つまり、この
ように毎回手動で書きかえる必要をつけることで、地上局からのアップリンクを
抑制し、間隔を空けるように誘導した方がいい、と思うのです。

  unproto をセットしてコンバースモードに入れば、以後、Enter キー(Sendp_
ac のキー) を押せば、いくらでもパケットは出てしまいます。1回やってすぐに
返答が来なければ、続けて押してしまうのが人情でしょうが、 PacSat と違って
ISS の上り回線は1つしか無いのですから、こんな形で連続送信をされたのでは
たまりません。が、1パケットを送信するために、Unproto を書きかえることを
習慣づければ、無駄打ちは減ると思うんですよね。いかがでしょうか? (^^;)。


さらに、

(1) TNC は Monitor ON および MCOM ON にしておきましょう。
(2) アップリンクの 145.990 に対して ドップラー補正をすることをお勧め
    します。前半 144.988 あたり、中盤で 990、後半 992 あたりにすると
    通りが良いかと。

  UI チャットで使われるコンバースモードについても説明を。 TNC-2 では、
コマンドモード と コンバースモード の2つのモードがあります。 コマンド
モードは、ご存知の cmd: プロンプトが出ている状態で、端末から入力した情
報は TNC に対する指令とみなされます。 対してコンバースモードは、会話の
ためのモードで、端末から入力した情報は通信文として相手に送られます。

  通常のパケットの交信では、コマンドモードでコネクト命令を発行して相手
局と接続して行いますが、この際、TNC-2 の初期設定では自動的にコンバース
モードに遷移するようになっていますので、利用者は、コネクト成立後すぐに
互いに会話できる状態になります。また、ディスコネクトすれば自動的にコマ
ンドモードに戻ります。

  これに対して 「UI チャット」と呼ばれるものは、相手とコネクトせずに、
コンバースモードに入って行うものです。TNC-2 に対して "CONVerse" あるい
は、"K" コマンドを与えると、コネクトしないままコンバースモードに入り、
以後、キーボードから何か入力した文字は、UI パケットとして送信されます。

  UI チャットの良いところは、送達確認などのパケットが出て行かないので、
周波数の混雑を避けられることと、相手を特定しないので ラウンド QSO に向
いていることです。過去、高層ビルや山頂に設置されたデジピータを使って、
広い範囲でチャットをすると言うのが流行りましたよね。

  ISS を利用した通信にも、この UI チャットの手法を使います。TNC に対し
て、ISS を中継するために  "Unproto"  を  "via RS0ISS"  と設定した上で、
"Monitor ON" (および "MCOM ON") にして UI パケットをモニタできる状態と
し、"K" でコンバースモードに入るのです。 以後、自分が Ent キーを叩いた
らパケットが送信され、それがうまく ISS の TNC によって中継されれば返っ
てくるパケットがモニタできるはずです。

  なお、コンバースモードから抜けコマンドモードに戻るときは  "CTRL-C" 
です。UNproto を書き換えたりする時はコマンドモードに戻る必要があります
ので、この操作は自然にできるように慣れる必要があります。

- -
Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC/KH2GR
jf6bcc@jarl.com
http://plaza16.mbn.or.jp/~palau/
- -


Date: Sun, 07 Apr 2002 02:40:51 +0900
From: Yoshihiro Imaishi JF6BCC [imaishi@syd.odn.ne.jp]
To: [jamsat-bb@jamsat.or.jp]
Subject: [jamsat-bb:11292] パケットUIフレーム解説-ISS交信のための

JF6BCC 今石です。

 最近はパケット通信も下火で、昔は熱中していたんだけど最近はご無沙汰、
ISS で 1200bps/FSK のパケットが使えると聞いたので、押入れの中から古い
TNC をひっぱり出してセットアップ、と言う方もいらっしゃるかと思います。
  TNC の操作コマンドについては、押入れからマニュアルがちゃんとみつかる
ことをお祈りします (^^;) が、ここでは ISS での交信に使われる UI フレー
ムと言うパケットについて、簡単に解説します。

# 参考資料:CQ出版社 1991 年版「パケット通信ハンドブック」

  AX.25 による UI フレームのパケットは、このような構造をしています。

  ※エンターキーを押すと出るキャリッジリターン (CR) 符号を、ここでは
    '*' で表示します。また、スペースは '_' で表示します。

例 : JF6BCC>CQ,RS0ISS* (UI R):CQ
パケット長 33 バイト
+---+----------+----------+----------+------+-----+------+-----+---+
| F |            アドレス            | 制御 | PID | 情報 | FCS | F |
|   | JF6BCC-0 | CQ____-0 | RS0ISS-0 |      | OxF0| CQ*  |     |   |
|(1)|   (8)    |   (8)    |   (8)    |  (1) | (1) | (3)  | (2) |(1)|
+---+----------+----------+----------+------+-----+------+-----+---+

F    : フラグ。"01111110" (Ox7E) で、このビット列から後がデータである
       ことを示す。
制御 : パケットの種類と順序を示す。UI の場合は Ox03 または Ox13。
PID  : 予約領域で現在は OxF0 固定。

  1200bps/FSK の信号では、150 バイト/秒程度の伝送速度となりますので、
34 バイトを送るのに 227ms かかることになります。実際は、パケットの前
に SYNC 信号が TXDelay 分、またパケットの後にも送信が切れるまでの時間
がありますので、TXD=50 とすると、34 バイトのパケットを1個送出するの
にかかる時間は 800ms 程度になります。

  さて、上の図で気づくことが2つあると思います。ひとつ目は、アドレス
フィールド、つまり、自コールサイン、あて先、デジルートを格納する領域
は8バイト単位で増えるのに対して、情報部分は1バイト単位で増えること
です。ふたつ目は、あて先に6字以下の情報を入れても、残りはスペースで
埋められてしまう、と言うことです。
  ISS を使った交信では、1回のパスで最大 10 分しかチャンスが無いこと、
送受信ともに 2m 帯を使った半二重通信であること、地上局同士は互いにセ
ンシングできないため、すべて「隠れ端末」として、アップリンク周波数で
のパケットの衝突を引き起こすこと、などの問題がありますので、効率よく
公平に運用するためには、送信回数を減らすとともに、1回の送信は極力短
くすべきです。

  となれば、このパケットの特質を生かして工夫してはどうでしょうか。つ
まり、あて先の6文字をフルに使って情報領域を節約するとともに、無駄な
デジルートは極力使用しない、と言うことです。

  試しに、CQ と応答のケースで比較してみましょう。

1. CQ の場合。

  (1)  JF6BCC>CQ,RS0ISS* (UI R):
       +-+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+
       |F|JF6BCC-0|CQ____-0|RS0ISS-0|C|P|*|FC|F|  31 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+
  (2)  JF6BCC>ALL,RS0ISS* (UI R):CQ
       +-+--------+--------+--------+-+-+---+--+-+
       |F|JF6BCC-0|ALL___-0|RS0ISS-0|C|P|CQ*|FC|F|  33 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+---+--+-+

2. レポート交換の場合

  (3)  JF6BCC>JA6PL,RS0ISS* (UI R):599
       +-+--------+--------+--------+-+-+----+--+-+
       |F|JF6BCC-0|JA6PL_-0|RS0ISS-0|C|P|599*|FC|F|  34 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+----+--+-+
  (4)  JF6BCC>JA6PL,RS0ISS* (UI R):UR 599
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------+--+-+
       |F|JF6BCC-0|JA6PL_-0|RS0ISS-0|C|P|UR 599*|FC|F|  37 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------+--+-+
  (5)  JF6BCC>CQ,RS0ISS* (UI R):JA6PL UR 599
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------------+--+-+
       |F|JF6BCC-0|CQ____-0|RS0ISS-0|C|P|JA6PL UR 599*|FC|F| 43 バイト
       +-+--------+--------+--------+-+-+-------------+--+-+
  (6)  JF6BCC>JA6PL,RS0ISS*,UR,599 (UI R):
       +-+--------+--------+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+
       |F|JF6BCC-0|JA6PL_-0|RS0ISS-0|UR____-0|599___-0|C|P|*|FC|F| 47 バイト
       +-+--------+--------+--------+--------+--------+-+-+-+--+-+

  いかがでしょうか? (^^)。いずれが効率が良いか、一目瞭然ですよね。
実際に ISS から降ってくるパケットを聞いていても、長さの違いがわかる
のではないでしょうか?。
  無論、数バイト〜数十バイトの節約で搾り出せる時間は、たかだか 10〜
100ms と言う短い時間でしかありません。が、わずか 100ms 短くなったお
かげで、パケットが破損せずに通ったり、つぶし合うことを避けられたり
するかも知れないのです。

  私は基本的に、(1) と (3) の形を取っています。UI の書き換え作業が
多少面倒ではありますが、(5) と (3) の差を考えると、混信防止のために
努力する価値は十分あると思います。
  削りすぎた交信は無味乾燥だ、と思われる方もいらっしゃると思います
が、別に、四六時中これをしなくてはならない訳ではありません (^^;)。
混雑していない時なら、簡単なメッセージを交換したとしても、誰も文句
は言わないと思いますよ。あくまで、混信でパケットが破損するのを防止
するため、かつ、混雑した状況下で効率よく交信をするための「工夫」な
のです。

  ISS 経由で UI チャットを楽しまれている各位へ参考となれば幸いです。

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Yoshihiro Imaishi 今石良寛 - 福岡県北九州市
JF6BCC/KH2GR
jf6bcc@jarl.com
http://plaza16.mbn.or.jp/~palau/
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《参考》(スプリット交信, KENWOOD TS790S の場合)

 1. SPLIT キーを押す。

 2. A VFO に送信周波数を設定する。 "A VFO, 145.990MHz"

 3. A/B ボタンを押す。

 4. VFO B に受信周波数を設定する。 "VFO B, 145.800MHz"

 5. MAIN ディスプレイを、"VFO B, 145.800MHz" にしておく。

 6. PTT 動作で、瞬間的に送信周波数 "A VFO, 145.990MHz" になる。

 7. その直後に、自動的に受信周波数 "VFO B, 145.800MHz" に戻る。


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