TS790 "高速38400buad" 改造マニュアル


● (No.249) TS790 "高速38400buad" 改造マニュアル (2001年 1月12日)
 ----------------------------------------------------------------

       ===   UoSat-12 (UO-36) 運用のための TS790E/A の改造   ===
       ===            IFD復調器の使用のための知識            ===
       === Kenwood TS790A/E SYMEK IFD のための導入マニュアル ===


                SYMEK Datensysteme und Elektronik GmbH
                         http://www.symek.com/
                          DK9SJ / Ulf Kumm 著
                        JE9PEL/1 脇田美根夫 訳


訳注:これは、ドイツSYMEK社の TS790用IFD基板 に添付のマニュアルを翻訳し
   たものです。この改造をする場合は、各局の責任のもとで行って下さい。


アップリンク(TX) : 任意の周波数 (144-146MHz, 430-440MHz など)
                    FSK-変調 4800〜19200 Baud
ダウンリンク(RX) : 430-440MHz, 38400/76800 Baud FSK
                   (広域フィルタで 153 kBaud まで可(オプション))

必要な材料 ・ SYMEK IFD-B 増幅器-混合器-復調器基板 (オプション'TS790')
      ・ 二個の 1:3 RFマイクロトランス(変圧器)、二本(30cm)の細い
        芯線、ワイヤ(電源ケーブル)、シールドオーディオ線、 他の
        ハードウェア、熱収縮チューブ、必要な他の部品

 トランスは "7003 * NEOSID" と記載されている。二個とも、50Ωピンは横に
 '点'と '7003'と表され、450Ωピンは上部の横に 'NEOSID' と表されている。
 言い換えると 点がついているのはピン1で、他のピンは右回りに(例によって
 ICで)番号がついている。50Ωの入力はピン1+2 で、出力はピン3+4 である。
 しかし、もし左に回してピン1(点)にするならば、文字は逆さまになる。トラ
 ンスは 1:3 の変化率であり、平方の 1:9 のインピーダンス率となる。 ピン
  1+2 の50Ωの ピン3+4 におけるインピーダンスはフィルタに一致し、450Ω
 である。


1.送信部(変調)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 TS790は、次の改造をすることにより、簡単に 19200Buadまで上げることがで
 きる。無線機のケース(底)を注意して開ける。 コネクタ31(FMD=周波数変調)
 に注目せよ。水晶(crystal)発振器(10.605MHz)が近くに見える。 コネクタは
 大きな IF-基板の左後ろにある。

 コネクタ31の信号ピンに向かう白線に、10kΩの抵抗をハンダ付けせよ。抵抗
 の反対側は、30cmシールドオーディオ線の中心芯に ハンダ付けする。シール
 ドはグランドに接地する(例えば、コネクタ31の黒線)。 この信号をアクセス
 するには、ACC4 の3番ピンが使える。このピンは 元来の無線機では使われて
 いない。


2.PTT(送信入力)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ACC4コネクタ8番ピンは、送信部に入力するためのPTT接続として既に使える。


3.復調器出力
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 無線機の上部のカバーを(フロントを手前にして)開ける。 RF430MHz基板に注
 目せよ。これは電力増幅器基板の下の右側にある。RF430基板に触るために、
 固定アルミニウム部品の回りの、リアパネルの2個のネジを含む全てのネジを
 はずさなければならない。RF430基板は、電力増幅器とは逆さまに、同じ固定
 アルミニウム部品で固定されている。アルミニウム部品は、RF430基板を簡単
 に触れるように、プラスチックのちょうつがいでつながっている。

 RF430基板の全体は、ブリキカバーでシールドされている。最初にこのカバー
 (たくさんのネジ)をはずし、プリント回路基板をはがす。(何本かのケーブル
 は抜かなければならない。) この基板のハンダ付けを変えなければならない。

 デュアルゲートFET混合器 Q203 に注目せよ。(写真の中の L208 の下を見よ)
 Q203のドレインは、元来は L208のタップ方向にのみ向いている。この Q203
 と L208を結ぶ線を、注意深く切断しなければならない。

   写真a:カバーを開けたTS790。芯線を追加した RF基板が見える。

   写真b:トランスを追加した RF430基板のハンダ付け。
       線を切断する場所が見える。(中心の青の三本線)
       注意:SMD型トランスは短い 0.3mmエナメル銅線で接続する。

   写真c:無線機の上部。IFDが逆さまに設置されている。


  混合器出力への接続
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  3:1の減少トランスが使われる。Q203のドレインに、450Ω入力ピンの一つを
 接続せよ。ここで、L208のタップは前につながっている。他の 450Ωピンは、
 R213(56Ω)/C218/L208 の交点にハンダ付けする。トランスの50Ω側は、細い
 50Ω芯線につなげる。線のシールドはグランドにハンダ付けする。つまりFET
 は、電力を 450Ωに変化して与えられる。無線機の下部の ファンモーターの
 下に、"mixer" と印を付けて引き出すこと。


    TS790 1st Mixer 435 MHz                             X201
                                                 ___| ̄ ̄|
                                          L208  |      |\/| ̄
         Q203            T1  cut   T2         ) ̄|     |__| 
     ---/ ̄\--------------- X ------------(  ===      |
        |  ‖|            (        )          )_|      ///
     ---\_/--        1  )4    4(  1         |
               |   | ̄|2 ( 3    3 ) 2| ̄|     |
               ||  /// |  |      |  | ///    |
               |      |  |___|_|____|
              ///      |  |56E |     |
                       |  ||   ===    |
          to IFD ___|  |    |     |___ to IFD
          RF-IN   |       |   ///         |  RF-OUT
          Mixer  ///      | R213 C218    /// Filter
                       +12V

                                Version with 1:3 transformers 50:450Ω


 注意:SMD-トランスにおいて、入力と出力は対の直流(dc-coupled)ではない。
    50Ωの入出力は、まさにトランスの変化による50Ωである。二個のト
    ランスの50Ω側は、細い50Ω芯線を経由した IFDの入力と出力である。
    もう一方の50Ωピンは、グランドに接地する。


  フィルタ入力への接続
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  1:3の増加トランスが使われる。L208のタップに、450Ω出力ピンをハンダ付
 けせよ。ここで、Q203混合器は前方につながっている。 他の 450Ωピンは、
 R213(56Ω)/C218/L208 の交点にハンダ付けする。 トランスの 50Ω入力ピン
 は、細い 50Ω芯線につなげる。線のシールドはグランドにハンダ付けする。
 無線機の下部のファンモーターの下に、"filter"と印を付けて引き出すこと。

 注意深く RF430MHz基板を再設置せよ。回路のショートと基板のハンダ面によ
 るトランスの損傷を防ぐために、絶縁テープを使用せよ。

 重要:インピーダンスの違いのために、L208を 今や再調整する必要がある。
    弱い信号を受信して、無線機のSメータが最大に振れるように、L208の
    コアを注意深く変えよ。


 TS790の底部に隙間がある。そこにIFD回路基板を簡単に設置できる。 無線機
 の枠に M2.5ネジ山の使われていない穴を見つけよ。それは、無線機を逆さま
 にして左前の角にある。シングルM2.5の6個のネジを使って、その予備の穴に
 IFDを直接固定することができる。 IFDは未完成なので、事前に全ての接続を
 ハンダ付けしなければならない。

 1. 芯線 "mixer" を、RF-IN(M1端子)(シールドは M2に)ハンダ付けせよ。
 2. 芯線 "filter" を、RF-OUT(M11端子)(シールドは M12に)ハンダ付けせよ。
 3. 赤30cmワイヤを、M90(+12V) にハンダ付けせよ。このワイヤの反対の端は
    無線機背面の ACC4コネクタの7番ピン(常に12V接続)にハンダ付けせよ。
 4. 復調器出力(M63データ出力端子) は、細いシールドオーディオ線を経由し
    ACC4の5番ピン(元来は使われていない) につなげる。
 5. 電源供給のためのグランド接地は必要ない。(シールド線を既に接地済み)


                  RF-OUT  IF-OUT
             +------------------------------+
             |●○L16 □M11    □  □     ●|
             |◇J91          U100  L100     |
             |○L1                    M60M61|
             |      ∴C10-C15 ○ ○  × □□|
             |     L12 L13   F20 F30 R74    |
       RF-IN |□M1  □ □         ×R76     | RSSI
             |         ◇J85     ○      M63|
      OSC-IN |X80       ◇J82    R52 ○   □| DATA-OUT
             | □ J80                C52    |
             |    ◇    J92    □L44        |
         +5V |     L80   ◇                 | AF-OUT
             |●    □        □M90       ●|
             +------------------------------+
                        GND    +12V


4.パケット無線コントローラ(TNC) の接続
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 TS790からパケットコントローラへ結ぶ 3本のワイヤ遮蔽ケーブルが、必要で
 ある。上記の ACC4コネクタである 8ピンDIN TypeHの(ピンが円の中に並んで
 いるのではなく、ピン6+7がそばの円周上にある)コネクタを使う時は、ACC4
 コネクタとTNCの間を結ぶこのケーブルが適している。

  2番ピン: グランド (TNC 2番ピン:GND に接続)
  8番ピン: (中心ピン) PTT (TNC 3番ピン:PTT に接続)
  3番ピン: 変調 (TNC 1番ピン:Mod に接続)
  7番ピン: 12.5V 供給 (未使用)
  5番ピン: データ出力 (TNC 4番ピン:Demod 接続)
  (RSSI出力は、もし必要ならどこかほかに接続する)

 訳注:日本製のTS790では、6番ピンが中心ピン。


5.セットアップとテスト
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 全てのカバーを閉める前に、無線機が 以前のように正確に動作するか調べる
 こと。最良な RX感度のために、共鳴回路 L208を再調整しなければならない。
 1〜10マイクロボルトの信号を与えて、L208を Sメータが最大に振れるように
 調整せよ。IF増幅器の追加により、Sメータは数デジベルの違いを生ずるかも
 しれない。ケンウッドの取扱説明書では、430Mhz受信システムの感度調整は、
 次のようである。

 1. 3.2〜100μV FM信号、1Khz変調、5Khz偏差を与える。
    (著者は、440Mhzで 3μVを使用した。)
 2. Sメータが最大に振れるように、L214, L215, L210 の順に調整し、
    これを繰り返す。
 3. Sメータが最大に振れるように、L211, TC203, L208, L209 の順に調整し、
    これを繰り返す。

 感度を戻すためには、この全ての調整が必要である。正確に調整するために、
 L208 はほんの少し、TC203 は大きく調整した。これらは本当に簡単な調整で
 ある。L209だけが少し "扱いにくく"、他はピークで大体のものである。取扱
 説明書は、信号レベル・偏差において本当に特殊であるが、平均的な無線家は
 435Mhz帯のどんな弱い一定強度の信号でも、調整をすることができると思う。

 適切な周波数偏差と変調の指針を得るために、TNCの出力レベルを調整せよ。
 無線機が変調器を全く止めてしまうような、変調オーバーはしてはならない。
 変調器は、9600〜19200 baud の全てのFSKボーレートに対して 完全に動作す
 るだろう。 注意:入力電圧は、送出信号の帯域を決定する。より高いボーレ
 ートに対しては、より大きい振幅の信号が必要である。

 RSSI出力は限りなくゼロに近い(0.1μV より小さい)信号で、(1mV RF入力で)
 4ボルトまで上昇するだろう。19200, 38400, 76800 baud信号を受信している
 時、データ出力で完全なアイパターンになるだろう。 38400 baudの出力電圧
 は標準で 0.5Vpp である。


6.質問と答
   ̄ ̄ ̄ ̄
 Q:なぜ IF信号を IFDに供給するのか? IFDを混合器出力にパラレルに接続
   する方が簡単ではないか?
 A:混合器の直後に、信号は クォーツ(石英)フィルタを通過する。どのフィ
   ルタでも、入力インピーダンスは 周波数により意味深く変化する。帯域
   内でフィルタは調和し、帯域の外では フィルタは信号を反射する。フィ
   ルタ入力における振幅スペクトルは、帯域内で 鋭い切り込みを見せる。
   ここでパラレルに復調器を接続すると、変化する電気的負荷のために 厳
   しい歪みの原因になるだろう。だから 混合器の直後の信号は、緩衝しな
   ければならない。増幅信号は、増幅しない時と同じ(あるいは数デシベル
   大きい)信号レベルを得るために、再び減じられる。

 Q:AFC出力は得られるか?
   (訳注:AFC ・・・ Automatic Frequency Control 自動周波数制御)
 A:プリント回路基板上(M60/M61)に、接続されていない二対のピンがある。
   これらのピンは、R52/C52(DET出力)の交点に、M60ピンに100kΩの抵抗を
   経由して接続する。このピンで、受信した FM信号の中心周波数による電
   圧が測定できる。

 Q:38kBaud以上の高速パケット無線信号をどのように解読するのか?
 A:Z80 による TNC2プロセッサは、19200 Baudを越える信号を解読すること
   ができない。新しい TNC3 あるいは TNC31 シリーズでは受信することが
   でき、1 Mbit/s までのボーレートを送信できる。これらは、全て共通の
   ボーレート(9600,19200,38400,76800,153600以上)によるモデムである。
   異なる送信速度と受信速度(例えば、UO-12に対する送信9600/受信38400)
   による特別なモデムとしも利用できる。TNC3パケットコンローラを WISP
   ソフトウェアで使う時、送信にはモデム1、受信にはモデム2が使われる。
   WISPは kissモードを使うので、両方のモデムは同時に受信でき、データ
   は初期状態でポート1経由で送信される。


  オプションとジャンパー割り当て
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 J80:    標準のクォーツ(石英)発振器を使うならばショートする。この場合、
         L80は使わない。
         高周波の水晶発振器を使うならばオープンする。
         この場合、L80は使う。
 J82+84: 内蔵ローカル発信器を使うならばショートする。
         外部発信器を使うならばオープンする。 X80, L80は省く。
 J85:    外部ローカル発信器を使うならばショートする。
         内蔵ローカル(水晶)発信器を使うならばオープンする。
 J91:    供給電圧を、IF入力あるいは IF出力ピンから得なければならない
         ならばショートする(例えば、FT736)。L1/L16は使う。
         IFDをピンの12V経由で供給するならばオープンする。 L1/L16は、
         IC821 の運用においては削除しなければならない!
 J92:    内蔵電圧装置を使うならばショートする。
         IFDを外部装置5V電源から供給するならばオープンする。
 R74     調節のオフセット:入力信号なしで 0.1ボルトRSSI出力に対して調節
                  する。
 R76     調節のゲイン:-50dBm入力信号レベルで、4ボルトRSSI出力に対して
                調節する。最良の結果のために、R76とR74を 2〜3回、
                調節しなければならない。

 許容増幅器の前のIF出力は 'IF out'ピンで得られる。この特性を使用するに
 は、U100, L100を使う。最良の調和のために、IF入力に広帯域変調FSK信号を
 供給し、データ出力の信号(1 Vpp)を最大にするようにL44を調整せよ。L12と
 L13は、弱い(-90dBm)入力信号で(RSSI測定)信号を最大にするために、再調整
 することができる。 入力オープンによって、データ出力で最大約2Vのノイズ
 があるだろう。

 応用として、大きな入力信号が現在どこにあるかは、入力減衰器(attenuator)
 R1,R2,R3が使える。通常、受容器(capacitor)は R2とR1/R3オープンに対して
 使われる。発振器(oscillator)の部分は、クォーツ(石英)周波数と標準/高周
 波モードに関係する。 L12とL13, C10〜C15の値は、要求するIF入力周波数に
 関係する。フィルタF20とF30は、要求するIF帯域によって選択する。


   TS790の IFD改造オプション
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 発振器:IF 75.925MHz(標準)に対して、クォーツ(石英) TQ730518/65.225MHz
 R80:560Ω, L80:0.33μH, C80:22pF, C81:33pF, C82:33pF

 帯域フィルタに対する値:C10:68pF, C11:12pF, L12:0.33μH, C12:2.2pF,
             (C13:2.7pF), L13:0.33μH, C14:22pF, C15:22pF

 U1の3番ピン/R10の交点と C11/C10の交点の間に、増幅ゲインのためのフィル
 タ入力インピーダンスの影響を減ずるために、22Ω抵抗を付加する。


  標準電圧(直流電圧メータで測定)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  U1(ERA-3 Amplifier)Pin1:2.6V  U2(IF-IC)Pin1:1.1V  U2(IF-IC)Pin18:1.3V
  U1(ERA-3 Amplifier)Pin3:3.5V  U2(IF-IC)Pin4:4.2V  U2(IF-IC)Pin16:1.3V
  Q80(Oscillator)Base 3.2V      U2(IF-IC)Pin8:4.6V  U2(IF-IC)Pin14:1.3V
  Q80(Oscillator)Emitter 2.8V   U2(IF-IC)Pin20:2.6V U2(IF-IC)Pin11:1.5V


   (訳者より:以上の改造原稿は転載不可でお願いします。)


 トップ へ戻る.

 次のページ へ移る.

 ホームページ(目次) へ戻る.