簡単な衛星! FO-29 デジトーカー Q&A


● (No.170) 簡単な衛星! FO-29 デジトーカー Q&A (1999年3月29日)
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                     KF4FDJ   Mike Gilchrist 著
                     JE9PEL/1 脇田美根夫 訳

 [訳者より]
     AMSAT-NAのコーディネーター Mike Gilchrist氏(KF4FDJ)による
     『EASY SAT! FO29 digitalker』と題する記事が、amsat-bb上で
     発表されています。(3/27 1999)  衛星FO-29のデジトーカーの
     受信についてわかりやすく解説したこの記事を 次に紹介します。


 [EASY SAT! FO29 digitalker]      by KF4FDJ / Mike Gilchrist
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 日本の衛星 Fuji Oscar 29 (JAS-2) は、NASDA(宇宙開発事業団)の地球観測
 プラットホーム技術衛星ADEOSに相乗りする形で、H-IIロケット4号機により
 種子島宇宙センターから、1996年8月17日に打ち上げられました。

 FO-29 は、デジトーカー,JAモードトランスポンダー(中継器),そして 1200/
 9600baudパケット通信の能力を持つ日本所有の小さいLEO(低軌道衛星)です。
 JAモードトランスポンダーは、2メータ(144MHz)のSSBまたはCWアップリンク
 信号を必要とし、70センチ(430MHz)のSSB/CWダウンリンク信号を送信します。

 このJAモードは、全二重モードです。ドップラー変移の補償を行なうことは
 難しいですが、貴局自身のダウンリンクを聞くことができるでしょう。また
 この衛星は、1200/9600baudによる(デジタル)JDモードでも運用されます。


 Q1. FO-29はいつもデジトーカーモードなのでしょうか? また それは何?

 A1. FO-29のデジトーカーは、繰り返し同じ音声を送信するデジタルループ
     アナウンスです。"ホーホケッキョ. This is JAS-2." と聞くことがで
     きるでしょう。この最初の部分は、ウグイスの鳴き声です。

     JARL(日本アマチュア無線連盟)は、デジトーカー,JAモード,JDモード
     のサイクルを計画しています。 デジトーカーのメッセージの内容は、
     1999年4月末には変更されるようです。モードの予定とその他の詳細に
     ついては、AMSAT-BBの広報に気を付けていて下さい。


 Q2. デジトーカーを聞くためにはマルチモードの無線機が必要ですか?

 A2. FO-29のデジトーカーは、FMモードで送信するので、70cm(430MHz)帯を
     備えた どんなFM受信機やマルチモード受信機でも、その信号を聞くこ
     とができます。


 Q3. 信号を受信するためには高利得アンテナを使わなければいけませんか?

 A3. デジトーカーの運用は、JAモードトランスポンダーよりも FM送信機に
     衛星のパワー(電力)のほとんどを与えるようになっています。 それは
     大変強い信号です。

     携帯用の受信機(Scanner)またはトランシーバーと、"簡易"アンテナを
     用いて衛星を聞くことができます。 70cm(430MHz)固定局や、固定アン
     テナを持つ受信局のほとんどは信号を調整することもできるでしょう。


 Q4. FO-29を聞くためには円偏波のアンテナが必要だと聞きましたが、それ
     は本当でしょうか?

 A4. 円偏波のアンテナは JAモードでは役に立ちますが、デジトーカーでは
     必要ありません。本当に携帯無線機と"簡易"アンテナで受信すること
     ができます。八重洲のFT-50Rと簡易アンテナで受信に成功しています。

     受信を最良にするには、無線機(およびアンテナ)を回転する必要があ
     ります。経験から言うと水平偏波に、つまり アンテナの軸を衛星方向
     に対して垂直にすると最も良く受信できます。 実験してみて下さい。


 Q5. 信号を聞くためにはどこに合わせればよいのですか?

 A5. 送信周波数は 435.910MHz です。もちろん、ドップラー偏移の補償は
     しなければなりません。衛星が貴局に近づく時は周波数を少し高く、
     遠ざかる時は周波数を少し低く合わせるようにして下さい。

     衛星が地平線上にやって来る時は、いつも周波数を高く合わせます。
     ドップラー偏移は少しづつ直線的に増加減少するので、無線機は小さ
     な増加分に設定しておきます。


 Q6. 1回の衛星通過において、どのくらい長く聞くことができますか?

 A6. FO-29は低軌道衛星なので、ほとんどの衛星通過の聞こえる時間は6分
     から18分の間です。動作中の全てのアマチュア衛星において、これは
     時間的に限界です。


 Q7. デジトーカーの目的は何ですか?

 A7. デジトーカーは、宇宙からの信号のリアルタイム受信を最初に味わう
     簡単な機会を、ハムにもハムでない人にも与えます。衛星に合わせる
     ことがどのように簡単にできるのかを子供や地上のハムに示すために
     この機会を使って下さい。この機会は、勧誘ミーティングや月例ハム
     ミーティング、学校、趣味の同じ人達の集まるどんな場所においても、
     最適な機会です。


 Q8. 自局のロケーション上に衛星が来る時をどのように知るのですか?

 A8. 衛星が貴局に対して"可視"であることを示すためのプログラムが必要
     です。衛星をリアルタイムに追尾するためのソフトウェアのダウンロ
     ードができて、一般のアマチュア衛星のプログラムに関する他の情報
     も得られる最適な場所は、 http://www.amsat.org です。

     もし追尾プログラムをダウンロードするならば、最新のケプラー軌道
     要素もダウンロードしなければなりません。 どの時刻予報プログラム
     も、衛星がどこにいるのかを決定するために、そしてFO-29がいつ貴局
     からの地平線上に現れるのかを決定するために、この軌道要素を必要
     とします。

     その他に代わるアプローチの仕方は、次のようなオンライン時刻予報
     のサイトを使うことです。このサイトは、選択した衛星の通過時刻の
     予報を与えます。

       http://acsprod1.acs.ncsu.edu/scripts/HamRadio/sattrack

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 [原文] http://www.amsat.org/amsat/archive/sarex/199909/msg00053.html


 [訳者補足1]

     日本国内でアマチュア衛星に関する一般の情報が得られるサイトを、
     次にいくつか紹介します。

       http://www.jamsat.or.jp/      日本アマチュア衛星通信協会
       http://www.jarl.or.jp/        日本アマチュア無線連盟
       http://www.nasda.go.jp/       宇宙開発事業団
       http://www.isas.ac.jp/        文部省宇宙科学研究所
       http://www.sta.go.jp/         科学技術庁


 [訳者補足2]

     Mike Gilchrist氏(KF4FDJ)との私信の中で彼は、『このデジトーカー
     は、いわゆる衛星のオペレーターではない一般の人達が、宇宙からの
     信号を聞くことができることは大変価値のあることだ。特に、子供達
     や衛星ハムではない人達に、我々と同じくらいの刺激を与え得る。』

     さらに彼は、『このすばらしい衛星FO-29の 製作者/所有者/打上げ者
     に私のこの考えを是非伝えて欲しい』と申しておりました。私(脇田)
     が彼に代わり、衛星FO-29に関係する全ての方々にこれらをお伝えし、
     これからの衛星の活躍に期待したいと思います。


 [訳者補足3]

     衛星FO-29 のデジトーカーを、ハンディー無線機で受信実験してみま
     した。受信日時は 1999年5月3日早朝 1:08〜1:21JSTの北東から上り、
     東の海上 EL14度で南東に沈むパスと、次の 2:52〜3:08JST の北北東
     から上り、西方 EL66度で南南西に沈むパスの二回です。(事前に衛星
     の軌道は確認しておきました。)

     使用した無線機は、一昔前のFMハンディー無線機 TH-F48(ケンウッド)
     です。アンテナは付属の11cmホイップアンテナで、受信周波数は初期
     設定の 20KHz刻みなので、ドップラー偏移を考慮し、AOS時は435.920
     MHzに、そしてLOS時は435.900MHzに合わせ、スケルチは解放しておき
     ました。(周波数選択を 5kHz刻みに設定しておくと、なお容易に受信
     することができます。)

     ハンディー機での受信のコツは、ホイップアンテナの軸を衛星方向に
     対して垂直にすることです。また今回のように深夜の屋外での受信の
     場合は、音を漏らさないという観点からイヤホンを接続して受信する
     とよいと思います。 (端から見たら、真夜中に何をしてるのかと思わ
     れるでしょうね。Hi)

     こうして AOS時とLOS時に『This is JAS-2.キュルルル キュンキュン』
     という女性の声と野鳥の鳴き声を、繰り返し聞くことができました。
     JARL技術研究所によると、この鳥は『百舌(モズ)』ということです。
                                                       (Tnx.JH1UNS)


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