衛星MIRの光度等級の補足


● (FUROKU.45) 衛星MIRの光度等級の補足 (1997年 12月11日)
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 衛星FO-29とMIRの等級について        (by JE9PEL/1 脇田)
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 衛星の明るさに関してレポートをします。
 ここで言う明るさとは、太陽->衛星->観測者という反射のこととします。
 (厳密には、波長の分布強度による放射エネルギーのことらしいです。)

 恒星の明るさの単位として等級が使われていますが、これは6等級の星
 (6等星)の100倍の明るさの星が1等星となります。今、等級m1の恒星
 の明るさをLaとし、等級m2の恒星の明るさをLbとおきます。この時、
 La/Lb=10^((2/5)*(m2−m1)) という関係が成り立ちます。この式
 の両辺の常用対数を考えると、log(La/Lb)=(2/5)*(m2−m1) とな
 ります。ここで、L=(La/Lb)、M=(m2−m1) とおくと、次の式
 のように見やすくなります。 (Mは等級差、Lは明るさの比)

     M=(5/2)*logL ..... (1)

 例えば M=1   とすると、L=10^(2/5)=100^(1/5)   = 2.5倍
     M=2   とすると、L=(10^(2/5))^2=(2.5)^2 = 6.3倍
     M=2.5 とすると、L=10^((2/5)*(5/2))=10^1=10.0倍

 一般に、m等級の星の明るさをLm、(m+n)等級の星の明るさをLm+n
 で表すと、Lm+n=Lm*(k^n) となることが知られています。(k:定数)
 今 m=1、n=5 とすると、この式から L6=L1*(k^5) となります。
 ここで、L1=100*L6 から k^5=1/100 となり、k=(1/100)^(1/5)
 よって、k=1/(2.5) が得られます。つまり、1等級増せば星の明るさ
 は約 1/(2.5) に減るということ、言い換えれば次のようになります。

     1等級減れば、星の明るさは約2.5倍に明るくなる ..... (2)

 例えば 1等星のk倍[1/(2.5)倍]は2等星、1等星のk^(-1)[2.5倍]は
 0等星、1等星のk^(-2)[6.3倍]は -1等星、です。


 さて、次の4つのことをここで仮定します。

    ・明るさは距離の2乗に反比例する。
    ・スピン安定型静止軌道衛星は、13〜15等級で見える。
    ・静止衛星(S)のTCA時の SlantRange は、40000km
     FO-29 (F)  のTCA時の SlantRange は、 1400km
     MIR (R)    のTCA時の SlantRange は、  800km
    ・実効反射面積の違いは無視する。

 例えば、観測者を(O)で表し、OSを観測者と静止衛星との距離を表すと
 すると、L=(OS^2)/(OF^2)=160000/196=816 となります。 上記の
 (1)式に代入すると、M=(5/2)*log816=2.5*2.9=7.3 となります。
 つまり、衛星FO-29は、(13〜15) −7.3=(5.7〜7.7)等級で見えること
 になります。

     衛星FO-29は、5.7〜7.7等級で見える ..... (3)

 MIRの反射率を約90%と仮定すると、明るさに関しては45倍ということ
 になります。 方程式 (2.51)^y=45 の両辺の常用対数を考えて、
 y=log45/log2.51=1.6532/0.3997=4.1等級となります。

 つまり、衛星MIRに関しては L=(OS^2)/(OR^2)=160000/64=2500 と
 なり、上記(1)式に代入して M=(5/2)*log2500=2.5*3.4=8.5 から、
 衛星MIRは、(13〜15) −8.5−4.1=(0.4〜2.4)等級となります。

     衛星MIRは、0.4〜2.4等級で見える ..... (4)


 先日、「日没直後に衛星MIRを目視できた時に 最初は火星と同じくらい
 の大きさと明るさを持っていて、TCA 時には木星くらいの明るさに輝度
 を上げながらなめらかに上昇していく」という説明をしました。各惑星
 の等級を次に載せますので、上記(3)と(4)の結果を比較してみて下さい。

           平均    極大
     水星            -2.4
     金星            -4.7
     火星    +1.6    -3.0
     木星    -1.4    -2.8
     土星    +0.9    -0.5
     天王星           +5.3
     海王星           +7.8
     冥王星          +13.6


    《参考文献》・天文学通論 鈴木敬信 地人書館
          ・高等学校教科書 地学 啓林館
          ・なぜどうして事典(5年) 学研
          ・天文年鑑 1998    誠文堂新光社
          ・理科年表 1998    丸善


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