自動追尾ソフトの初期設定


● (EISEI.10) 自動追尾ソフトの初期設定 (1993年 9月8日)
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 衛星自動追尾用のソフトには、JAMSATから頒布されているものや、市販品も
 いくつかありますが、ここではケンプロ(株)の「Satellite Tracking Program II」
 を説明します。

 事前に自分の位置を登録する必要があり、大きな書店の地図コーナーの国土地理院
 発行の1/2万5千などの地図で、受信点の緯度・経度を確認しておきます。ちな
 みに筆者の受信点は 北緯35°22'51"(≒35.381°)、東経139°36'48"(≒139.613°)
 です。

 まず、「SETMY」と入力すると、次のように自局(受信点)の緯度(Latitude)、
 経度(Longitude)、高度(Altitude)そして RS-232C の通信速度(baud rate)
 UTC(協定世界時、グリニジ標準時)との時差を聞いてきますので、次のよう
 に入力します。JST(日本時間)との時差は9時間(540分)です。 たとえば、
 UTC 01:30 は、JST 10:30 と同じです。

     My Latitude=35.4          |  緯度
     My Longitude=139.6        |  経度
     My Altitude=0.0           |  高度
     RS-232C baud rate=1200    |  通信速度
     UTC-Local Time(Min)=-540  |  UTC時差

 これで、自局のデータは「MYDATA」というファイル名で、自動的に登録されます。
 次に、FO-20を運用するための自動追尾用の軌道データを入力してみましょう。
 「SETDATA FO-20 STEP」と入力すると、衛星追尾に必要な各軌道要素名を聞いて
 きますので、前回(9)で紹介した最新データをもとに次のように入力します。

     Epock Time(Year)=93 ........................ 元期年
     Epock Time(Day)=201.62045726 ............... 元期通日
     Inclination=99.0326 ........................ 軌道傾斜角 (度)
     R.A.A.N.=51.4678 ........................... 昇交点赤経 (度)
     Eccentricity=0.0541409 ..................... 離心率
     Argument of Perigee=10.9621 ................ 近地点引数 (度)
     Mean Anomaly=350.2744 ...................... 平均近点角 (度)
     Mean Motion=12.83220462 .................... 平均運動 (回転/日)
     First Time Derivative of M.M.=-0.00000025 .. 平均運動変化率
     Revolution Number at Epoch=16160 ........... 周回番号
     Semi Major Axis=7704.0284 .................. 軌道長半径 (km)
     Searching Time=60 .......................... 範囲外計算ステップ時間
     Steping Time=60 ............................ 範囲内計算ステップ時間
     Communication Frequency=435910000 .......... 交信周波数 (Hz)

 参考までに、元期通日の 201.62045726 を解析してみます。小数点より上がその年
 の日数ですので、201より小さい値で一番近い数値を下表から選びます。すなわち、
 7月となります。次に、201と181の差をとると20となります。これが日にちを表し
 7月20日となります。小数点以下の数値に次式のように定数をかけると時分秒が得
 られ、結局、上記データは 93年7月20日 14時53分27秒 現在のものとわかります。

      +−−−−−−−+
     | 1月   (閏年)|
     | 2月 31    |
     | 3月 59(60)  |
     | 4月 90(91)  |   0.62045726×24=14.89097424 .... 14時
     | 5月 120(121) |
     | 6月 151(152) |   0.89097424×60=53.4584544 ..... 53分
     | 7月 181(182) |
     | 8月 212(213) |   0.4554544×60=27.327264 ....... 27.327秒
     | 9月 243(244) |
     |10月 273(274) |
     |11月 304(305) |
     |12月 334(335) |
      +−−−−−−−+

  ところで、MS-DOS の RS-232C 環境設定として、SPEEDコマンドにより次の行を
 AUTOEXEC.BATに追加設定しておきます。

     SPEED R0 1200 B8 PN S1 NONE

 コントローラ、および CS-232 の電源を入れて「TSUIBI FO-20」と入力すると、
 ディスプレイ上に色鮮やかな世界地図が描かれ、自局を中心として、衛星の次か
 らの軌跡がどのくらいの仰角で、どの方向から飛んできて、周波数がどのように
 変化していくかが、動的に大変に綺麗に表示されます。同時に、アンテナを自動
 追尾するためのデータが自動算出され、CS-232 に送り込まれます。


 《補足1》

 なお、次の二つの項目に対しては、ともに「0(ゼロ)」を入力しておいて大丈夫
 です。他の項目に軌道要素が数値入力されていれば、ここを 0(ゼロ) としてお
 いても、正しく軌道計算されます。

   First Time Derivative of M.M.=0
   Semi major Axis=0

 この「平均運動変化率」と「軌道長半径」は、理論的には別の公式から手計算で
 きます。 ご承知のように、『ケプラーの軌道要素』と呼ばれる6個の項目さえ
 数値がわかっていれば、人工衛星や天体の軌道が確定されます。(EISEI.20参照)

 このプログラムにおいても、6個の項目さえ数値入力されていれば軌道計算でき
 るわけで、上記の二項目は 0(ゼロ) でよいのです。


 《補足2》

 ケンプロ(株)の Satellite Tracking Program II(Ver1.0) のY2K(2000年)問題に
 ついて、とりあえずの対症療法をすることができました。

 入力画面の最初の元期年[Epoch Time(Year)]を手入力するところで西暦の下2桁
 の「00」を入力してしまうと、1900年と間違って解釈してしまうことが確認でき
 ました。ここは、1900年の100年後という意味で、「100」を入力して下さい。

 つまり、「Epoch Time(Year)=100」 です。 例えば、衛星FO-29 の2000年1月の
 次のケプラー軌道要素において、

  1 24278U 96046B   00005.80399256 -.00000029  00000-0  10096-4 0 03294
  2 24278 098.5849 295.0885 0350627 289.7717 066.5935 13.52696346167204

   Epoch Time(Year)=100
   Epoch Time(Day)=5.80399256

 と入力すると、正しく衛星のスケジューリングができることが確認できました。
 他の衛星でも同様に、「100」と入力して全て正しくスケジューリングできるこ
 とも確認しました。

 本日(2000年1月11日)、ケンプロ(株)に直接電話で問い合わせしてみたところ、
 このプログラムのバージョンアップはしない とのことでしたので、今後はこの
 対症療法で行うしかないと思います。

 なお、軌道要素のAMSATフォーマットのデータファイルを、Y2K問題をクリアした
 KENPROフォーマットに自動的に変換するプログラム KKH.EXE が、JR2PHC滝 氏に
 より開発されました。次のところから入手することができます。

   http://www5a.biglobe.ne.jp/~mtaki/sub2_download.htm


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