保護者各位
ワンゲルの活動と装備品の購入について
1992年4月16日
顧問 熊野谿 寛
新緑が眼にまぶしく、高山にもようやく春がやってくる季
節となりました。我がワンダーフォーゲル部にも、一年生3名の部員を新しく迎える事が出来ました。そこで年度当初にあたり、ワンゲル部の活動及び必要な装
備について基本を説明いたしたいと思います。
さて、もともと「ワンダーフォーゲル」とは、ドイツ語で
「渡り鳥」の意味です。これは、19世紀末から今世紀にかけてドイツで青年の間にひろがった運動の呼び名であり、野宿で山野を歩き回る活動を通じて、身体
を鍛え、祖国の大地とその自然に親しむものとして、広がりました。日本では、戦後になってワンゲルの名称が普及しましたが、主として無雪期にテントでの長
期山行を行うクラブとして位置づけられて来ました。本校のワンゲルも、テントを使用して自然と親しむ山行を行う事が、基本的な活動内容となっております。
また山行にあたっては、現在、高等学校の山岳関係クラブは、原則として「登頂を目的とした雪山と岩登り」は行わない事になっております。
昨年は、年間19日位の山行を中心に活動を行いました。
山行としては次のようなものを実施しました。
5月 丹沢・新人歓迎山行(1泊2日)
丹沢・沢登り山行(日帰り)
6月 丹沢・沢登り山行(日帰り)
7月 丹沢・ボッカトレーニング山行(土曜午後発1泊2
日)
8月 南アルプス・南部山行(夜行発5泊6日)
10月 秋山・八ケ岳(夜行1泊2日)
11月 丹沢・低山山行(日帰り)
1月 奥多摩・正月山行(1泊2日)
3月 スノーハイク・北八ケ岳(夜行1泊2日)
このうち、特にスノーハイクについては、いわゆる「雪山
登山」とは異なり、高原のワンダリングとクロスカントリースキーを中心としたものです。本年度についても、生徒諸君と話し合いながら、基本的には昨年の形
態を継承しながら活動するつもりでおります。活動の性格上、どうしても交通費がかさむのが悩みの種です。そのため春・夏の山行では、「青春18キップ」等
を活用して各駅停車を用いて、できうる限り経費の節減につとめております。また、このため個人からは山行の経費以外には、部費の類は一切徴収しないことに
しております。しかし、交通費の他、個人装備の大半が個人負担とならざるを得ません。別紙に個人装備で当面必要なものを列記致しましたが、この点、なにと
ぞ、ご承知おき下さい。
顧問としては、できうる限り「安く、楽しく、安全に」登
山を通じて自然に親しんでもらいたいと考えております。特に、安全の確保は最大の課題です。普通の登山道を歩いても岩場などがありますので、合宿などでそ
うしたコースに出かける場合には、事前に岩登りの基礎講習などもおこなう様にしております。この他、私自身も社会人山岳会の会員として、沢登り・岩登り・
雪山・山スキー等の山行を行い、技術の向上と体力の維持に努めております。あれこれの事情で、このところ年間を通じて30〜40日程度しか山行が出来ませ
んが、何よりも山への情熱を持ち、努力し続ける事が、生徒諸君を安全に指導する上での拠り所であると考えております。
最近、中高年登山での事故が話題となっています。しか
し、遺憾ながらその多くは、「計画」が明確でない山行や単独での山行によってしめられています。部内でそうした山行の無いように、原則として部員の単独で
の個人山行はひかえる様に指導しています。また、部での山行については、必ず事前に計画書を配布し、保護者の方の「承諾書」をいただく様にしております。
現状、個人山行を行う余地はあまり無いとは思いますが、ご家庭でもご注意いただきたいと思います。また、計画にあたっては「予備日」を設ける場合もありま
す。これは、荒天や疲労の具合いによって、予定通りに行動出来ない場合にそなえるものですので、その趣旨をご理解下さる様にお願いします。
以上、簡単にご説明いたしましたが、御不明の点がござい
ましたら、なんなりと顧問までお問いあわせ下さい。
個人装備について
次の装備をできるだけ早く、そろえて下さい。
1.登山靴 キャラバンシューズならば「スタンダード」を
購入すること。6000円位。「キャラバン・サーティ」などのハイキングシューズ
は、高くて見かけは良いが、向かない。また、こうしたものはダイクマなどの方が安い。予算が許せば、革皮の登山靴を購入すると防水・保温などの点で数段す
ぐれている。もっとも安いもので1万3千円くらい、2万円位出せば、かなりりっぱなものが買える。特に、スノーハイクなどを考えると、登山靴があると心強
いし、何でも一応こなせる。買うときはオイルも一緒に買うこと。買うときは、厚手の登山用ソックスを履いて、足の指先に余裕のある物を買うこと。ソックス
も忘れずに。
2.ザック 縦長のアタック・ザックで60リットル以上の
物。ただし、100リットルなどという化物はいらない。また、縦に長すぎると不安定なので、肩幅くらいの幅で、頭にザックがぶつからない位が良いだろう。
アウトフレームのザックは持っている者は仕方が無いが、フレームの先をぶつけて転落した等の例も多いので購入しない方が良い。安い物で8千円位、高くて3
万円位。防水はあまり効かないので、ザックカバーも併せて購入しよう。(2千円位)
3.ヘッドランプ 必ず購入する。両手が使えるので便利。
2千円位から。釣具店でも安く売っている。
4.シュラフ どのようなものでも良いが、「オールシーズ
ン」は暑くて使えない。「夏用」の方が小さいので良いだろう。安いものをトポスなどで見つけられたらそれでも良い。過去には2千円位であった。高いもの羽
毛なので、小さく・軽く・暖かい。安いものはダクロンなので、逆に大きく・重く・・・というのが相場である。一般の登山用品店では、安くても6千円くらい
している様だ。
5.雨具 雨具はできれば「ゴアテックス製」のレインスー
ツ(セパレート)を買って欲しい。(1万6千円〜3万円)下界の感覚では高いのだが、山では雨は上から降るとは限らない。今の所、完全に濡れずに蒸れない
様な雨具は存在しない。しかし、ゴアの雨具はそれに近い。ポンチョは、稜線で風にあおられると役に立たない。似ているからといって「ハイパロン」や「エン
トラント」の雨具を使うと、大変に暑く、ダイエットスーツを着ている様である。汗かきの人は、雨よりも汗で濡れる。ゴアのきれいな色の雨具を買えばスキー
でも使えるから、できれば買う事をすすめる。もし、どうしても金が無い人は、ビニールをかぶったり、ゴミ袋をかぶる事になるが、かなり強靭な体力がいる。
雨で濡れて風に吹かれることが無雪期の山では最も危険であるので、雨具はきちんとそろえたい。
6.食器 アルマイトで3つ位の食器がセットになったもの
が一般的。800円位からある。人によってはステンレスの小鍋(コッフェル)セットを食器と称して、たくさん食べる。ただし、火にかけられると言う点では
この方法も良い。「ナイフ・フォーク・箸などのセット」はありあわせのもので十分である。
7.ポリタン 水筒と言っても良いが、水を入れて運ぶ。1.5リットルか2リットルのものを購入すると便利。800円位。当面はジュースのペットボトルを洗って使える。
8.コンパス 地図とこれがないと困る。オリエンテーリン
グ用のものが一番使いやすい。(500円位から)
9.服装 基本的には何でも良い。ただし、Gパンは濡れゾ
ウキンとなって悲惨なのでやめた方が良い。過去には、これで夏なのに、雨に濡れた上に風にふかれて、疲労凍死した例が多くあり、ジーパンだけは避けたい。
本当は毛のものが良いと言うが、安いのはジャージである。(しかし、なぜか学園生はこれを嫌う)綿パンでも一応は良い。上着は千差万別だが、Tシャツは下
着としても便利である。(これ一枚でも歩ける)薄くも暑くも自在にでき、荷物にならない服装が一番である。もし汗かきの人にはオーロンのTシャツをすすめ
る。(2000円位)洗っても1時間で乾く。(鍋割山荘で売っているのが
良心的だ)
以下の装備は、あったら便利、という程度です。金のある
人が買って下さい。
10.スパッツ ロングかセミ・ロングが良い。3千円位。買う
ならばゴア製を。これでズボンのすそも汚れないし、石が靴に入りにくい。
11.個人用マット エアマットやウレタンマット。背中が石に
当たったりしないので便利だが、テントで場所をとるので時によっては迷惑マットとなる。
12.スタッフバッグ 要するに小物入れ。だが、防水も良い
し、便利である。組で2千円位か。
購入先・・・別に紹介料がもらえるわけではないが、次
の所が安い。
ザック・・・「ICI 石井スポーツ」(新宿・新大久保
など)での「モンブラン」などのモデルが一番安い。
靴・・・軽登山靴ならば、「山幸」(新宿など) 13500円 が一番安い。ただし、足にあわないとだめなので、履い
てみること。次に安いのは、「さかいや」(水道橋)のオリジナル「04」モデル 19500円あたり。秀山荘でも「SB−S」が2万円ちょうど位。ま
た、ブランドものだが「ザンバラン」の「フジヤマ」が都内で安売りをしているものも最近は見かける。
雨具・・・「IBS 石井スポーツ」(鶴見)でライトモ
デルが16000円で売っている。また、「バイオン2」なる新素材の製品も
バーゲンならば購入するに値するだろう。