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●「小麦畑の三等星」 ●萩岩睦美 ●りぼんマスコットコミックス ●全3巻 ●集英社 |
「小麦畑の三等星」というタイトルを見て、私は当時の「りぼん」(今のは知らないが)によく連載されていた少女漫画(田渕由美子とか小椋冬美とか高橋由佳利とか)と同系列のものに違いないと勝手に思い込んでいました。ところが昭和56年10月号から連載を始めたこの作品は、当時の「りぼん」としては珍しいSFマンガでした。雑誌の扱いからすれば、人気もかなり高かったはずです。 |
主人公の羽坂碧穂(はねさかあお)は中学二年生の女の子。彼女はちょっと変わっているところがあって、おヘソがありません。頭には、髪の毛で隠された不思議な図形が描かれています(小さなものだと思いますが)。彼女は小さな頃から頭の毛が逆立つと、近所の小麦畑の小麦たちの声が聞こえてました。ある日、同級生の岩崎康太郎と学校でふざけていて3階の窓から落ちてしまった碧穂は、不思議な力に護られてかすり傷程度で済みます。この事件をきっかけに、碧穂には不思議な力が使えるようになりました。燃え盛る火事を消し止めたり、物を自由に動かしたり、人を死に至らしめたり……。碧穂は、ちょっとした誤解から康太郎に「あんたなんか死んじゃばいいのよ!」と言ってしまいます……寝癖で髪の毛を逆立てたまま。まさかそんなこと(康太郎が死ぬ)が実際に起こるはずが無いと自分に言い聞かせていた碧穂でしたが、その日、岩崎康太郎は死んでしまいます。
序盤はエスパー少女のドタバタ学園生活風の進行でしたが、康太郎の死からストーリーは一歩先へと進みます。康太郎をその能力で生き返らせた碧穂は、その行為により普通の女子中学生の生活から引き離されていきます。マスコミや周りの人々の好奇の目。碧穂の力を悪用しようとする国際的犯罪組織。しかし、それらの事件の中、康太郎は次第に碧穂のナイトとしての立場をとることになります。徐々に周りの騒ぎも沈静化し、碧穂の生活も元どおりになりつつありました。ただ、留年してしまったことと、康太郎が高校生のように育ってしまった事以外は。 |
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ストーリーは、このあたりから次の段階へと進んでいきます。碧穂の出生の秘密や小麦畑との関わり、そしてその超能力の秘密が徐々に明らかになります。碧穂の秘密……彼女は人間ではありませんでした。(おヘソがないんですから)
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萩岩睦美(はぎいわ・むつみ)
デビュー作/「はとポッポが歌えれば」1978年
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