2002.4.1改


学生の海外(国内)フィールドワークの実施についての安全ガイドライン

 山中速人ゼミ(山中が担当する科目でフィールドワークを実施する場合もふくむ)では、積極的に学生の海外(あるいは国内)でのフィールドワークを奨励している。それは、文化や生活条件の異なった地域の人々と接触し、コミュニケーションを交わすことが学生のこれからの成長と学問的な研鑽にとってきわめて有意義であると信じるからである。
 しかし、当然、海外(国内)でのフィールドワークでは、キャンパスでの活動と異なり、予期せぬ危険や事故に遭遇する事態が生じることを考慮しておかねばならない。とりわけ、個人あるいは少数のグループによるフィールドワークでは、事故や犯罪から自己の安全を自ら守り、また、万一、そのような事態に遭遇した際には、できる限り被害を最小限にとどめ、速やかに危険から逃れることが求められる。そして、そのようなことができるかどうかは、自己責任の原則にもとづく当事者の判断と行動以外にない。もちろん、教員は安全に活動ができるよう、できる限り事前のアドバイスや指導を行うことに吝かではない。しかし、教員は、たとえ現地に同行していたとしてもフィールドワーク中の学生個人の安全の確保に全面的に責任を負うことはできない。
 山中ゼミにおけるフィールドワークは、あくまで学生個人の自主性と自己責任の原則にもとづいて行うものであるということをここであらためて確認するものである。
 山中ゼミでは、ゼミ参加者募集の段階で、学生が海外(国内)フィールドワークを行うことを奨励している。しかし、同時に、それには危険や事故などの可能性が伴うことも事前に十二分に周知している。また、ゼミ加入後も、調査計画段階で繰り返しそのことに注意するよう学生に喚起している。
 しかし、昨今の海外旅行をめぐる環境の変化はきびしいものがあり、海外での学生のフィールドワークに際しても、より一層の注意と自覚が求められている。そのような情勢に鑑み、上記のような学生の自己責任の原則の上に立って、より学生の安全と研究活動の増進をはかるためにガイドラインを設けることとした。このガイドラインは、あくまでも事前にできる最小限安全対策にすぎない。ゼミ学生諸君が、このガイドラインの精神を理解し、より一層安全への取り組みを怠ることなく、すぐれたフィールドワークを行うことを願ってやまない。

関西学院大学総合政策部教授
山中速人


ガイドライン条項


フィールドワーク出発前
1 独自にフィールドワークを行うことを計画する学生は、その内容と計画を事前に教員に申告し、さらに、詳細な行程計画書を教員に提出しなければならない。その際、教員の指導と助言を得て、安全対策上、必要があれば計画を修正しなければならない。
 行程計画書は、少なくとも以下の条件を満たしていなければならない。
 1.利用する交通機関と便名(信頼できる交通機関であること)
 2.宿泊予定施設の名前・場所および連絡方法(安全が確保できる施設であること)
 3.行動予定(安全に配慮された調査内容であること)
 4.予算(無理のない予算が用意されていること)
 なお、現地受け入れ人(カウンターパート)がいることが望ましい。(カウンターパートがいる場合は、名前、職業と連絡先を明らかにすること)

1−2教員が計画するフィールドワークに同行する場合は、教員から提示された上記の諸項目について事前に十分に把握し、その計画の詳細を保護者(成人の場合でも、学費等を負担し、当該のゼミ生に対して実質的な保護や援助を与えている両親等の方々)に知らせ、十分な了解を得ること。

2 調査対象地域について外務省等が提供している安全情報を確認し、可能な限り危険をさけるよう努めなければならない。とくに、観光旅行延期勧告(およびそれ以上のレベル)がでている地域への調査は原則として行ってはならない。また、教員は同様の地域へのフィールドワークに原則として学生を同行しない。

3 出発以前に必要十分な旅行保険に加入しなければならない。旅行保険は、万一の事態を想定して、少なくとも死亡、疾病、救援者派遣費用をカバーするものでなければならない。学生は保険加入について、教員から助言をあおぎ、さらに、保険加入後は、出発以前にその証書のコピーを教員に提出しなければならない。
3−2 教員が同行するフィールドワークの場合は、教員は上記の条件を満たす旅行保険を複数推薦し、学生に対して便宜をはかるよう努める。

4 フィールドワークに先立って、学生は十分に健康状態を確認し、不安がある場合は、出発をみあわせなければならない。また調査地域における伝染病等の感染を回避するため、必要に応じて予防接種を受けておくことが望ましい。

フィールドワーク期間中
5 フィールドワーク期間中、学生は現地から定期的に家族等と連絡をとり、旅行や調査の進捗を報告し、安全の確認を確認を受けなければならない。また、事前に、学生は教員に対して、フィールドワーク中に連絡をいれる当該の家族等の人物の氏名、本人との間柄、連絡先を通知しなければならない。

5−2 家族等との連絡に際しては、かならず次回の連絡の日時、場所、方法を明らかにしておくこと。また、万一、連絡が不通になった場合に備えて、捜索開始を始める日時を事前に双方で決めておくことが望ましい。(たとえば、×月×日までに連絡がなければ捜索を開始する、といった申し合わせを交わしておく。)

6 万一、戦争や内乱、人質事件など軍事的なトラブルに巻き込まれた場合に備えて、国際人道法等で認められた文民の諸権利を知っておくこと。出発に際して、ゼミでは、国際人道法の抄訳を学生に配布しているのでそれを目を通しておくこと。

フィールドワーク終了後
7 調査終了後、学生は、すみやかにその旨を教員に報告しなければならない。

8 フィールドワーク終了後、帰国してから体調が崩れたり、発病したりすることもあるので、帰国後の健康状態に注意し、変調があれば、医療機関に相談することが望ましい。とくに感染症については注意が必要である。なお、これらの疾病の治療には、旅行保険が適応される場合が多いので、旅行保険の定款などを十分に把握しておくこと。

学業との関連
9 このガイドラインを遵守しない学生のフィールドワークから得られた成果は成績評価の対象とならない。

10 安全についての判断の結果、フィールドワークが中止された場合は、教員は成績評価で学生が不利にならないよう配慮すると同時に、フィールドワークにかわる別の課題と取り組むよう指導を与えるものである。

宣誓と署名
11 学生は、フィールドワークの実施にあたっては、このガイドラインを遵守することを宣誓し、署名することを求められる。また、未成年の(あるいは成人の場合でも心理的経済的な保護を実質的に与えている肉親や保護者がいる)場合は、このガイドラインの熟読と承認の上、本人の署名とあわせてその者(あるいは保護者に相当する者)の署名を求めるものである。



付記
海外危険情報、伝染病情報については、外務省「海外危険情報」一覧、成田空港検疫所ホームページ(厚生省) に詳細が公開されている。また、これらの情報を含む関連ホームページへは山中のホームページにリンクが張ってある。
国際人道法については、ゼミにリーフレットを用意している。



宣誓・署名


 
学生の海外(国内)フィールドワークの実施について、「学生の海外(国内)フィールドワークの実施についての安全ガイドライン」に従い、フィールドワークを行う学生の自己責任において活動に参加することを確認します。学生がフィールドワークの際に遭遇した事故や犯罪などのトラブルについて、関西学院大学およびゼミ担当教員はその責任を負うものでないことを認めます。


本人署名               年月日            

保護者(相当)署名               年月日
           

・フィールドワーク期間中、学生本人が連絡を入れる家族等の人物について
氏名                      
本人との関係                           
連絡先住所
連絡先電話番号
Fax番号