我が振り直して〜北朝鮮と日本と〜

2002.12.16



テレビでは
 テレビは朝から北朝鮮の話題で持ちきりだ。おぞましい北朝鮮の抑圧体制、金正日の人民をかえりみないゴージャスな生活、難民たちの悲惨・・・。テレビ屋さんたちは、つい最近まで見向きもせず、知りもしなかった北朝鮮を訳知り顔で解説しながら、他方で「北」を擁護してきたと、社民党や自民党の有力者たちを指弾している。よく言えるもんだよね。自分だって、難民の「な」の字も知らなかったし、北朝鮮のことなど、何の関心もなかったくせに。
 インターネットのフォーラムへの書き込みやマスメディアの報道をみていると、日本人の北朝鮮嫌いはちょっと病的なんじゃないかと思えてくる。つらつら考えるに、日本人がこんなにも北朝鮮を嫌う背後には、近親憎悪の感情が潜んでいるのではないかと私は睨んでいるんだ。

近親憎悪
 だって、日本と北朝鮮、この2つの「国」はとっても似ているじゃない。ちょっと、挙げてみようか。
 まず、国家の頂点に神秘的にして侵すべからざる神格化された存在をいただいているというところ。もちろん、日本は天皇、北朝鮮は金日成・正日親子。
 次に、政治リーダーが世襲の二世であること。小泉さんも、金正日さんも、お父さんの七光りだものね。
 次に、この2つの国の両方とも、冷戦構造の上に惰眠をむさぼっていた結果、冷戦崩壊後、経済がにっちもさっちもいかなくなってしまったというところ。日本はアメリカがいつまでも可愛がってくれると思い、構造改革をほったらかしにし、北朝鮮はソ連や中国がいつまでも援助してくれると思って、改革開放を怠ったということだよね。
 北朝鮮が経済開放特区なんてのをつくっているんだって!小泉さんが構造改革特区なんてのを作って、どっちも失敗しているとこなんてまったく瓜二つじゃない。
 日本人が北朝鮮を毛嫌いするのは、実は、自分にとてもよく似ているからなんだよ。北朝鮮を見ていると、自分の醜い過去の姿や現在の愚かさが写し鏡のように反射して見えるからじゃないのかな。

国際社会から見れば
 日本人は、北朝鮮の人権弾圧を批判するけれど、日本政府だって国際社会じゃ人権問題に消極的な国として結構有名なんだよ。悪名高い代用監獄制度(留置所を監獄代わりにつかっていること)を続けていたり、難民申請中の外国人を強制収容したり、日本政府の人権感覚のなさが国際社会からずいぶん呆れられていることを日本人の多くは知らないんじゃないかな。ほかにも、従軍慰安婦問題や太平洋戦争下の捕虜虐待に対する補償の問題などについて、日本政府は犠牲者の補償要求を無視し続けているしね。
 こういう日本政府が北朝鮮に対して拉致事件の解決を叫ぶのを国際社会はきっと冷ややかに見ているのかもしれないよ。だから、拉致被害者やその家族の人たちの願いをかなえるために、国際社会からの援護射撃が大切だと思うんだったら、すこし遠回りでも、日本政府はこれまで国際社会でみせてきた「人権に冷淡な日本」という顔を払拭するところから始めた方がいいかもしれない。ナショナリズムに駆られて大声をあげても、独りよがりと思われるだけだよ。アメリカ政府のようにね。

我が振り直して、他人の振り直せ
 もちろん、私がいいたいのは、よく似ているから北朝鮮の現実を大目に見てやろうというのじゃない。むしろ、日本の問題を見つめ直すことによって、北朝鮮の問題も見えてくるということなんだ。「人の振りみて我が振りなおせ」、というのとも少し違うかな。いうならば「我が振りなおして、他人の振りなおせ」というところかな。