アジア稲作社会の映像資料


『出版ニュース』

 以前、「アジアの社会」という放送大学番組の制作で東南アジアの稲作社会をビデオクルーといっしょにロケして以来、アジアの農村生活をビデオ記録し続けている。しかし、収録した映像の発表に頭を悩ませている。というのも、書物による出版では写真しか使えないし、まして予算の少ない学術出版は掲載できる写真の数も限られている。

 といって、ビデオソフトを出版するとなると、これも大変。業界で通用する画質の水準を満たすには機材もスタッフも大がかりになってしまう。そんな予算はないし、また、インドネシアやミャンマーのように取材に神経質な政府もある。

 いろいろ考えたあげく、観光ビザで持ち込める家庭用の8ミリビデオや小型デジタルビデオカメラの画質でも十分耐えるCD−ROMに行き着いた。そして、パソコンにビデオ映像をデジタル変換する装置を組み込み、収録してきたビデオ素材をデジタルに作り替え、文字や写真も表示できるよう工夫し、マルチメディアCD−ROMを試作した。

 これがなかなか具合がよい。論文を軸にして、カラー写真やビデオ映像など縦横に挿入できる。カラー写真などはほぼ無制限だ。以来、アジアの農村映像だけでなく、ハワイをはじめフィールドで撮影した写真やビデオなどをすべてデジタル保存するようになった。デジタル映像を利用することで、研究・調査方法も変わってきたし、作品化のノウハウも蓄積されるようになった。

 ただ、本格的なCD−ROM出版となると、手がけてくれる出版社はまだまだ少ない。突き当たる壁は、書籍以外に無関心な学術系出版社の保守性だ。そこで、興味のある出版社は手を挙げてもらえないだろうか。想像するほどコストもかからず、大きな可能性を秘めていることが分かっていただけるのだが。詳しい情報は、http://www.asahi-net.or.jp/~cr1h-ymnk/ でも公開している。