並 三 ラ ジ オ 3 題





 中高年の真空管ファンにとっては、懐かし

いST管による並三ラジオです。これに継ぐ

スピーカーも角形ヨークスピーカーが似合い

です。マグネチック型なら尚いいですネ・・

 ところが、そんな事よりも並三ラジオ自体

が今では自作しようとしても、部品の入手が

困難になってしまいました。これから作るの

ならば、部品や回路などにひと工夫しなけれ

ばならないでしょう。






 そこで 部品入手可能 な並三ラジオを考えてみました。


1.並三コイルはバーアンテナで2次コイルを再生用にしてポリバリコンと組ませます。

2.ただ再生用のバリコンはプレートの高電圧が掛かるのですが、絶縁と容量調整を兼ねてC

  を入れておけば、ポリバリコンが使えます。またバーアンテナの絶縁にも不安があるので、

  やはりCは入れておいた方が良いでしょう。

3.6D6は12BD6(12BA6)、6ZP1は12AU7のパラにする事とします。出力

  管6ZP1の出力は約1Wですが、12AU7も電圧増幅管のわりに多少馬力があり定格目

  一杯の動作では、0.8W位は出せます。このラジオでは軽めの動作にしていますが、それでも

  260V動作で0.5W程度の出力が期待できます。

4.ヒーターはどちらも 0.15Aなので直列にして、前章と同様にフイルムコンデンサーで点火し

  ます。電圧は24.6Vになりますが、コンデンサーの値は同じでかまいません。

5.電源はトランスレスか、小容量の絶縁トランスをダイオードで整流します。


     最終的に以下のような回路になりました。





 東京杉並ではバーアンテナだけで外部アン

テナなしでも、ほとんどの局が受信できまし

た。また1mほどのビニール線を継げば、う

るさいほど鳴ります。出力的には12AU7

のパラでも十分で、そんなに不足には感じま

せんでした。初期のラヂオでは、並四にしな

ければ十分な感度が得られなかった事を考え

ると、ST管からMT管へと球の進歩が実感

出来るセットではないでしょうか。なお使用した絶縁トランスは 10Wの物だったので倍圧整流で

も 25mA は取れますので、ヒーターを工夫すればもっと力のある出力管も使えるでしょう。

 と言った事で、このセットは全て現在入手可能な部品で組み立てることが出来ました。




 それでも、やはり 球が3本立っていなければ並三らしくない!と、お考えの諸兄も

いらっしゃるかと思い、次のようなセットを作ってみました。


 いま秋葉原を根気よく歩けば、一部の並三ラジオ用の部品は何とか手に入るようですが、単連

バリコンとMT整流管の5MK9は入手困難のようです。そこでバリコンは小型の2連バリコン

を使い、整流管は出力管で代用してみました。三極管接続があるのだから二極管接続も出来るの

ではないか、という安易な発想からです。しかし、この方法はかなりイレギュラーなやり方です

し、他のセットについても同様ですがどのような結果になったとしても、私は一切の責任を負い

ません
ので、追試の場合はあくまでも自己責任の上での参考とするようにして下さい。また手持

ちが無くて新規購入するのであれば、どうせですから正規の整流管で入手が比較的容易な6X4

の使用をお薦めします。




 この6AQ5を整流管に使ったセットは、製作してからたびたび通電していますが、今のとこ

ろ何のトラブルも無いようです。しかし長時間動作の後に再度出力管として使えるかは不明です

ので、ダメになっても良いと思って下さい。さらに中古の4M−P12や6M−P20が手元に

数本あったので試しに使ってみたところ、管の中でバチバチと放電したり、電源を入れたとたん

に電極がビリビリ振動したりしてしまいました。これらの比較的低電圧で動作する球は整流管に

は使えないようです。


 真空管が三本並んだラジオが出来ました。

これならば正真正銘の並三ラジオと言えると

思います。また出力管の6AR5も品薄気味

なので、今は6AQ5に差し替えています。

最適動作ではないのですが、差し替えただけ

でそのまま動作します。ただし、最大定格が

違うのでその逆は不可です。


 ところで並三トランスと呼ばれている電源トランスの電流容量は6AR5には不足気味です。

ST出力管の6ZP1ならば1.5W出力時の消費電流は約20mAなのでこれで十分ですが、6AR5

は3.4W時に40mA以上の電流を消費します。本機では並四トランスですが、それでもしばらく使っ

ているとトランスが熱くなるので、当初はこの変な整流管のせいかとも思ったのですが、考えて

みれば電流容量が目一杯だという事に気が付きました。そこで6AR5のカソード抵抗を増やし

て、消費電流を減らすようにしました。市販の並三トランスを使う場合は、本機のように高めの

カソード抵抗にするほうが良いでしょう。さらに、第二グリッド電圧もなるべく抑えるようにし

て下さい。また整流効率が下がると出力電流は増えるので、整流管の次に50オームの抵抗を入

れて、わずかですが出力電流の増加を計りました。






 6X4を使用する場合


 6X4は両波整流管なの

で、それを生かすためにダ

イオードを2本追加してブ

リッジ整流としたら、ハム

音が少なくなって良いと思

います。(未実証)


 また上記のような並三用電源トランスの容量不足の問題も、ブリッジ整流とする事で、半波整

流より4割ぐらい直流電流が増えるらしいのですが、比較測定した訳ではないので確かな数字は

わかりません。ただ、半波整流は半サイクル分の電流しか流れないことで、直流磁化により鉄損

が増加して発熱に至ると考えられ、ブリッジ整流にすればトランスが熱くなる問題はある程度抑

えられると思います。




ST管並三ラジオの代用管について


 ST管式の並三ラジオの代表的な構成は6C6−6ZP1−12Fですが、球の入手は非常に

難しくなっているので代用策を考えてみました。




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