小 出 力 管 特 性 図




 ラジオを製作するときにトランスレス等で構成することは、費用やスペースなどから考えても有効な手段

ではないでしょうか。トランスレスで得られる100V程度では感度が上がらないと思われるかも知れませ

んがそれはST管時代の話で、現在ではテレビ用に使われていたgm10.000 前後のHigm管がゴロゴロ

しています。それらはゲインが高すぎて私のような素人には扱い難いくらいですが、動作電圧を下げて使え

ば(特にEc2を下げる)あるていどgmも下げられてラジオにも適した検波管になります。

 一方で低周波増幅段では、やはり費用やスペースの面で複合管がいいと思うのですが、100V程度で使

われている球種は6BM8ぐらいしか見当たらない状況です。そんなに音量はいらないとか、あるいはもっ

と欲しいと思っても複合管では他に選択の余地がありませんでした。使えそうな球はあるのですが100V

前後での動作例が発表されていないので、割とシビアな動作点が要求されるラジオ用でのシングル動作では

使いようがなかったのです。

 私の手元にはこれらの小出力用として使えそうな複合管が何種類かありましたので、一般のトランスレス

等で得られる120Vでの特性を測ってみることにしました。ただし球は全て中古で、そのうえ真空管試験

機などは持っていませんので、電源回路等を仮組みしての測定になり、あまり正確な数値とは言えませんが

ラジオ用程度なら参考になるのではないかと思います。



6 A W 8 A(P)

6AW8A(P) Ec2 120V

\Ec1
Eb\
0 V-1V-2V -3V-4V
120V28mA16mA7mA2.5mA 0.6mA
60V25mA16mA7mA2.5mA 0.6mA
30V23mA15mA7mA2.5mA 0.6mA
15V20mA13mA6mA2.5mA 0.6mA

Eb120V RL12K Ec1 -1.5V Ib11mA Po450mW
Rk130ohm
 〃  RL 7K   〃   〃  Po370mW



 テレビ用の映像増幅管なので出力は少なめですが、動作点付近のgmは10.000近くあり、1V強の入力で

フルパワーになるようです。これだけ高感度で、その上ソケット周りの混み合う複合管ですから高周波段で

動作させると何かと手を焼きそうですが、低周波の出力管としてなら便利そうな球です。さらに三極管部も

muu70、rp17.5kと12AT7相当の使いやすい球です。



6 A B 8 (P)

6AB8(P) Ec2 120V

\Ec1
Eb\
0 V-2V-4V -6V-8V
120V36mA26mA17mA11mA 6mA
60V36mA26mA17mA11mA 6mA
30V36mA25mA16mA10mA 6mA
15V30mA21mA14mA8mA 5mA
6V15mA15mA11mA

Eb120V RL5K Ec1 -4V Ib17mA Po540mW
Rk240ohm 




 始めからテレビ用の出力管として設計された球だけあって、肩特性も良好で負荷抵抗もgmも平均的な値

となっています。一番の特徴はヒーターが省エネタイプとなっていて、6.3V0.3Aと上記の6AW8A

の半分の消費電力で済みます。その代償として五極管と三極管は共通カソードになっています。(おそらく

1本のヒーターで点火しているのでしょう)三極管のmuuは20でrpは発表されていないようですが、

gm 1.9なので三定数の法則式から約11kと推測されます。ところで共通カソードでは「三極管とバイ

アスが違うと何かと面倒」と思われるかも知れませんが、抵抗接続データ表をみると(三極管部は測定して

いませんでした)Ec1 −4VでもIbは0.5mAと推測されプレート負荷を100Kとすればちょうど

良いようです。また、この時のカソード抵抗は両ユニットの合計値で計算します。



1 8 G V 8 (P)

18GV8(P) Ec2 120V

`Ec1
Eb\
0 V -4V-8V -12V-16V-20V
120V170mA120mA80mA50mA 27mA11mA
60V140mA105mA75mA47mA 23mA9mA
30V110mA95mA70mA45mA 22mA8mA
15V65mA65mA55mA40mA 23mA8mA

Eb120V RL1.2K Ec1 -11V Ib55mA Po2.1W
Rk200ohm 




 やはりテレビ用の複合管16A8(6BM8のヒーター違いの同種管)に類似で、用途も同じ垂直偏向出

力管として造られた球です。五極管部は16A8より低電圧動作向きになっているようで、複合管なのにト

ランスレス用出力管30A5並みの出力が取り出せます。動作点が−11Vと中途半端なのは最大プレート

損失が7Wに抑えられているからで、これは複合管なので致し方ないところですが、ラジオで2W出せれば

音量としては十分ではないでしょうか。三極管部は muu50、rp7.6Kで6AQ8に近い特性です。

またヒーター電圧が半端だと思うかもしれませんが、例えば6AU6と組み合わせて0−V−2とし、ヒー

ターを直列にすれば 24V0.3Aとなって市販の小型トランスが使えます。ヒーターは4番5番ピンに引

き出されていますが、実物でも4番ピンが三極管側ですので、こちらを6AU6のヒーターと接続し、中点

として接地すれば良いでしょう。OPTは既製品に600オーム用がありますので、二次に16オームを繋

げば1.2Kとして使用出来ます。



以下は複合管ではないのですが、120Vでの小出力用に使えそうなので特性を採ってみました。

6 M − P 2 0

6M−P20 Ec2 120V

`Ec1
Eb\
0 V -2V-4V -6V-8V-10V
120V70mA53mA36mA23mA 13mA7mA
60V65mA44mA32mA20mA 11mA6mA
30V60mA43mA29mA18mA 10mA5mA
15V50mA39mA28mA18mA 10mA5mA

Eb120V RL5K Ec1 -4V Ib36mA Po1.1W
Rk110ohm 
Eb120V RL3.5K Ec1 -5V Ib29mA Po1.1W
Rk180ohm 



 日本でテレビ用に開発された音声出力管で、本来は185Vで3W以上は出せる球です。テレビ用の球は

180V前後の中途半端な電圧での動作例が多いのですが、大体が低電圧向きのようなので、120Vでも

1Wぐらいは出るのではと思い特性をとってみました。動作例は二通り計算してみたのですが出力も同じな

のでRL5Kのほうが使いやすいでしょう。3.5Kの場合はOPTに7Kを用い、2次に4オーム(例え

ば8オーム2個を並列)スビーカーをつなげばOKです。




4 M − P 1 2

4M−P12 Ec2 120V

`Ec1
Eb\
0V-2V-4V -6V-8V-10V
120V35mA26mA18mA12mA 7mA3mA
60V35mA26mA18mA12mA 7mA3mA
30V35mA26mA18mA11mA 6mA3mA
15V28mA22mA16mA10mA 5mA3mA

Eb120V RL5K Ec1 -5V Ib15mA Po0.6W
Rk330ohm 




 やはりテレビ用の音声出力管で、手元に何本かあったのでついでに測ってみました。単独の出力管なのに

出力は0.6Wと少く、その上ヒーター電圧も4.7Vと中途半端なので、通常ではあまり使い道も無さそう

ですが、テレビ用の球はヒーター電流値を揃え直列にして点火するようになっている為、このような規格の

球も多いようです。また検波管になりそうな球の中にも同様に半端なヒーター電圧の球があるので、それら

と組み合わせたら面白いかも知れません。



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