ところで、真空管アンプを自作する者にとって、真空管OTLは一度は組んで見たいアンプなのですが
高電圧小電流を得意とする真空管の特性に相反する動作が要求されるので、どうしても規模が大きくなっ
て、なかなか手軽には作れません。またたとえ製作したとしても、電熱器並みの発熱に足を引っ張られて
冬季以外の出番は少なくなりがちです。しかし、その音質はOPT付アンプとは一線を画すものがあり、
(どちらが良いなんて事は私には分かりませんが)ある高名なオーディオ評論家の大先生は、「OPT付
のアンプなんぞは羊頭狗肉である!」とまで述べています。そのように言われても、多くの方にとって大
規模アンプは手軽に製作出来ないのも事実ですから、なるべくOTLアンプのエッセンスを残しつつコン
パクトなセットを組み上げる為には、MT付SEPPというのが最適な組合せではないかと思います。
そのような意味もあって、どうせなら差動電源を備えた本格的なSEPPにしようと思ったのですが、
市販の電源トランスではこれに適合するトランスがなかったので、春日無線に特注して各段に最適な電圧
が得られるようにしました。特にドライブ段の電源は、平滑ケミコンを二階建てにして500Vを超える
電圧を供給する事で、ドライブの難しい6AS7Gをフルスイングしています。(手軽に製作出来るよう
にと言っておきながら、特注トランスを使ってしまったのですが、MT付でもここまでやれるという事を
試してみたかったのです。)
という訳で、以下のような回路になりました。一見すると電源が複雑そうですが、上下の出力用の電源
とドライブ用およびバイアス電圧を取り出しているだけです。
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