5 球 短 波 受 信 機






 前章に続いての5球スーパーです。左の写真を見

て「見かけは通信型受信機風だけど、回路図を見た

らただの5球スーパーだった。」なんて言ってる人

もいるかも知れませんが、本機は短波受信機として

一通りの付属機能を揃え、また使い勝手や感度を上

げる工夫もするなど、内容外観とも多少のこだわり

を持って製作してみました。

 まず始めに考えたのは、どのような回路になるにしても気の利いたケースに入れるということでし

た。これは見た目だけの事ではなく使い勝手にも影響してきますし、前章のセットのようにシャーシ

がむき出しでは、長く大事に使いたいという愛着も湧かず、結局しばらくしてバラしてしまう事にも

なりかねません。そして使い勝手で大事なのは、周波数を直読できるようにする事です。他章で紹介

した0−V−2は、バーニヤダイヤルを使ったのですが、これは減速機能だけで目盛りは目安にしか

なりませんでした。本機では糸掛けダイヤルで減速し、バリコンに取り付けた円板に周波数目盛りを

手書きしています。目盛りが十分に校正された受信機なら測定器の代わりにもなります。







 まず、本機のコイル、バリコン、トリマー、IFTはケースの破損したメーカー製のトランスレス

ラジオから抜き取った物です。ちなみにそのラジオの残りの部品は前章のセットに流用しました。周

波数変換段のコイルの切り換えが少し変わっているのは、元のラジオの回路を踏襲したためです。次

のIF段はHigm管の使用も考えましたが、6BA6でも十分な利得があるので標準の回路のまま

です。(実は6BZ6を使ってみたのですが、見事に発振してしまいました。)またAF段も一般的

な6AV6にしました。利得を上げる為に6AU6を使用する場合もありますが、一段で300倍近

い利得を稼ぐと、ノイズや発振対策などで悩まされそうなので見送りました。6AV6でもミューは

100もあり、三極管の中では高利得の球です。

 そして出力段なのですがここは改善の余地がありそうです。よく使われる6AR5は、出力は手頃

なのですが今となってはあまりに低感度です。高感度の球ではテレビ用の6CL6が最適なのですが、

さほどポプュラーではないので、同様に高感度でgm11,000をほこる6BQ5を採用することにしま

した。しかしラジオ用としては大出力なので電源も大食いで、標準の動作例のままでは、この球一本

で55mAもの電流を消費します。そうなると電源トランスの負担が厳しくなるので、一段下の動作

例 ( Eb250V RK240オーム RL7K Esig 3.4V Ib36mA Ic2 4mA Po4.3W )にしました。この出力管を

変更する事で6AR5使用時の約4倍の利得が稼げます。有名なトリオの9R−59Dの出力管には

6AQ5が使われていますが、これも低感度な6AR5を避けたものと思います。

 主な付属回路としてはANL、メーターアンプ、BFO、簡易プロダクト検波(以下プロ検波)な

どです。

 メーターは当初 470Kの抵抗に繋いだだけだったので、感度はさっぱりでした。かといって抵抗値

を下げると、せっかくの検波出力がメーターに消費されてしまいます。そこでFET1石の簡単なア

ンプをつけて見たのですが、これがなかなか具合が良く、ゼロ点は 22Kのソース抵抗(要調整)で設

定でき、最大電流はドレイン抵抗で制限されます。小信号にも感度よく応答し、なおかつ振り切れて

もメーターを破損する恐れがないのです。

 次に工夫したのはAM検波回路です。標準の6AV6の二極管検波では図のA点にプロ検波用の高

周波が出て来ないのです。私が参考にした回路ではIFTの一次側から出力を取り出していました。

しかしIF一段の本機では、ただでさえ選択度が不足しているので、これ以上同調回路を減らしたく

はありません。どうしてもIFTの二次側から出力を取り出したいものです。ダイオード検波なら簡

単ですが二極管も無駄にしたくはありません。そこで先に挙げた9R−59Dの検波回路を使うこと

にしました。これはダイオードによる倍圧半波整流回路で、今回の目的には最適です。本機の場合は

二極管部を生かして、ゲルマと二極管の混成による倍圧検波で、何か妙な回路になりましたが上手く

動作してくれてます。

 BFOとプロ検波には6BE6がよく使われますが、手持ちがあったので12AU7にしました。

今回のBFOコイルは自作したのですが、この回路ならトランジスター用のIFTでも使えると思い

ます。なお、BFOの切り替えSWに連動してAGCをOFFにしています。メーターも大きく振れ

ますが、先に述べたように壊れることはないのでそのままです。プロ検波回路は簡易型ですが、それ

でもBFOだけの場合よりは安定した復調が出来るようです。ただしSWを連動にした為AGCが利

かないので、滅多にない事ですが近隣局では歪んでしまいます。




 今後の計画としては、もう少し選択度を上げたいと思っています。はじめはQマルチを付けようと

思い、いくつか試してみたのですが(※1)上手くいきませんでした。そこでトランジスター用のメ

カフィルでも入手できたら集中型IFTにして見ようと考えています。


 左の図はトランジスター用のIFTを

使った集中型IFT方式です。

 なお結合用のCの容量を減らせば感度

が下がりますが、選択度は良くなります。

そのへんは要調整ですが、とりあえずは

左の方法でも今よりは混信を減らせると

思います。





※1 Qマルチは当初は図3の回路で試してみました。6BA6の第

  三グリッドとアースの間に5K程度の可変抵抗を入れ調節すると

  いうものです。1KはAGCのキャンセル用です。これでも一応

  の効果はあるのですが、(発振を強めればBFOにもなる)あま

  りにお手軽すぎるので、トランジスターを使ったもう少しまとも

  な回路をテストしてみました。

   しかしそのトランジスター式Qマルチは、IFTに接続すると

  ゲインが大幅に落ちてしまうのです。(同一周波数を発振してい

  ればハイインピーダンス回路となり、ゲインの低下はあまりない

  はずなのですが、)発振を強めるとBFOと干渉してビートが出

  てしまうし、またこの回路をIFTに接続すると同調がずれてし

  まう。等々といった具合で、この方式は使えませんでした。



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