この高域特性については安定性、帯域特性ともに問題ないのですが、先に述べたように出力を上げていく
と高域の歪率が中域よりも若干多くなっています。クリップ付近の動作なので音への影響は感じられません
が、前章前々章ともに見られる現象なので、打消し式シングルアンプに共通していて、どうやら定電流回路
由来の特性のようです。
これは定電流回路の高域インピーダンスが早めに落ちているのかも知れないので、直列に小型インダクタ
を入れたら改善するのではと思っています。つまり定電流回路は負荷の7kΩに対して交流的に並列になる
ので、このインピーダンスが下ると出力ロスとなり最大出力が下ってしまいます。前章までは流用OPTの
所為かと思っていたのですが、ARITOさんはチョークをDC負荷としたパラレルフィード式のアンプを
発表されていて高域の劣化は見られないので、上記のように思うようになりました。いつか小型のコイルを
入れて試してみたいと思っています。
後 記
私は普段は真空管ばかり弄っていて半導体回路は苦手だったのですが、本機は出力管以外は全て半導体で
構成するアンプになってしまいました。それは掲示板でお世話になっているARITOさんや、めのさんが
半導体を多用したアンプを数多く発表されていて、いつのまにか感化されてしまったようです。このお二方
は、発表される回路や発言を見れば分かる通りプロの技術者の方で、仕事現場で使うデバイスは今では半導
体オンリーですから当然ですが、趣味のアンプ製作でも半導体を縦横無尽に駆使されています。
もう何年か前の事ですが、めんさんの製作された真空管アンプを聴かせて頂く機会があって、見せて頂い
た回路図にも半導体が多用されていて、素人の私には理解出来ませんでした。そこで自身の勉強不足も顧み
ずに、「めのさんの使う回路は難解で分からない!」と、ほとんど言い掛りに近い感想をほざいたら、後日
なんと自筆の解説ノートを書いて見せて下さいました。それがフォールデッドカスコード回路というもので
これを写メして持ち帰り何度も読み返して理解に努めたのですが、自分のものにする為には、とにかく実際
に使ってみる事だと思い本機の前段に採用してみました。
謝 辞
以上のように、本機は特別なOPTをARITOさんに頒布して頂き、回路はめのさん自筆の解説ノート
で勉強させて頂きました。本機の完成は、このお二方のお力添えあっての事で、お二方にはあらためて感謝
申し上げます。
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