18GV8 三結SEPP VrU






  前章のローコストアンプは、メインで紹介

 したSEPPアンプの評判が今一つで、2番

 手で紹介したSRPPアンプの方が好評でし

 た。SEPPアンプの方は回路が複雑な割に

 は得られる出力が2.5Wしかなく、これで

 は魅力に乏しいと思われたようです。

  ただ出力管は三結でも5Wは得られる球で

 予算に拘らずに電源さえ強化すれば、僅かな

 変更で出力upが可能で、回路としては魅力

 的なのに惜しいと思っていました。

 そんな時に、トランスの自作で知られるK.ameさんのご厚意で、本機に最適の小型MT(マッチング

トランス)を巻いて頂いたので、魅力的なセットに変身させるべく18GV8SEPPアンプの高性能化

を計る事にしました。

 前章の回路との一番の変更点は電源電圧で、ケミコンの耐圧目一杯まで電圧を上げました。そこで巻線

電圧で320V程度の電源トランスが欲しいのですが、今回はなるべくコンパクトに組みたくて春日無線

にコアの小さめなトランスを特注しました。さらに本機ではヒーター巻線を2つ用意して、カソード電位

が高い上側のヒーターは高耐圧のCを介して接地するようにしています。それ以外では電源電圧が高くな

るのに対応して、バイアスが適正になるように初段と出力段のカソード抵抗を増やしています。という事

で以下のような回路になりました。




製作のポイント

 MTは先にも触れましたがK.ameさんのご厚意で巻いて頂いたもので、残念ながら既成の市販品には

相当品がありません。しかし旧タンゴのPP用OPT、CRD−8のように1次巻線の中間タップが切り

離せるモノなら、それを並列にする事で代用する事が出来ます。

 電源トランスは320V 0.15A、18V 1A×2という仕様です。もしも既成品のトランスを使

うのなら、ノグチのPMC−150Mが良いのですが、この場合は、6.3V+6.3V+5V=17.6V

としてヒーター点火すれば良いと思います。ただしその場合には、上側出力管のカソード電位がヒーター

カソード間耐圧200Vを越えてしまうのですが、バラック実験では異常無く動作していました。

 またケミコンの耐圧が450Vと半端なのは、特別なトランスを使っていてどうせ再現性に乏しいのな

らと、手元にあった基板取付用ケミコンを使ったからで、正規に取り扱われている規格品のケミコンなら

耐圧500Vのを使って下さい。


諸 特 性


 歪率データとしては高域がやや

揃っていないのですが、これは位

相反転をPK分割にして、そこに

打ち消しを掛けた為ではないかと

思います。リークマラードで利得

を稼ぎNFを多く掛ければ、もう

少し見栄え良くなると思うのです

が、低NFにしてはこれでも良い

特性だと思います。


無歪出力5.0W THD2.0% 1kHz

NFB  約6.4dB

DF=4.8 on-off法1kHz 1V

利得 14.8dB(5.5倍) 1kHz

残留ノイズ 0.55mV


 次に周波数特性で、優秀な亀印特製マッチングトランスのお陰もあり高域が100kHz以上まで素直

に伸びています。このトランス単体の特性では300kHz付近に山谷があったのですが本機では消えて

いて、よく見ると痕跡らしき箇所はあるのですが、山谷という程ではなく、わりと素直な高域特性になっ

ていると思います。全体の帯域としても10Hz〜120kHz/-3dBという広帯域な特性が得られました。




 最後に方形波応答をみると、僅かにオーバーシュートが見られるのですが、負荷解放でも意外と安定し

ていて、また先の周波数特性でもほとんど問題無かったので、補正は入れませんでした。




 今後の課題

 もしも本機を追試しようする場合はマッチングトランスの入手が問題になるのですが、これを業者など

に特注すると決して安くはありません。先に述べたように、市販のPP用トランスを流用するのが良いと

思うのですが、高価なOPTを使ったのでは当初のポリシーから外れてしまうので、多少の改造を加えて

でも廉価なOPTを使いたいものです。高電圧を扱うトランスの改造は危険を伴うので、本来ならば紹介

すべきではないのですが、本機の場合は出力コンデンサーにより増幅回路から絶縁されていて、マッチン

グトランスにさほどの高電圧は掛からないので、改造実験をしてみました。詳しくは次章をどうぞ。




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18GV8 三結 SEPP



MTトランス 
 測定レポート

代用マッチングトランス のF特性



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