というまんが家を知っていますか?
一般には、週刊少年ジャンプの連載作品であり、1990年代前半の恐竜ブームに先立って発表され大きな評判を呼んだ『恐竜大紀行』と南方熊楠の前半生記『てんぎゃん』で知られているようです。 でも、この他にもSFを中心に佳作を描いていて、私は好きなまんが家です。
サーチエンジンで検索してみたら誰もページを作っていないようなので、作りました。(1998年3月)
By courtesy of KISHI Daimuro the author. |
岸 大武郎『亜人戦記ゲンヤ』 カバーデザイン:野田新介 (この画像はフィクションです) |
→本ページの作品紹介 |
少年ジャンプ(集英社)の手塚賞出身です。当初は少年ジャンプ系の漫画雑誌で描いていましたが、後に秋田書店へ移りました。
私がこのまんが家を知ったのは、手塚賞準入選になった「21世紀の流れ星」のレビューでした。筒井康隆ら審査員の絶賛に近い言葉、受賞者発表のページに載っていたいくつかの場面、ともに印象に残りました。この作品が少年ジャンプに掲載されるかと期待していましたが、結局掲載されなかったようで、実際にこの人の作品を読んだのは「水平線にとどくまで」でした。
作品は、SF系のものは、古き懐かしきSFの味わいというのでしょうか、人によっては古くさいととられそうな未来世界を舞台にしていることが多いです。
(2001年3月27日) ご本人の Web サイトが公開されています。未発表作品などが収録されていて、必見です。URL は http://www.h7.dion.ne.jp/‾daimuro/。
リアルタイムで読んだ作品を中心に。要するに思い出話。当時、未読だった作品は入れていません。(2002年9月22日付記) ここにまとめているのは2000年分までです。2001年以降の作品は、作品目録の 【雑誌掲載作品】 にメモしているあらすじを参照してください。
手塚賞のレビューを読んでから気になっていたのに読めず、単行本『21世紀の流れ星 −岸大武郎短篇集1−』でやっと読めたので、それもあって心に残っている作品。
2083年7月1日。主人公は高等部ラグビー部のキャプテン安土彼方。彼とマネージャの早川理乃のクラスへ、飛び級で12歳の河瀬輝義(きぎ)が転入してきた。
一方、連戦連敗で次に負けたら廃部のラグビー部。よりにもよって次の相手校は無敗の強豪。
当日の試合、ラフプレイで退場になった彼方は、試合を見ていた輝義を出場させるが……
7月1日から7日の一週間、彼方と理乃の世界を流れ星さながらに駆け抜けていった輝義の物語。 派手な出来事はまったくなく、“僕らがいつか夢見た”未来の一情景を切りとった印象の作品。 次の「水平線にとどくまで」もそうでしたが、静止画の連続で動きを感じさせる描写力に魅せられます。 チューブカーに乗った主人公たちが静かに会話を続ける中、風景が移動していくシーンなど、特にいい。
これではじめて岸大武郎の作品を読みました。これもいい。
勉強ぎらいの少年、ときゆき。在宅教育を強要する母親から逃げだした彼は、電車で乗りあわせた少女と一緒に、海上都市へ向かう。
少女の父親は宇宙パイロットだった。一方、ときゆきの父親は海上都市を作ったという。
だが、海上都市の宇宙港で父親に再会して喜ぶ少女に対し、二等作業員だったときゆきの父親は亡くなっていた……
水平線にとどくまで街をつくるのだと息子に語った父親。そんな父を忘れられなかった平凡な少年の成長の物語、でしょうか。 この作者独特の苦みと、優しい余韻がいりまじった好編です。
一転、主人公も登場人物も大人ばかりのハードな作品。
22世紀、地球。第5氷期が到来し造山運動が活発化した世界では、科学技術も無力に等しく、人々はその日を生きるだけで精一杯だった。一方、地球外に作られた東アジア連邦のスペース・コロニーでは、地球上で生きのびた市民に対する選抜移民計画が進められていた。妻を失い、移民の対象からもれた主人公は、反逆に身を投じる……
これは、初読時、ラスト近くのシーンの意味がつかめなかった記憶があります。宇宙船に乗っていたのは本当に主人公の妻だったのだろうか、それとも主人公の錯覚だったのだろうか? その後何度も読み返して、今ではどちらに解釈してもいいような気がしています。
連載が早すぎた作品。単行本は恐竜ブームで有名になりました。
各話に登場した恐竜のデータは、作品目録(詳細版)の【雑誌掲載作品】を参照。
今ではすっかり有名と思われる南方熊楠の伝記。取材や描写が丁寧で興味深く読んでいました。 主人公の前半生が終わったところで、「第1章(単行本では第1部)完」のまま中断してしまいました。
熊楠の子供時代の特技と、そこからきたあだ名「反芻」がインパクトがあった作品。
(2000年6月補足) 中断の事情を少しうかがいました。「ロンドン編」として予告されていた第2部のシナリオはできているそうですが、作品の著作権が集英社に帰属しており、現在では作者と集英社の契約が切れているため、再開は無理なようです。
秋田書店へ移籍して初の?連載。 この頃の少年チャンピオンは曽田正人『シャカリキ!』などを楽しみに読んでいて、その中での思わぬ再会に、「なぜこっちへ?」といぶかりながらも喜んだものです。
現代(1993年)、東京のとある高校に通う留年すれすれの主人公、古田新矢。世界史の海野先生のところへ成績の交渉に行った彼は、考古学者で失われたムー大陸を研究していた先生に、スプーン曲げの能力をムーの原能力(マナ)だと見込まれる。そして、先生とその美人助手で超記憶の持ち主、美波ゆかりにひきずられるようにして、ムー大陸の探索へ旅立つ……
少年向け漫画の王道でしょうか。途中から登場するニヒルな少年冬夜(これまたマナの持ち主)に比べて、海野先生になかなか名前を憶えてもらえなかったり、戦闘で弱かったりと実にさえない主人公が、少しずつ成長していく物語……だったようですが、舞台がミクロネシアのポナペ島からイースター島へ移って敵との闘いが本格化してきたところで、作者の体力が続かなかったか、休載になり、中断してしまいました。
1話完結の読切シリーズ。構成や題材は藤子・F・不二雄の異色短編集や岡崎二郎の短篇に通じるものがありますが、読後感は、この作者独特の苦い味わいを伴うものが多かったように思います。
例えば、雑誌の読者層にあわせたと思われる社会人の主人公が登場する話は、社会人としてそろそろ考えこむ時期だった私にとって、読むのがきついことが多かった。
私が知る1998年時点の最新作。
ジャングルと化した地上でサルを狩る男たち、そのジャングルの中に散らばる現代建築の廃墟、そしてサルを買いとる宇宙服のようないでたちの人物たち。
宇宙服たちは緑斑症ウイルスを探索していた。ひとたび緑斑症ウイルスのキャリアが発見されれば、彼らが下等動物とも霊長類とも呼ぶ地上の人間たちをまきぞえにしても、一帯を浄化することをいとわない。緑斑症ウイルスは遺伝子を破壊し、人類を滅亡の危機に陥れているらしい。
そんな殺戮から逃れた女が一人。女は緑斑症に感染しており、さらに妊娠していた。そして女は男児を産み落とす。その赤子は人ならぬサルの顔を持っていた。一旦は赤子を殺そうとした母だったが、育てることを決心する。つけられた名はゲンヤ。
母の死、育てのおじいの元での成長、そして盲目の少女ヒトミとの出会い。ヒトミの目と彼の顔を治してくれるという迷い月をめざして、少年ゲンヤの冒険がはじまった。謎めいたサル撃ちのトウタやさまざまな人々と出会う中で、ゲンヤの存在は世界を揺り動かしていくことになる……
乱暴に言ってしまうと、シビアな『未来少年コナン』(アニメ版)でしょうか。明るい野生児コナンは屈託なく物語を切り開いていきましたが、本作の主人公ゲンヤはその異形ゆえに人々から嫌われ警戒される存在です。一方で、破滅に瀕しながらも生き続ける世界、天空にかかる第二の月である迷い月、そこから傲然と地上に干渉する人々、錬命学会、ゲンヤの存在の意味――少しずつ解き明かされていく設定は、映画を思わせる緻密な絵とあいまって、壮大な物語を予感させてくれるものでした。
残念なことに、掲載誌の休刊で(おそらく)中断してしまいました。かなうものなら、どこかで再開してほしい作品です。 前例をあげるのは失礼かもしれませんが、例えば星野之宣がヤングジャンプで『ヤマトの火』(1983) を中断した後、コミックトムで構想を改めて長期連載『ヤマタイカ』(1986〜1991)として完結させたことがあります。
岸大武郎は健在なり。2000年現在、サスペリア(秋田書店)で連載中です。サスペリアは少女向けのミステリとホラー漫画誌で、今回の作風は読者層にあわせたものになっています。
各作品の内容は、作品目録 中 【雑誌掲載作品】 の該当部分に、メモ代わりに簡単な紹介をつけているので、そちらを参照してください。
この項は別ページに分割しました。
作者の『針千本の罰』(1995〜96年) と 『亜人戦記ゲンヤ』 (1996〜97年) が連載された秋田書店の「チャンピオン JACK(ジャック)」誌について。
少年漫画誌(少年ジャンプ、少年マガジン、少年サンデー、少年チャンピオン、少年キング[休刊])を擁する出版社は、読者層の成長にあわせてか、共通する誌名の青年漫画誌を発行するようになっています。(ヤングジャンプ、ヤングマガジン、ヤングサンデー、ヤングチャンピオン、ヤングキング)
それより上の大人世代むけの漫画誌については、小学館のビッグコミック系のように系列を確立したところもあれば、集英社のオールマンのように模索中と思われるところもあります。
チャンピオン JACK も、そんな大人向け漫画誌の一つとして、ヤングチャンピオン(1988年創刊)に続く形で創刊されました。当初は雑誌名の横に "For Adult & Businessman" と想定読者層を掲げていました。
発行間隔は最初月2回でしたが、採算がとれなかったか、やがて月刊になりました。また作家の入れ替えなどによる誌面刷新もはかっていましたが、売り上げ挽回はならなかったようで、40号で休刊になりました。下に、発行間隔の変遷と、その間の代表的作品と思われるものをまとめます。
次の方から情報をいただきました。ありがとうございます。
ここに載っていない作品や関連サイトなど、情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、メールなりで情報提供いただけると幸いです。
メールの場合、CI5M-NMR@asahi-net.or.jp まで。
(2001年3月) 多くは、岸大武郎に関するそのもののサイトやページがなく、作者や作品の名前が登場するだけのページを集めていた時代(1998年頃)の名残りです。
(2001年3月31日新設) リンク切れで、移転先も不明のサイト。大学内のばかりですね。